QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (30) モジュール化 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (30) モジュール化

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/12/14

 今回は「モジュール化」という語を取り上げてみます。
 英和辞書で「module」という語を引かれると、「基準寸法」とか「組立ユニット」、あるいは「規格化部品」といった多様な意味が検出されると思います。元の意味は、辞書に見られるように全体を構成する部分の単位という程度のことを表していたわけですが、そのような交換可能な部分に全体を分解する「モジュール化」という概念が、1990年代に経済学や経営学の分野で、産業の進化過程を分析する上での重要な役割を担うものとして注目を集めました。
 全体を交換可能な部分に分解するということは、ある複雑なシステムを、相互に独立したサブシステムに分解することと言い換えられます。サブシステム同士が互いに依存していないために、あるサブシステムが置き換えられても、他のサブシステムに影響を及ぼすことがないわけです。
 こう言うと抽象的すぎて何やら難解な印象をお持ちになるかも知れませんが、このモジュールとかモジュール化という言葉は、今日私たちの身近なところで使われていることにお気づきになると思います。例えば、学校教育の現場では、特定の長さを持った授業単位をモジュールと呼んでいることがあります。それらのモジュールを、学習目的に応じて組み合わせることによって、多様な学習プログラムを提供できるようにしているわけです。また、企業などの組織でも、全体としての業務プロセスを、いくつかのまとまった業務に分業化し、それぞれの業務を分担するチームをモジュールと呼んでいる場合があると思います。

 さて、イノベーション研究の領域で、モジュール化の概念が注目されるようになったきっかけは、ハーバード・ビジネススクールのカーリス・Y・ボールドウィンとキム・B・クラークが行った研究がもたらしました。彼らは1997年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表した「モジュール化時代の経営」という論文と、2000年に刊行した『デザイン・ルール』という本の中で、IBMが1964年に完成させたシステム360というメインフレーム・コンピュータにおいてシステム・デザインのモジュール化に成功した経緯と、その影響について詳細に分析しました。この事例では、複雑なシステムのデザインがいくつかのモジュールに分解され、モジュール間の相互関係(インターフェース)に関するルールだけが明確に設定されたそうです。そして、一旦そのようなルールが決まると、IBMの開発チームや取引先企業は、それぞれのモジュールの開発に独立に取り組むようになり、イノベーションのスピードが著しく加速したと言われています。
 システム360のデザインのモジュール化が産業組織に及ぼした影響には、もう1つの興味深い側面があります。それは、個々のモジュールの開発に従事した技術者らが、後に独立して当該モジュールの改良を事業とするベンチャー企業を起こしていったということです。彼らの多くは、スピンアウト後の起業に対する規制が緩やかなカリフォルニア州で創業し、それがシリコンバレーを形成する原動力になったという見方も提起されています。

 しかし、製品デザインのモジュール化や、それに伴う業務プロセスのモジュール化は、イノベーションに取り組む企業にとってポジティブな影響ばかりをもたらすわけではありません。モジュール化が進展すると、各モジュールを担当する組織は、専ら担当する部分の最適化を追求するようになり、その結果、全体としての製品やシステムのイノベーションは却って発生し難くなるという現象が生じます。これは、モジュール間のインターフェースが長期的に固定化されることと関連しています。このような現象は、「モジュール化の罠」と呼ばれています。こうした負の側面もあることから、モジュール化に対してどのように対応すればよいのかが、イノベーション・マネジメントにとって重要な課題の1つとなっているのです。

今回のまとめ: モジュール化とは、複雑なシステムが、相互に独立したサブシステムに分解されることを意味しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ