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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 破滅シナリオを語り続ける人々 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

破滅シナリオを語り続ける人々

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/10/17

今日は、「破綻シナリオを語り続ける人々」についてお話しましょう。
前回、景気を語る人たちは4つに分けられるというお話をしましたが、その中でずっとひどいことが起きると言い続けている人たちのことを「止まった時計」と表現しました。しかし、中には経済評論家だけではないけれども、酷いことが起きると言い続けている人々がいます。

素人が見ても、これはどう考えても間違っているのではないかと思うような話も多いので、私はそういった話を「とんでも話」と呼んでいます。専門家であるのに、素人でも分かりそうな「とんでも話」をするのは一体何故なのでしょうか。

私が経済予測の仕事を始めたのはバブルの頃でした。そのため、駆け出しの私でも来年の景気が悪いはずがないということは分かりました。しかし、来年の景気は非常に悪くなると言い続ける専門家がいました。私にでさえ分かることが、どうしてこのベテランのエコノミストには分からないのだろうかと不思議に思っていたわけですが、後から考えるとこれはとても立派なビジネスモデルであったということが分かりました。

どういうことかというと、彼は景気を予想していたわけではなかったのです。景気が悪くなると言い続けることが彼の仕事であったのです。景気を予想することは大変ですが、結論が決まっていて景気が悪くなりそうな材料を探すだけであればそんなに難しいことではありません。仕事としてはそう難しくない割に利益は結構大きいのです。

まず、景気が良い時に目立ちます。世の中の専門家が全員「来年の景気は大丈夫です」と言っている時に、一人だけ「とても悪くなります」と言えば間違いなく目立ちます。「景気討論会」というのがありますよね。景気について討論するわけですから、全員が「景気が良い」と言っていると討論会にならないわけです。「景気が悪くなる」と言っている人が必要になります。そういう人は探しても少数しかいないので、必ず討論会に呼ばれるわけです。

その他にも様々なメリットがあります。1つは「固定客がつかめる」という点です。世の中には悪くなるという話を聞いてみたいという人が一定数存在します。そうではない普通の人でも、万が一悪くなるとどういうケースが考えられるのだろうといった最悪の事態を知りたいと思っている人は結構存在するわけです。そういう人が、景気が悪くなるという話を聞きたいと思った時に、そういう話をしてくれそうな人というのはそうそういませんから依頼が来るわけです。彼はマスコミにも出るし本も売れるし講演会の依頼も入ってくるわけです。

まだあります。景気はいつか悪くなるわけです。その時に、「私が以前から正しく予想していた通り景気が悪くなりました」と言えるわけです。人々は彼が昔から景気に弱気だったことをよく知っていますから、「流石ですね、良く当たりました、素晴らしい」とみんなが褒めてくれるということがあるわけです。
止った時計であっても、1日に2回だけは正しい時刻を指しますよね。
つまり、ずっと同じことを言っているといつかは当たります。その時におおいに胸を張ればいいわけです。このように、私は同じことを言い続ける人々のことを「止った時計」と呼んでいますけれども、これは合理的な戦略があるのです。

では、ずっと悪くなると言い続けている人がいる一方で、良くなるとずっと言い続けている人もいるのでしょうか。

そういう人がいてもいいと思うのですが、そういった方はあまり見かけません。1つにはいつでも楽観的な人というのは賢く見えません。私の例でいうと、私が調査部で最初に書いたレポートはバブルの時でしたから、「来年の景気には一点の曇りも無い」と書いたわけです。上司に「君の結論には賛成だけれども、これをこのままお客さんに配ると読んだ人が君のことを何も考えていない愚か者だと思うから止めておいたら」と言われて書き直しました。「景気の先行きには一点の曇りも無いが日米貿易摩擦は心配である」と書き直したら上司の決裁が得られました。私自身の経験としてそういうことがありました。今でも私は「止まった時計」ではないですけれども、比較的楽観的なことを言う場合が多いので、あまり嬉しくない御批判を頂くことがあり、「世の中にはこれほど多くの問題点やリスクがあるのにそんなこともお気づきにならないのですか」と聞かれたりします。「気付いているけれどもなんとかなると思っているんですよ」とお答えするのですが、あまり納得して頂けないことが多いです。

悲観的な人の方は賢く見えるだけではなくて、面白い話も出来ます。悪いことが起きそうだというと様々な話が出来ます。
例えば、イギリスのEU離脱で欧州経済が混乱します。日本の財政赤字が大きいので日本政府は破産するでしょう、などいくらでもありそうな話を作りだして面白おかしくしゃべることが出来るわけです。一方で景気が良くなるという話をしようと思うと、欧州の経済が混乱すると言っている人がいるけれども、恐らくそれほど悪くはならないでしょう。日本政府もおそらく破産しないでしょう。景気は良くなるはずです。こんな話を聞いても誰も面白いと思いません。

このような理由から、恐らくマスコミでも楽観的なことを言う人より、悲観的なことを言う人の方がよく登場しているのではないかと思います。聞き手が喜ぶから仕方がありませんね。そういうわけで、いつでも楽観的な「止った時計」というのは悲観的な「止った時計」に比べてビジネスモデルとしてはいまいちではないかと思っています。

では、今日のまとめです。

いつでも景気が悪くなると言い続ける人がいますが、それはよく練られたビジネスモデルなのです。景気が良い時は悲観的な人が目立つし、景気が悪くなった時は予測が立ったと胸を張れます。また悲観的なことを言うと賢く見えるますし、面白い話が出来るということもあるのです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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