QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(27) コンカレント・エンジニアリング (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(27) コンカレント・エンジニアリング

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/10/19

今回のまとめ: コンカレント・エンジニアリングとは、複数の工程を同時並行的に進める製品開発の手法を言います。

 今回は「コンカレント・エンジニアリング」という語を取り上げます。Concurrentという英語には「同時に」という意味がありますが、「コンカレント・エンジニアリング」というのは製品開発の手法に関する用語で、複数の工程を同時並行的に進める手法を意味しています。類義語に「サイマルティニアス・エンジニアリング」という語があります。
 例えば、製品開発の工程が製品企画、設計、試作、生産技術開発、生産設備の設計・製作、生産という流れになっているとすると、シーケンシャル(逐次的)には製品企画が終了してからその成果が設計段階に受け渡され、設計が終了したら、その成果が次には試作段階に受け渡されるという進め方になります。
 ところがコンカレント・エンジニアリングでは、前工程が終了する前に後工程が開始され、開発段階が部分的にオーバーラップ(重複)した状態になります。あるいは開発の初期段階から、各工程を担当する部門の間で情報を共有しておくために、互いに緊密なコミュニケーションをとるといったことが進められます。こうすることによって、開発期間全体が短縮され、工程間での手戻りが減少するため開発コストが削減されるという効果が得られるわけです。
 狭義のコンカレント・エンジニアリングは、設計から生産までの段階を担当するエンジニアリング部門間の共同作業を意味しており、それはCAD(コンピュータによる設計支援システム)などを活用したデータの共有や作業の同期化によって特徴づけられるのですが、広義には製品企画や、販売・マーケティングなどの段階も含む活動を意味しています。

 ところで、この「コンカレント・エンジニアリング」という語は、米国国防総省の高等研究計画局(DARPA)が1982年に開始した設計プロセスの改善に関する研究プロジェクトの中で使われ始めたものであることが知られています。
 しかし、開発段階を同時並行的に進めるという方法自体は、それよりも早くから日本企業によって実践されていたようです。その時期を一般的に画定することは難しいのですが、日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーに関する先行研究を総合してみると、60年代半ばには既に実践されており、70年代半ば頃までには手法としての概念化が行われていたようです。藤本隆宏とキム・B・クラークという2人の研究者が日米欧の自動車メーカーの製品開発力を比較分析した文献が1991年に刊行されていますが、そこでは開発段階の重複が日本企業の製品開発における優位性を説明する要因の1つとして挙げられています。
 並行開発を早期に実践していたのは自動車と関連部品のメーカーに限らないことも知られています。今井賢一、野中郁次郎、竹内弘高という3人の研究者が1985年に発表した論文の中では、製品開発プロセスに関する日米企業の比較が行われ、米国企業のプロセスは開発段階を明確に区切ってバトンタッチしていく「リレー型」であるのに対して、日本企業のプロセスは各段階がオーバーラップしている「ラグビー型」であるとされています。そこでは、富士ゼロックス社が導入していた「サシミ状開発」と呼ばれる並行開発のプロセスなどが取り上げられ、開発所要時間の大幅な短縮に結びついていることが示されています。

 日本企業が何故、このような同時並行的な開発プロセスを早期に導入することに成功していたのかについては、1つの明確な要因が挙げられます。
 並行開発が開発期間の短縮という効果を生み出すためには、工程間で緊密なコミュニケーションを行う必要があります。コミュニケーションが不足していると、後工程に思いがけない混乱をもたらし、却って工程を遅延させることになりかねないからです。そして、このコミュニケーションが効率的に行われる上では、各工程を担う部門の間で、予め互いの開発業務について共有された知識が存在することが重要な意味を持ちます。かつて日本企業は、長期的な勤続を前提として社員のジョブ・ローテーション(配置転換)を行っていましたから、社員は多様な業務を経験しており、結果的に部門間で共有された知識が存在していたのです。こうした雇用慣行が今日では変化しているので、そのことが製品開発力に及ぼす影響が注目されます。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ