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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 空き家の問題の一側面(1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

空き家の問題の一側面(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/12/06


今日は空き家問題の一側面を考えてみたいと思います。
近年、空き家に関する注目が集まっていますが、空き家は2013年末時点で日本に800万戸以上存在し、毎年30万戸を上回る勢いで増え続けています。現時点ではもう900万戸ほどだと思いますが、空き家の増加に伴って、環境悪化に対する苦情も増えてくるということがあります。特に2015年には、空き家のより厳格な管理を義務付ける「空き家対策特措法」という法律が施行されました。また、シェアリングエコノミーの一環として、いわゆる民泊の問題と絡めて論じられる等、色々と話題を呼びました。しかしながら、この空き家についての問題はいまだにすっきりとした解決の道筋が見出されているようにも思えません。防犯防災上の問題や、ごみの不法投棄を誘発する問題、景観を害する問題等があり、多岐に渡る弊害が指摘されています。
一言に空き家と言っても、その内容・背景は様々です。総務省の分類に従うと、空き家は「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」「その他の住宅」の4つに分類されます。このうち「賃貸用の住宅」や「売却用の住宅」については、取引に際して借り手、買い手が見つかるまでの間、一定期間空き家となることは避けられません。その範囲では必要な空き家といえますし、また、その間も一定の管理がされることが期待されす。また、「二次的住宅」というのは別荘をイメージして頂ければいいでしょう。一時的に泊まるための住宅です。これもそうした機能を果たすために一定の管理がなされるはずです。従って、主に問題になるのはそれ以外の、「その他空き家」ということになりますが、空き家の件数としてもこれが最多です。
この「その他空き家」が生じる背景は様々ですが、高齢化を背景にして所有者の死亡・入院によるものが最多で、転勤・転職等がそれに続きます。こうした事情から住人が不在となった物件でも転売や転貸されれば空き家にはなりませんが、所有者が将来の活用ということを考えてそのまま残したり、あるいは貸したい・売りたいと考えても、実際には借り手・買い手がつかないというケースでは空き家になります。貸したり売ったりするために修理が必要な場合が少なくありませんが、その修復コストが負担できないケースもあります。また、相続の関係する場合は権利関係が複雑で処分になかなか手が付かないというケースもあります。建物があるために借手、買手が付かない場合、建物を解体して更地にすれば少しは売りやすくなり、また、防犯上あるいは景観上の対策にもなりますが、廃棄費用も含めた解体費用がかさむことと、土地が更地になると固定資産税が一段と上がると言った問題もあって解体がすすみません。こうしたことから、結果として空き家のまま放置されるケースが後を絶ちません。
空き家の増加を自治体も政府も放置している訳ではなく、税制上の特例や、いわゆる「空き家条例」、あるいは「空き家対策特措法」などによって譲渡を促したり、管理の適正化のための指導や、解体の代執行を行っています。それから、適切な管理がなされない建物については、固定資産税のメリットを取り消すといったことも行っています。しかし、こういった対策はなかなかはかどりません。一件毎の所有者の特定から始まり、実際の処分に至るまでには長い時間と大変な労力を要します。そのため、空き家の増加が目に見えて抑制されるというところまでの道のりは険しいものがあります。  
それでは他に有効な解決策等はないのでしょうか。そのヒントを得るためには、問題の本質を見極めるためにシンプルに考えてみることも必要です。まず日本では、1968年に住宅の総数が世帯総数を上回りました。この後の空き家件数の増加というのは、次のような公式によって表せるはずです。
「空き家の増加数」= 「新築戸数」-「解体戸数」-「世帯増加数」
つまり新築戸数と解体戸数、世帯増加数の3つの関係が問題で、世帯数が増加すれば、その分だけ家が増えたとしても空き家は増えません。新築により家の数は増え、解体により減ります。この内、世帯数については、人口の方は頭打ちですが、核家族化や単身世代の増加によって、まだ増加基調にあり、平成25年度も前年比で約40万世帯増加しています。一方解体戸数というのは、バブル期には一年に30万戸ほどありましたが、今では12、3万戸です。つまり、新築戸数が50~55万戸であれば、空き家の数は増えないはずです。しかし、実際の新築戸数は100万戸前後に達していますから、この差が年々の空き家増加数ということになります(但し、この計算は二次的住宅としての利用の増加、或いは複数世帯同居といったことは勘案していませんので、飽くまで概算です)。
このうち世帯数は政策ではコントロールできないとすると、空き家問題を解決する為には新築戸数の抑制か解体戸数の増加が必要ということになります。現状の政府や自治体の政策を見ると、このうちの「解体の促進」を中心とした対策に終始しているのが実態です。しかし、これは果たして望ましい唯一の解決法でしょうか、他にも方法があるのではないでしょうか。この点については次回考えていきたいと思います。

それでは今日のまとめです。
空き家問題をシンプルに考えると、解決策としては新築戸数と解体戸数のコントロールということになります。現状の対策は解体の方に集中していますが、これが唯一の解決法なのか、もう一度公式に立ち返って考えてみることが必要ではないかと思います。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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