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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 生産性向上へ向けて(3):良い流れの指標(その2) (企業戦略、生産管理/目代武史)

生産性向上へ向けて(3):良い流れの指標(その2)

目代武史 企業戦略、生産管理

16/12/29

1.はじめに
 今日は、前回に引き続き、ものづくりの良い流れをとらえる指標についてお話ししたいと思います。生産管理を理解する上で、基礎となる共通言語について学んでいきたいと思います。

2.マーフィーの法則?
マーフィーの法則ではありませんが、急いでいる時に限ってパソコンが壊れたり、コピー機に紙が詰まったりして焦ってしまうことは、誰しも一度は経験があるかと思います。
 生産設備が故障して、生産できなくなる時間のことを、生産管理では「ダウンタイム(down time)」といいます。ちょっとした機械の不具合は、生産現場ではよくあることで、そういったちょっとした生産停止のことを「チョコ停」などとも言います。これは工程の生産性を低下させる主な原因の一つとなっています。
 こういった状況を未然に防ぐためにも、いわゆる5S、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」をきちんと守っていくことが重要です。生産現場がきれいに整理整頓されていれば、仮に機械が止まってしまっても、工具や補修部品をすぐに修理し、迅速に復旧することができます。最近話題になっているIoT(Internet of Things)の狙いの一つも、機械設備に取り付けたセンサーからデータを取得し、機械の稼働状況を常時モニターすることで、故障の兆候があれば、機械が止まる前に予防的に捕手を行うことにあります。
 このように、生産性を高いレベルで維持するためには、機械がいつでも動く状態に保たれていることが重要になります。この状態を測る指標を「可動率(up time)」といいます。前回、ご紹介した実際の生産量である「稼働率」と発音が同じで紛らわしいですが、意味が違います。この2つを区別するためにしばしば「べきどうりつ」という風にも呼ばれます。つまり、「動くべき時に、機械がちゃんと動く比率」という意味から「べきどうりつ」というわけです。計算式としては、機械の正常運転時間を、総運転時間で割った値が可動率となります。「べきどうりつ」が高いということは、機械が動くべき時にきちんと動く比率が高いということを意味するため、その生産現場の機械のメンテナンス能力の高さを表すことになります。

3.段取り替えの時間の短縮―多品種少量生産の条件
 また、生産工程の生産技術力を表す別の指標に、「段取り替え時間(set-up time)」というものがあります。人によっては「段替え時間」と呼ぶこともあります。
 現代の工場では、同じ生産ラインで、何種類もの製品を加工することが一般的になっています。生産品目が変われば、生産のための工具や金型といった生産ツールを交換する必要が生じます。例えば、鉄板に圧力をかけて、所定の形に成型するプレス成型工程では、生産する部品の種類ごとに固有の形状の金型が必要になります。一般に金型は、プレスマシンから脱着できる構造になっていますが、金型自体の重量が非常に大きいうえ、脱着した際に少しでも基準点から金型がずれて設置されると、加工不良につながってしまいます。
 例えば、ドアパネルのプレス部品を作るある広島の部品工場では、かつて、金型の交換に30分かけていました。これでも海外の工場に比べるとずいぶん短い方なのですが、これを弛まぬ技術開発の結果、金型の交換時間を1分にまで短縮することができました。
 金型交換に何時間もかけていた時代は、金型交換の間生産が止まってしまう訳ですから、同じ部品をできるだけ作り溜めしていました。しかし、これでは作りすぎの無駄を生んでしまいます。しかし、1分もかけずに金型交換が可能になれば、必要な部品を必要な時に、必要なだけ作って、次の部品を作ることが可能になります。在庫コスト圧縮の点でも、品質問題の回避の点でも、キャッシュフローの改善の点でも、段取り替え時間の短縮は非常に重要なポイントになってきます。
 段取り替え時間の短縮は、今日の工場に要求される、多品種少量生産を実現する上で、最も重要な要件の一つです。日本の工場では、ほとんどのメーカーで、複数の車種を一つの生産ラインで組み立てる、混流生産といわれる方式を取っています。それによって同じ車種の作り溜めを回避し、タイムリーに製品を出荷している訳です。
 その為には、段取り替え時間の短縮ということがポイントになっていきます。以前私は、マレーシアの現地資本による自動車の委託生産の工場を見学する機会がありました。その工場では、様々なブランドの車種を受託生産していました。その工場では、ある車種を、20台ぐらいまとめて生産した後に、ラインサイドに置いた部品箱ですとか、工具類をごっそり総取替えしていました。そしてまた次の車種を20台組み立てて、また部品箱と工具類を総取替えする。これを繰り返すということをやっていました。ちなみに、この工場の組み立てのタクトタイムは約12分、ちなみに日本では1分です。時間当たりで言いますと、1時間に5台というペースゆっくりしたペースで生産していました。日本では、1時間に60台生産できるわけです。これまで世界各国の様々な自動車工場を見学してきましたけれども、このような段取り替えの方式は私自身初めて見ました。非常に驚いた、というのが率直な感想でした。

 では、今日のまとめです。今日はものづくりの良い流れをとらえる指標として、ダウンタイム、可動率(べきどうりつ)、段取り替え時間について紹介しました。ダウンタイムの圧縮、つまり可動率の向上は生産現場の設備保守能力の高さを表す重要な指標です。また、段取り替え時間の短縮は、多品種少量生産を可能にする重要な要件であり、生産現場の能力の高さを表す重要な指標となっています。


分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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