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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (29) 重量級プロダクト・マネジャー (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (29) 重量級プロダクト・マネジャー

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/12/13

 今回は「重量級プロダクト・マネジャー」という語を取り上げます。
これは、キム・B・クラーク、藤本隆宏らが自動車の製品開発組織に関する研究を通じて提唱した概念で、製品コンセプトの創出から開発、生産、販売に至る製品開発プロセスを通じて、重い責任と強い決定権を託されたマネジャーを意味しています。その組織的な影響力の大きさから「重量級(heavyweight)」と呼んでいるわけです。「プロダクト・マネジャー」という表現は、技術開発などを目的とした個々のプロジェクトに止まらず、新製品全体に関するマネジメントに当たるものであることを反映しています。
 自動車の製品開発には、多様な職能別組織が関与するのですが、重量級プロダクト・マネジャーには、各職能部門の長と同等以上の権限があり、各部門に対して連絡担当者を通じてか、あるいは直接的に影響力を行使します。
 一方、そのような組織的な影響力が弱く、製品コンセプトに関する責任もなく、プロジェクト全体の調整が主な任務であるようなプロダクト・マネジャーは「軽量級(lightweight)」と呼ばれています。

 以前、マトリックス組織というキーワードを取り上げた際、マトリックス組織を構成する職能(機能)部門と、プロジェクト・チームのどちらの権限を重くすべきであるかは、技術的な条件などによって異なるということをお話しました。クラーク=藤本の研究は、自動車という製品分野では、プロジェクトの側に強い権限が配置されていることが重要であることを示しています。
 プロダクト・マネジャーが重量級であることの効果は、1つには、より少ないチームメンバーでプロジェクトが運営できているという意味での開発効率の高さに見出されましたが、別の効果は製品の統合度(product integrity)の高さ、つまり首尾一貫したまとまりの良さに寄与するという点に見出されました。この点は、なぜ自動車という製品分野ではプロダクト・マネジャーが重量級であることが重要なのかを説明しています。
 自動車の製品開発プロセスでは、非常に多くの要素技術などが、1つの製品コンセプトの実現に向けて統合されます。一方で、自動車はユーザーが日常的に使用する製品ですから、製品としてのまとまりの良し悪しは、ユーザーの審美眼によって厳しく評価されます。こうして製品としての自動車の統合度の高さは、市場での成功に決定的な影響を及ぼすことになるのですが、では首尾一貫したまとまりの良い製品とは、どのような開発組織によってもたらされるのかというと、それは首尾一貫性のある組織であり、そのような組織は重い責任と強い権限を有するリーダーによって統率されている組織であるということになるわけです。
 こうした製品の統合性に対するプロダクト・マネジャーの役割は、2つの側面に亘って論じられてきました。1つは、多様な部門が提供する機能を調整し、製品を構成する部品同士をまとめあげていく側面で、「内部統合」と呼ばれています。もう1つは、製品全体をユーザーの期待やニーズに合わせていく側面で、こちらは「外部統合」と呼ばれています。

 ところで、このような役割を担う重量級プロダクト・マネジャーの存在は、取り分け日本の自動車メーカーの中に見出され、日本企業の開発力を説明する要因の1つとして注目されてきました。代表的な例として挙げられるのは、トヨタ自動車の「チーフエンジニア制度」です。1950年代に開始されたとされるこの制度は、1991年頃までは「主査制度」と呼ばれており、初代のクラウンやカローラなどのヒット製品を生み出してきたことが知られています。
 自動車が統合度の高さを求められる製品である限り、重量級プロダクト・マネジャーは、重要な役割の担い手であり続けるのかも知れません。しかし、その役割を企業の競争優位に結びつけていく過程には、様々な経営課題が伴うでしょう。例えば、その1つは重量級プロダクト・マネジャーになり得る人材を、いかにして継続的に育成していくかといった課題です。この点については、また機会をあらためてお話してみたいと思います。

今回のまとめ: 重量級プロダクト・マネジャーとは、製品開発プロセスを通じて重い責任と強い決定権を託されたマネジャーを意味しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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