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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 生産性とは何か:正味作業時間比率 (企業戦略、生産管理/目代武史)

生産性とは何か:正味作業時間比率

目代武史 企業戦略、生産管理

16/12/01

 今日は前回に引き続いて「生産性」についてお話します。
 前回は制約条件の理論、略して「TOC」についてお話をしました。一部の生産工程を自動化することにより、生産性をアップさせたとしても、生産ライン全体の生産性アップには必ずしもつながらないというお話しでした。そこで、今日は生産性の内訳についてもう少し踏みこんでみたいと思います。

 職場での仕事にしろ、家庭での家事にしろ、効率よく仕事をするにこしたことはありません。
 例えば、私の場合で言うと毎日仕事の前にいわゆるTo Doリストというものを作って、今日やるべきことを確認して、それから大体の所要時間の見積りをします。家事では、できるだけ並行作業を意識して、洗濯機をまわしながら掃除をするだとか、一筆書きになるように動くといった工夫をみなさんされていると思います。

 仕事の中身には、まさに仕事そのものにあたる作業と仕事の周辺に関わる作業があります。仕事そのものとは、例えば私の場合ですと、論文を書いたり授業をしたりといったことです。
 仕事の周辺に関わる作業とは、論文に必要な資料を集めたり、コンピューターに入力したりといった作業です。時には資料を広げるために机の周りを片付けたり、集めた資料の山から必要なデータを探しだしたりといったことが必要になることもあります。これは思いのほか時間がとられるものです。
 そのため、きちんと整理整頓をしておくといいのですが、日々の事に追われて書類が山積みになってしまい、それを探すのにすごく手間取って、時間を浪費してしまうことはよくあります。
 こうした仕事にかかわるあれこれの作業のうち、本当に価値を生むことに費やされる作業が仕事の正味の部分です。これをここでは「正味作業」と呼びたいと思います。論文を書くためにパソコンを立ち上げたり、データを入力したり、計算したりという作業は、それ自体は価値を生むものではありませんが、どうしても必要な作業です。これをここでは「付随作業」と呼びたいと思います。
 そして論文を書く作業スペースを確保したり、資料を探しなおしたりという作業は、価値を生まないばかりか整理整頓できていればそもそも不要な作業ですので、まったくのムダです。
 このように、仕事というのは付加価値を生む「正味作業」、必要だけれども価値は生まない「付随作業」、そして全く価値を生まない「ムダ」からなります。

 このことは生産性の計算式からも確認することができます。一般に「生産性」というのは、労力や材料のインプットに対する仕事の結果、つまりアウトプット、比率のことです。
 例えば労働生産性は、「生産個数」分の「実労働時間」となります。

計算式1.png

 例えば100個作るのに1時間かかったとしたら、1時間/100個ということになるわけです。ここで分子にくるのは「実労働時間」で、残業時間を含めた「1日の勤務時間」から「休憩時間」等を差し引いた「労働時間」のことです。

 さて、この計算式をもう少しいじってみたいと思います。間に「正味作業時間」というものを挟んで労働生産性の式を展開してみます。そうしますと、労働生産性は、「正味作業時間/生産個数」と「実労働時間/正味作業時間」に分解することができます。正味作業時間はそれ同士が消えるため、約分するとまた元の式に戻るということです。

計算式2.png


 このままだと、第2項の意味が分かりにくいので、逆数をとってもう少し展開すると、次の式になります。

計算式5.PNG
 第1項の「正味作業時間/生産個数」とは、製品1個を作るのにかかった作業時間のことです。要するに、作業スピードのことですね。2番目の「正味作業時間/実労働時間」とは、1日の総労働時間に占める付加価値を生んでる作業時間の比率です。これを「正味作業時間比率」と呼びたいと思います。要するに、労働生産性というのは、作業スピードと正味作業時間の比率から構成されるということです。つまり、生産性を上げるには、作業スピードを上げるか、正味作業時間比率を上げるか、もしくはその両方かということです。
 問題はどちらがやりやすいかですが、作業スピードを上げるのは大変ですし、疲れます。それにミスが増えることもあります。一方で正味作業時間比率は、一般に大きな改善の余地があるというのが普通です。例えば、製造業のお手本ともいわれるトヨタの自動車工場では、正味作業時間比率が大体50%前後と言われます。半分はムダなものや、付随時間に使われているのです。それ以外の普通の優良企業の生産現場では、10%かそれ以下という評価もあります。そのため、強いと言われている日本の製造現場にあっても、作業時間の90%以上が付加価値を生まない作業に費やされていると言えるわけです。

 では、今日のまとめです。「労働生産性」は、作業スピードと正味作業時間比率からなります。「正味作業時間」とは、実際に付加価値を生んでいる作業のことです。1日の労働時間に占める正味作業時間の比率は非常に小さい事が一般的で、この正味作業時間比率をいかに改善していくかが生産性向上の重要なポイントとなります。

(参考文献)
藤本隆宏(2012)『ものづくりからの復活:円高・震災に現場は負けない』日本経済新聞出版社

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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