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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 青山フラワーマーケットの経営戦略 (テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営/金子浩明)

青山フラワーマーケットの経営戦略

金子浩明 テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営

16/11/30

今日は、業界の非常識と思われることが、実は効果的な打ち手になっている、というケースを皆さんにご紹介したいと思います。

なぜこの話をしたいかというと、我々は何か新しいビジネスプランを立てる時は(それは起業でも、社内での何か新規事業を作る場合でもいいです)、大体多くの人から「ほんとにそれ出来るの?」「勝てるの?」という風に突っ込みが入ります。

例えば、自分の友達が蕎麦屋をやりたいと言った時に、「お前蕎麦屋なんかできるのか」と言われます。「いや、そば打ちの学校に半年通ったから一応できるようになった」と言われたら何と言いますか?「まあ、頑張れよ」とは言うと思いますが、「そんなに世の中甘くないよ」と思いますよね。

例えばその人が蕎麦屋の息子に生まれて、幼少時からそば打ちはずっと仕込まれてきたというエピソードがないと、その人は勝てそうにないと思ってしまいます。
しかし今回私が注目したケースというのは、最初から豊富資金や特別なスキル、業界内の人脈などが無かったにもかかわらず、なぜか業界の中で最大手になったというような事例です。それは「青山フラワーマーケット」という花屋のチェーンです。先日、このお花屋さんの井上社長とお話しましたが、社長はもともと金融マンでした。彼は、アメリカの会計事務所に勤めたあと、日本でイベント会社を起こします。しかし、イベント会社というのはイベントの時には収入が入りますが、日銭が入らないため経営が不安定です。そこで、日銭が入る仕事をしようということで、花屋に目をつけました。

その後、たまたま知り合いの紹介で花の市場に行き、花の市場で買ったお花を、知り合いの議員に持って行ったそうです。それが好評で「お前のところの花は非常に長持ちするな。また持ってきてくれ」と言われました。この経験を通じて、町の花屋で売っている花の仕入れ値は売値の10分の1程度だということ、町の花屋は必ずしも鮮度の高い花を売っていないということを知りました。

そこで、花の商流の中には非常に不経済な部分が存在していることに気付いたわけです。そして、ここだったら儲けられるかもしれないと思い、自分たちの花屋はどういう価値を提供しようかと考えたのです。

町の花屋さんというのは、町の固定客をつかんでいることが多いです。かつ、町の花屋さんの主な売り上げは、仏花や、カーネーション、鉢植え、お祝い用の蘭であり、非常に高級なお花も置いてあります。こういう町の花屋さんはもう既にあるわけです。その他にも、いわゆるホテルに専属でついている大きなお花屋さんのチェーン店があります。いわゆる有名な第一花壇とか、日比谷花壇とか、そういう大きなフローリストと言われる花屋さんも既にありました。はじめはどちらに行くかと考えたらしいのですが、どちらもすでにあるため、違うところに行こうと思い、「花の惣菜屋」を目指そうとしたそうです。
それは、惣菜を買う様に花を日常で実際に買って飾るというコンセプトです。ちょうど日常的に花を飾るというニーズが青山フラワーマーケットが立ちあがった1993年ぐらいから徐々に起きつつありました。それは生活の洋風化です。家の中にある家具とか、家のレイアウトが徐々に洋風化していきました。例えば、桐箪笥は売れなくなるけど、ソファは売れるといった具合です。ちょうどこの頃、先日お家騒動があった大塚家具が東京に92年に進出してきました。まさに大塚家具は、世界の一流家具を届けるという理念のもとに高級家具を売ったわけです。そうした家具の洋風化、生活の洋風化によって花を家に飾るという行動が広がりつつあるタイミングに、まさに「花の惣菜屋」というコンセプトを打ち立てたということです。ただ、ここまでであれば、業界の非常識とまでは言えません。では、青山フラワーマーケットの業界の非常識は何なのか。それは、店に「冷蔵ケース:を置かないという選択をしたのです。冷蔵ケースを置かないと当然腐りやすくなります。だから、いわゆる蘭とか、胡蝶蘭のような贈答用の花は置かないことにしました。お祝い贈答用の花屋ではなくて、日常使いに特化した花屋です。冷蔵ケースを置かないことで花が腐りやすくなるわけですが、むしろ青山フラワーマーケットはフレッシュな花をブーケにアレンジメントして、早めに売ってしまうということに力を注ぎました。魅力的なブーケをたくさん売ることによって、逆に冷蔵ケースなくても廃棄ロスがなくなるわけです。また、花を冷蔵ケースに保存していないため、持ち帰った後に長持ちすると評判になりました。お祝いの贈答用ならば長持ちするかどうか大して気にしないかもしれませんが、自宅用ならば長持ちする方がうれしいからです。

冷蔵ケースを置かないため店舗は狭いです。しかし、それが出店には有利に働いています。ショッピングモールの1階とか、駅中などのすごく狭いスペースに出店できるわけです。そうすると、実は家賃があまりかからないのです。青山フラワーマーケットの場合、お花屋さんがショッピングモールの入り口にあると集客効果があるので、実は賃借料を下げられているのです。すごくいい土地なのに向こうから来てくれと言われるわけです。これが低コストにつながっています。つまり、冷蔵ケースを置かないという非常識が、むしろものすごく効果的にコストを下げる鍵になっているのです。

ここでもう一つ非常識があります。基本的にチェーンストアというのは、大量一括仕入れなどによって、原材料を安く仕入れようとします。それが個人経営店に対するチェーンストアの強みだからです。けれども、青山フラワーマーケットは、仕入れも各店舗にまかせています。これも、いわゆるチェーンストアの経営においては非常識です。なぜそうするのかというと、店ごとに顧客の好みがけっこう違うからだそうです。同じ駅前でも、出口によって売れるものが違う。商品の回転をよくするためには、本部が一括で仕入れるのではなく、店舗ごとに店長が売れると思った花を仕入れることが重要なのです。

このように、「業界の非常識」が後から考えると勝つための肝になっているという典型例が、青山フラワーマーケットでした。

では、今日のまとめです。

皆さんが実際に起業するとか、あるいは新規事業を立てる時に、周りから「本当にできるの?勝てるの?」と言われた場合、簡単にあきらめないでください。業界にとっては非常識だが、論理的には筋が通った戦略を描くことができれば、資金やスキルが乏しくても成功する可能性はあります。

分野: 技術経営 経営戦略 |スピーカー: 金子浩明

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