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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本のコスト競争力 (企業戦略、生産管理/目代武史)

日本のコスト競争力

目代武史 企業戦略、生産管理

16/09/13

今日は、「日本のコスト競争力」について2つの報告書を基にお話したいと思います。いずれも世界のコスト競争力の勢力図が今変化しつつあるというお話です。

最初にご紹介するのは、アメリカのコンサルティング会社、「ボストン・コンサルティング・グループ」(略してBCG)が発表した報告書です。
「メード・イン・アメリカ 再び」という報告書で、これは世界の主要輸出国25カ国をとりあげ、その生産コストの変化を2004年と2014年の2時点で比較したものです。BCGによると、「2004年から2014年の間に主要25カ国の生産コストが大きく変化して4つのグループに分類できる」としています。

第1のグループは、「新 低コスト国」と言われる国々です。その代表例がメキシコです。メキシコでは、人件費の上昇が緩やかに抑えられる一方で、生産性は持続的に上昇し、為替レートも安定するなど、生産コストが抑えられてきました。その結果、現在ではメキシコは、電気製品や自動車の主要な輸出国に成長しています。

もう1カ国、BCGが「新 低コスト国」として挙げているのは、意外なことにアメリカです。アメリカでもメキシコと同様の緩やかな人件費の上昇、生産性の継続的な改善といった要因に加えて、シェールガス革命によるエネルギーコストの低下が低コスト化に寄与しています。アメリカで「低コスト国」というのは意外ですよね。

そして第2のグループは、かつて「低コスト国」で、現在コスト優位を失いつつある国です。これにはブラジル、中国、チェコ、ポーランド、ロシアが含まれています。

中国では、10年以上にわたって人件費が10~20%上昇し続けており、生産コストの高騰を招いています。人件費以外の要因も含めた生産コスト全体で見ても、中国はアメリカに対して、2004年には14%ポイント生産コストが低かったわけですが、2014年にはその差はわずか4%ポイントまでに縮まっています。

第3のグループは、アジアやヨーロッパ、中南米といった地域のくくりで「低コスト国」候補になりそうな国々です。例えばインドやインドネシア、オランダ、イギリスなどが挙げられています。インドやインドネシアでは賃金は急激に上昇していますが、他方で通貨安や生産性の大幅な上昇により、コスト競争力が高まってきています。

最後の4番目のグループは、10年前にすでにコストが高く、引き続きコストの高まっている国です。オーストラリア、ベルギー、フランス、イタリア、スウェーデン、スイスといった国です。アメリカの生産コストを100とすると、オーストラリアは130、ベルギー123、フランス124、イタリア123、スウェーデン116、スイス125といった水準になっています。

ここまででまだ日本が出てきていません。実はBCGのレポートでは日本も調査対象に入っているのですが、4つのどのグループにも分類されていません。日本の生産コスト水準は、アメリカを100とすると111ですので、著しくコスト劣位にあるわけではありませんが、「新 低コスト国」と言えるほど国全体のコスト競争力が高まっているわけでもありません。そういった意味では中途半端な位置にいるのが日本というわけです。

ここからわかるのは、日本はこれから低コスト国」に向けて動いていかなければいけないということです。いかにコストを下げていくかということは、日本にとって非常に重要なポイントになってきます。

そこでもう1つご紹介したいのは、東京大学の新宅 純二郎教授が座長となって2013年から2014年にかけて実施した、「日本の電気産業の競争力調査」です。

かつて中国の人件費は、日本の20分の1と言われていました。日本国内の電気産業の工場は競争力を失い中国をはじめとするアジアの新興国に工場を海外移転させていきました。ところが日中の賃金格差は、現在10分の1程度に縮まってきています。中国の法定最低賃金を見ますと、1998年から2013年にかけて上海では5倍に上昇しています。北京では4.5倍、青島では7.7倍にまで高騰しています。

その間、日本にとどまった工場はひたすら現場改善を積み重ね生産性を向上させてきました。例えば、米沢にあるノートパソコンの組立工場では、2000年から2012年の間に労働生産性が8倍に上昇、工場内部品在庫は45分ぶんにまで縮小されたそうです。元々高かった国内工場の生産性もやりようによってはまだまだ改善の余地が残されているというわけです。

その一方で、中国をはじめとする新興国の人件費は、今後もどんどん上がっていく事が予想されますので、このまま日本国内の工場が生産性を磨き続ければ、中国とも生産コストで戦えるところまでいく可能性は十分に期待できます。

ただし、全ての日本の工場が中国に勝てるわけではありません。新宅教授らの調査によると、生産性を向上し続けられている元気の良い工場には、下記の特徴があるそうです。

①自ら考え、行動・営業する工場であること
②機能集約工場であること
③人と機械・設備の合わせ技を活かす工場であること
④戦うマザー工場であること
⑤改善を地道にコツコツと継続する工場であること

こういった特徴を合わせもっている元気のいい工場では、これからも生産性を向上し続けることが期待されます。

では、今日のまとめです。
世界の生産コスト競争力は、今大きな変化の時代にあります。かつて圧倒的な低コストを誇っていた中国は、人件費やエネルギーコストの高騰からそのコスト優位を失いつつあります。一方、生産性の向上とシェールガス革命によりアメリカのコスト競争力は再び高まりつつあります。日本においても生産性の向上によりコスト競争力を高める余地は十分に残されているでしょう。

参考文献
 ボストン・コンサルティング・グループ(2014)「主要輸出国25カ国の生産コスト比較:世界の生産拠点の勢力図の変化」 http://www.bcg.co.jp/documents/file172753.pdf
 新宅純二郎、鈴木信貴、横澤公道、福澤光啓、稲水伸行「電器産業の現場力調査研究委員会 成果報告」『電機連合NAVI』No. 53 http://www.jeiu.or.jp/navi/upimage/2015040300002_1.pdf

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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