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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 今に繋がるドイツの経済改革① (企業財務管理、国際金融/平松拓)

今に繋がるドイツの経済改革①

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/10/31

今日は、今に繫がるドイツの経済改革についてお話をしたいと思います。

ドイツといえば、優れた技術力と安定し且つ強力な経済体質の国というイメージが広く定着しています。また、ギリシャ問題以降、ウクライナ紛争や中東移民問題でのメルケル首相の活躍(移民問題では2015年には国内に100万人も受け入れた)は非常に目立っていますが、「インダストリー4.0」(開発から生産、物流、サービスを含め、網羅的にIT技術を活用することで生産・サービス効率を高める第四次産業革命)の推進などでも注目を集めており、ドイツは今や欧州のリーダーの感があります。

こうしたドイツの経済基盤を実質GDPで見ると、2012年以降、欧州経済危機や中進国経済の低迷などを背景に0~1%台と低成長に甘んじており、0%台にとどまる日本を上回ってはいるものの、他のEUの大国フランスと肩を並べる程度で、今般離脱を決めたイギリスの2%台を下回っています。また、失業率を見ると4~5%と、2桁のフランスを大きく下回り、イギリスよりもやや低くなっていますが、3%台の日本よりは高い水準にあります。これらの点からは、ドイツ経済は欧州各国や日本との比較で相対的に良好とは言えても、それ程大きな違いがあるわけではありません。

しかし、財政収支を見るとその差は歴然としています。英・仏両国は財政赤字削減を進めながらも今なお対GDP比3%台の赤字(ユーロ導入国は3%以内に修ることが求められている)となっており、また、日本もアベノミクスによる景気回復で多少縮小しても5%台の赤字なのに対し、財政均衡に強い執着を持つドイツは(小幅とはいえ)黒字を維持しています。つまり、財政に依存することなく良好な経済状況を実現している訳です。2005年以来11年間首相の座にあるメルケルのドイツは、こうした強力な経済基盤の下に欧州のリーダーとして活躍できているといえます。

ただ、これがメルケル首相の功績かというと、実は必ずしもそういう訳ではなくて、メルケルの前に政権を担っていたシュレーダー(社会民主党)による構造改革(労働市場改革)の成果だと言われています。シュレーダーは1998年に、それまで在任16年間に及んだコール首相(メルケルと同じキリスト教民主同盟)の後をついで首相に就任しましたが、その当時の経済状況は、GDP成長率こそ2%程度ありましたが、それでもイギリスやフランスに劣り、2桁に届こうとする失業率、10年近く続く財政赤字など、将に「欧州の病人」と言われる状態にありました。

ただ、これは何もコール前政権が放漫財政に陥って改革を怠ったということではありません。コール政権も第二次維持石油ショック後の世界経済低迷期に、ほぼゼロ成長からスタートして積極的な労働市場改革に取り組み、1990年前後には5%台の成長まで経済を活性化することに成功しました。ところが、1989年のベルリンの壁崩壊を経て、「東西ドイツの統合」、「ユーロの導入」という歴史的大事業に取り組んだことから、国内の経済改革を中断せざるを得なかったという事情がありました。

通貨「マルク」を捨てて「ユーロ」を導入することについて後ろ向きであったドイツが、それを受け入れたのは「東西ドイツ統合」をフランスのミッテラン大統領に認めさせることと引換えであったと言われていますが、その意味ではこの二人は欧州の将来にかかわる大きな取引を行った、実にスケールの大きな優れた政治リーダーであったということができます。しかし、その結果、ドイツは東西統合をソフトランディングさせるために、遅れていた旧東独経済の振興を図る必要があり、また、インフレ率をユーロ加盟国の収斂基準(最も安定している3か国平均比+1.5%未満)以下に抑制するために金利を高めに維持せざるを得なかったことから、財政にしわ寄せが行って赤字の長期化を招いた訳です。

そのため、シュレーダー就任の時点では、市場メカニズムによる改革を進めてインフレなき成長、低失業率を実現したイギリスやアメリカには大きな差をつけられており、新政権に対しては経済の立て直しが期待されていました。

それでは、シュレーダーがどのような改革を成し遂げたのでしょうか。その点については、次回お話したいと思います。

まとめ:欧州の政治的・経済的リーダーとして活躍するドイツのメルケル首相ですが、それを支えているのがドイツの強力な経済基盤です。これについては、東西ドイツの統一やユーロ導入を成し遂げたコール政権と、それを引き継いだシュレーダー政権による構造改革が大きく貢献しています。このように、国際政治や国際経済の力学を考える時には、少し長いタイムスパンで捉える視点も重要です。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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