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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 生産性とは何か:制約条件の理論 (企業戦略、生産管理/目代武史)

生産性とは何か:制約条件の理論

目代武史 企業戦略、生産管理

16/09/14

今日は「生産性の意味」についてお話したいと思います。『ザ・ゴール』という本をご存じでしょうか。

この『ザ・ゴール』は、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラットという方が書いた本です。日本語版は2001年に出版されました。実は英語版の初版は1984年に出版されましたが、日本語に翻訳されたのはそれから15年以上経ってからです。著者によると、「部分最適」に優れた日本人がこの本を読んで「全体最適」の考え方を学んでしまうと益々強くなってしまうため、著者が日本語訳を長年許さなかったという曰く付きの本です。

日本語版出版当時、世界中で250万部が売れたと言われており、日本でもベストセラーになりました。
この『ザ・ゴール』は、ある工場の工場長を務める主人公が、工場の立てなおしに奮闘する小説仕立ての本です。主人公のアレックス・ロゴは、他の企業向けの工業製品を生産する工場の所長です。大量の仕掛かり在庫や納期遅れに悩まされ、収益性の改善に四苦八苦していました。ある日、本社からあと3ヶ月で立て直さなければ工場を閉鎖する旨を言い渡されてしまいます。そんな時アレックスは、大学時代の恩師ジョナと偶然再会します。ジョナは大学で物理学を教えている大学教授です。アレックスは工場に導入したロボットにより生産性が大幅に上昇したという話をしました。しかし、ジョナ教授はロボット導入による生産性向上に疑問を投げかけます。そして、「生産性とは一体何なのか」問いかけるのです。アレックスは余りにも根本的な質問に戸惑ってしまいます。恩師ジョナは更にこうたたみかけます。「君の会社の本当の目標、つまりゴールはなんなのか、目標が分からなければ生産性の意味は理解出来ないのだ」と。

この本は小説仕立てですが、その生産性の本質を問うビジネス書になっています。元々ゴールドラットが経営していたコンサル会社がありまして、ある意味そのコンサルティング会社の宣伝のために書かれた本でもあったわけです。

では、会社の目標とは何でしょうか。
アレックスの場合は工場経営ですのでお金を儲けることです。あまりに単純と思われるかもしれませんが、それが目標です。

では、お金を儲けるためには何が必要でしょうか。
一つは製品を販売することです。これも非常に単純ですね。でも間違えてはいけないのは、製品を生産することではない点です。生産することではなく販売することが重要です。いくら作っても売れないと意味がありません。売れなければお金を儲けることは出来ません。ゴールドラットはこれを「スループット」と呼んでいます。「スループット」とは、販売を通じてお金を作り出す割合ということです。もう少し専門的に言うと、販売価格から製品1個当りの直接材料費を引いたものに、販売数量をかけたものがスループットとなります。

次に、お金を儲けるために必要なことは「不必要な在庫を減らすこと」です。在庫には一般的に「原材料の在庫」、「完成品の在庫」、作りかけの製品を意味する「仕掛かり在庫」などがあります。

このように工場内に在庫が多いということは、会社の金回りの悪化、品質の悪化、在庫管理コストの上昇、顧客への納期の遅れなど様々な問題を引き起こします。アレックスの工場では生産性を向上させるために一部の工程でロボットを導入し40%近い能率の向上を実現させました。しかし、工場全体では一向に生産性は改善せず、顧客への納期も守れませんでした。

その原因は工程同士の繋がりにあったわけです。通常、製品の生産には加工や組立などいくつもの工程が関わります。工程から工程へと品物が加工されながら移動することで、次第に製品が完成していくわけです。しかし、それぞれの工程では生産能力にバラツキがあることがよくあります。例えば、ある工程では一つの部品を加工するのに40秒かかり、次の工程では60秒かかるといった具合です。ここでもし最初の工程にロボットを導入して生産性が20%上昇したらどうなるでしょうか。40秒かかっていた工程が20%改善するわけですから、8秒の改善になります。

しかしこの場合でも、工程全体で見るとやはり60秒に一つしか製品を作ることはできません。
一番目の工程でどれだけ加工スピードが上がっても、2番目の工程は作業に60秒かかるわけですから、結局2番目の工程の待ち時間が増えるだけになるわけです。このように生産工程全体のペースを制約する工程のことを「ボトルネック」といいます。ボトルネックの改善なしに他の工程をいくら改善しても生産ライン全体では生産性は向上しません。むしろボトルネック工程の前には、さばききれない仕掛かり在庫の山が出来て、実態は更に悪化する可能性があります。このように、生産ラインの能力を制約している工程、つまりボトルネックに着目して工程改善を図るアプローチを、「制約条件の理論」と言います。英語では"Theory of Constraints"といい、略して"TOC"と呼ばれます。『ザ・ゴール』の著者ゴールドラットは、このボトルネックの解消こそが全体最適のカギだと説いているわけです。

では、今日のまとめです。

生産性を理解するためには一部の工程を見るだけでは部分最適に陥ってしまいます。生産ライン全体や工場全体の観点から、全体最適の視点を持つことが重要です。制約条件の理論は生産ラインの能力を制約している工程に着目し、このボトルネックの解消を図ることを目指しています。

参考文献
E・ゴールドラット(2001)『ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か』ダイヤモンド社

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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