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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 空き家の問題の一側面(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

空き家の問題の一側面(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/12/07


前回は弊害の拡大が指摘される空き家問題について、空き家の増加数についての公式、
「空き家の増加数」=「新築戸数」―「解体戸数」―「世帯増加数」
をご紹介しました。このうち世帯数は所与だとすると、「新築戸数」と「解体戸数」の2つが鍵ということになりますが、現状の政府、自治体の対策は「解体戸数」の増加に偏っています。今日は、新築戸数の方に着目して考えていきたいと思います。

日本では、毎年およそ100万戸の住宅が新築されていますが、これはアメリカの新築住宅戸数とあまり変わりません。一方、日本の人口は1億2000万人で、3億2000万人いるアメリカの2.5分の1です。つまり、人口割合で考えて、日本ではアメリカより多くの人が毎年新築住宅に入居している訳です。このことは、逆に中古住宅に入居する人の人口割合が日本ではアメリカよりもずっと低い可能性があることを示していますが、日米それぞれの住宅取引件数に関するデータを見ても、中古住宅取引の割合は日本ではわずか15%前後なのに対してアメリカでは80%以上となっており、そのことを裏付けています。
こうした背景には日本人がアメリカ人よりも新築を強く志向していることがあります。内閣府の調査によると、購入したい住宅としては、新築戸建てというのが6割以上を占め、新築マンションが1割、以下中古の戸建て、中古のマンションと続く結果になっています。また、リクルートによる日米を比較した住意識調査によると、住み替え回数ではアメリカ人が平均6.4回に対して、日本人は3.7回で、日本人の方がより定着型となっており、また、家に対する価値観に関する質問では、日本人が疲れを癒す・家族の団らん等といったメージで捉えているのに対して、アメリカ人の捉え方は、投資対象と見ていることがはっきりしています。つまり、日本人は、「何時かは自分で戸建ての家を建て、そこで永らく家族と幸せに」という形の「新築信仰」を抱えているのに対し、アメリカ人は「使用価値としての家」、「資産価値としての家」という考え方が徹底していることが伺えます。
新築、とくに注文住宅等の場合には、その時の家族の特性に合わせた自由なデザインの家を作ることができますし、なにより新品ということにメリットを感じる人は多いと思います。しかしその分デメリットも大きいといえます。第一に購入価格が割高になる上、新築とはいえ長く住み続けるには家族構成の変化や成長に応じた柔軟性には乏しいという問題があります。それでも日本人は新築にこだわってアメリカ人より少ない住み替え回数で我慢しているわけです。さらに日本では既存住宅としての流通が限られていることに加え、個々の事情を反映した間取りとなっていることから汎用性が乏しく、減価が速いことも挙げられます。日本の住宅の価値はアメリカの住宅の2倍以上のペースで原価していきます。かつては建物の減価分を土地価格の上昇が補っていましたが、現在ではほとんど期待できません。さらに資産価値が急速に減少するため、建築時の資本投下もそれに対応して総じて貧弱な住宅ということになりがちです。アメリカと比較すると、地震が多い土地柄やそもそもの住宅の工法、さらには人口動態の違いなどもあり、一概には言えない部分はありますが、日本人は新築信仰のおかげで大きな犠牲を払っている可能性があります。
日本人の新築信仰は、果たして日本人生来のものでしょうか。実は政策や経済的な事情によって、後から形作られた可能性もあります。例えば、政府による数々の住宅建設に関わる支援措置です。今でこそ中古住宅にも対象が広がったものも多いですが、所得税・贈与税・登録免許税・不動産取得税などの減税措置、あるいは住宅取得に関わる金利優遇など、新築住宅中心に手厚い優遇がなされてきました。こうした背景には、住宅投資そのもので見ると3%ですが、関連産業への誘発効果まで考えるとGDPの10%前後にまで達するという住宅建設の経済波及効果の大きさ、あるいは建設業の就業者全体で約450万人、住宅建設関連に絞ると少し減るものの、逆に関連産業まで含めればほぼ同じ程度と推定される就業者数から、雇用の面での影響の大きさが挙げられます。
したがって、新築信仰からにわかに脱するということは相当困難が予想されますが、空き家問題が深刻化する今日、そろそろこの呪縛から解放されても良いのではないでしょうか。新築の際はある程度標準化された間取りのしっかりした家を建て、手入れによって資産価値を維持しながら、必要に応じて柔軟に住み替えをする。こうした方向へのかじ取りによって、結果的に新築戸数を抑制する形の空き家数のコントロールが考えられても良いのではないでしょうか。むしろ、こちらの方が日本人のもったいない精神にも添った解決法ではないかと思います。

それでは今日のまとめです。空き家問題をきっかけに、結果として貧弱な住宅事情につながっている日本人の新築志向から脱却し、ある程度標準化された良質の既存住宅を所有し、また、家族構成などに応じて柔軟に住み替えをすることで、資産としての維持と、居住の利便性の確保ということを考えても良い時期に来ていると思います。
(空き家対策として実はもう一つ、住居以外の利用があります。これは一時現在者の住宅ということになり、そもそも「空き家」の定義から外れ、また、一定の管理も期待されます。しかし、件数面での貢献はそれ程大きなものにはなり得ないかもしれません。)

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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