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信頼残高

荒木博行 戦略思考

16/10/21

人を動かしていくために必要な力というのは何種類かあると言われています。権限などに代表される公式の力、人脈などによる関係性の力、そして言うまでもなく個人としての力、という整理は、スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授による分かりやすい分類です。
では、この「個人の力」というのは何でしょうか?ここからは私の解釈になりますが、大きく言えば「論理」と「信頼残高」の掛け算ではないかと考えています。相手を動かすために、まずはロジックを極めて納得してもらうこと。そしてもう一つは自分という人間を信じて動いてもらうこと。言い換えるならば、「なるほど!」×「あなたのためだったら・・・」という公式によって人を動かしていく、ということです。

では信頼残高の正体をもう少し紐解いていきましょう。「残高」という言葉の通り、平たく言うと貯金です。人間関係の間に存在する擬似的な貯金です。よく「あなたには借りがありますから」とか「これで貸し借りはチャラね」という会話がありますが、まさにそのような目に見えない通貨のようなものです。いうまでもなく、過去から残高が積み上がっていれば、その人間関係の間で物事は頼みやすくなるし、動かしやすくなります。
そして、この「信頼残高」というのは、コミュニケーションの結果に大きな影響を与えます。先ほどの公式の通り、論理と信頼残高は掛け算ですから、いくら論理が弱くても、信頼残高が高ければ、こちらの期待通りに相手は動いてくれる可能性があります。逆に、いくら論理が完璧でも、残高がマイナス、つまり借金状態であれば効果は期待できないでしょう。

私はビジネススクールの「クリティカル・シンキング」というクラスにおいて、人を動かす武器の一つである「論理」を教える立場にあります。クラスにおいては、実践性を高めるために、職場など現場で使ってみることを推奨するわけですが、特に若い人が勘違いしがちなのは、「ロジックの力を過信する」ということです。言い換えるならば「ロジックさえ完璧であれば人は動いてくれる」と考えている場合がある。しかし、例えば極端な事例として、「信頼残高ゼロ」の最近入ってきた新人に職場の改善提案を極めて論理的に指摘されたら、その指摘が正しければ正しいほど否定したくなる、という心境は想像できますよね。
言っていることの正しさは置いておいて、人間の性として「そんな理屈はいいからとにかく現場に行って仕事やってみろ」とか言い返したくなってしまうわけです。これが残高ゼロ状態の悲しいところです。だからこそ、私たちはロジックの力を鍛えるということも大事ですが、それと同時に残高の存在も見つめなくてはならないのです。

一方で、残高がある程度積み上がってきた人にとっては、この公式に従えば、「ロジックが雑でも人が動いてくれる」という状態とも言い換えられます。そういう人が心がけるべきことは、「貯金は使うためにある」ということです。不確定な状況下において、周囲を力強く動かしていけるのは信頼残高がある人だけです。なぜならば、先行きが見えないからこそ、ロジックで詰めきれない部分が大きく残るからです。周囲もなかなか「なるほど!」というまでには至らない。「あなたのためだったら・・・」という信頼残高はそういう場面でこそ使う意義があります。
残高が高い人は、どんどん新たな仕掛けにチャレンジしていきましょう。それが残高を持てる人のお金の使い道なのです。

分野: リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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