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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イギリスのEU離脱② (企業財務 M&A/村藤功)

イギリスのEU離脱②

村藤功 企業財務 M&A

16/09/16


キャメロン前首相はEUを離脱しない方がいいと言っていたので辞任し、新しく保守党の党首や首相が代わりました。誰が新しく党首・首相になったのかというと、メイさんという女性です。彼女は、本当は離脱派ではなく残留派でした。ここで離脱交渉は一体誰がするのかという話になりますが、メイ首相が決めた交渉担当者は3人で、新外務大臣のボリス・ジョンソン、EU離脱相のデービス下院議員、そして国際貿易相のフォックス元国防相です。3人とも離脱派のリーダーですが、特にボリス・ジョンソンはEU離脱を大変推しており、キャメロンの後の党首・首相になるのではないかと言われていました。結局彼は党首選挙に出馬しないことを表明して皆大変驚きました。一方、メイ首相もなかなか考えのある人で、離脱派の3人をEU離脱交渉の担当者に置いたという状況です。交渉が始まったのかというとまだですが、離脱通知を今年することは望ましくないため、メイ首相はドイツのメルケル首相やフランスのオランド大統領に会い、EU離脱について準備期間を設けることに理解を求め、メルケル首相もオランド大統領もこれに応じました。交渉は来年から始まりますが、イギリスとしてはEU統一市場への参加は失いたくないが、労働者の移動の自由は規制したいという立場です。イギリスの離脱派の人達はこうしたいいとこ取りのようなことが出来るはずだと言っていましたが、これに対してEU側としては「EU統一市場に参加する」ことと「労働者の移動の自由」はセットであるという見解を示しています。6月23日に行われたイギリスの国民投票でEU離脱が決定しましたが、ここから誰がどのように交渉を行っていくのかということになります。ちなみにノルウェーがどうなっているか皆さんご存知でしょうか。ノルウェーの場合はEU統一市場に参加しますが、人の移動の自由もセットであるというEU側の方針を受け入れる方向になっています。しかし、イギリスの場合はセットで受け入れるくらいならそもそも離脱はしていなかったという話なので、これから色々なことを交渉しにいくということです。

では、そもそもイギリスがEUから離脱するとか、アメリカでトランプが大統領になるかもしれない等、世の中で色々恐いことが起こっているわけですが、その背景は何なのでしょうか。これは先進国の多国籍企業がグローバライゼーションの名のもとに中国やASEAN、インドやアフリカといった人件費の安い途上国に海外進出をしていることが理由の一つに挙げられます。途上国の人々が安い給料で働いているということになると、本国(ヨーロッパ諸国やアメリカといった先進国)の労働者たちの給料は上がりません。また、国外(例えばイギリスの場合は他のEU諸国の人々や東欧の人々、アメリカの場合はメキシコ周辺)から労働者が入ってくるかもしれません、しかしそうすると先進国の多国籍企業のトップの人たちと、発展途上国の労働者の給料は上がるものの、圧倒的にマジョリティーの先進国の労働者については全く給料が上がらないことはおろか、下がるくらいだと言われており、自分たちの給料が上がらない原因となっている人々に対する不満が盛り上がります。こうして途上国から自国(先進国)に入ってくるなとか、あるいは出ていけということになります。アメリカでは「金持ちは許さない」といったサンダース氏も人気がありますが、これらは同じ流れであると言えます。アメリカの大統領選挙やイギリスのEU離脱国民投票といった投票があると、マジョリティーの中間労働者層の不満が噴出することになるわけです。ある意味では、多国籍企業の経営者やトップ層は利益を得ている方なので、EUにいたほうが良かったということになります。ですから政治家たちも多くがEUに残った方が良いと思っていました。ところが国民投票を行ってみると、中間層として人数が多い労働者が、給料が上がらないと怒っていたのでEU離脱という結果となってしまいました。そういう意味では単に、イギリスの場合ならEU離脱、アメリカ大統領選の場合ならトランプが大統領になっては困ると言っているだけでは済みません。その裏にある背景では一体何が起こっていたのかということを理解しなければいけません。ちなみにEUがどのように発展してきたかをご存知でしょうか。長い話なりますが、最初、EUは1952年に欧州石炭鉄鋼共同体であるECSC(European Coal and Steel Community)をフランスやドイツが作りました。1967年の欧州共同体であるEC(European Community)設立後、イギリスは少しだけ片足を突っ込むけれど全部ではないと言いながら73年に単一市場への参加を目的として加盟しました。93年に欧州連合であるEU(European Union)の発足時も市場への参加を目的として参加を継続しました。しかし、95年にEU内の労働者の出入国自由を認めるシェンゲン協定が発効しましたが、イギリスはこれに参加せず、2002年から始まったユーロによる通貨統合にも参加していません。もともとEUの方針にイギリスが否定的で、EUが何かをしようとするとイギリスが否定的に出るパターンがずっと続いていたため、実際はイギリスがEUを離脱した段階でEUとしてもやっと前に進めるという説もあります。ですから、EUが崩壊するかもしれないという話もある一方で、元々イギリスはEUの方針に対して消極的でいいとこ取りをしようとしていたのだから、かえってイギリスが離脱してくれた方が良いという見方もあるくらいです。一時、EUが崩壊するという懸念もありましたが、イギリス国内の混乱が予想外に大きく、EU加盟諸国としてはやはり離脱は望ましくないという話になり、今はEUが大変盛り上がっています。そういった意味ではどちらかと言えば、むしろ今回のイギリスの件でEU統合が前進するかもしれないとも言われています。

それでは今日のまとめです。
イギリスは6月に行われた国民投票でEU離脱を選択しましたが、背景には国際化で所得が伸び悩んだ中間労働者層の不満がありました。EU崩壊の可能性が無いわけではありませんが、EUの方針に否定的なイギリスを失ってむしろ統合してしまうかもしれません。現在、キャメロン前首相の後任が元残留派のメイ首相になり、EU離脱の交渉担当として離脱派だったボリス外務大臣、デービス離脱担当大臣、そしてフォックス国際貿易大臣を任命しました。来年から離脱に係る交渉が始まると言われています。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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