QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード25 リーン生産システム (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード25 リーン生産システム

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/09/01

今回のまとめ: リーン生産システムとは、「ジャスト・イン・タイム」方式などによって構成される、無駄な在庫を持たない生産システムです。


 今回は、「リーン生産システム」というキーワードを取り上げます。リーンという英語には、ほっそりとしている、贅肉がない、筋肉質であるといった意味があります。つまり「リーン生産システム」とは、無駄な在庫を発生させない生産システムのことです。これは、日本の自動車メーカー、特にトヨタ自動車が実現した生産管理方式に対して、米国の研究者らがはじめた呼び方で、後に自動車に限らず、無駄のない生産システムに対する一般的な呼称になりました。しかし、ここでは自動車生産の事例に沿って特徴を説明したいと思います。

 リーン生産システムと呼ばれる生産管理方式がいかに画期的であったのかは、それ以前の大量生産(マス・プロダクション)システムと比較してみるとよく分かりますので、そちらの方から説明しておきます。
 自動車の大量生産システムは、米国のフォード社によって導入されました。その経緯は、1908年に販売され始めたT型フォードという自動車の生産と密接に結びついています。T型というモデルでは、部品の互換性が高められ、取り付け作業も簡単化されたことにより、自動車の組立作業の標準化が著しく進展しました。その結果、生産コストが大幅に削減され、T型フォードの価格はライバル車に比べて、はるかに安くなっていきました。
 こうして、高級品であった自動車が、中産階級の世帯にも手の届く製品になり、いわゆるモータリゼーション、自動車の大衆化が進展すると、高まる需要に応じるため、大量生産システムの確立が重要な課題となってきます。1913年にはデトロイトの工場にベルトコンベアーによって動く組立ラインが導入されました。このシステムによる生産性の向上は、絶えずラインを動かすことによって追求されていきました。品質管理は基本的に生産ラインの出口ないし出荷段階で行われ、需要の変動に備えて一定の在庫が保有されることになります。
 大量生産システムでは、組立作業の標準化が極限的に追求された結果、組立工の労働には熟練が形成されず、それ自体が機械的で置き換え可能なものになってしまいました。これは作業現場を単調で劣悪なものとし、労働者の働く意欲を損なう結果をもたらしました。チャールズ・チャップリンが「モダンタイムス」で痛烈な風刺を込めて描いた世界です。

 このように劣悪化した職場環境は、しばしば激しい労使紛争を引き起こすことになりました。日本でも戦後早い時期に、労使紛争が激化しています。この職場環境の改善という課題に対して企業側が行った対策の1つが、品質管理運動、QCサークル活動の導入です。この活動では、作業者が班に分けられ、各班には職場管理、機械の修繕、品質検査などに主体的に取り組むことが指示されました。その結果、作業者の労働意欲が高まり、日本企業の製品の品質は大きく向上したと言われています。
 リーン生産システムの源の1つは、この品質管理運動にあると見られています。今日、自動車の組立ラインでは、何かトラブルが起きたときには、それに気づいた作業員が直ちにラインを止め、その場で前後の作業員が集まって問題の根本原因を究明するということが行われています。これは、大量生産システムの常識からみると、極めて非効率な取組に見えます。しかし、自動車の機械的な構成が高度に複雑化し、簡単には完成品の品質をチェックできない特性を持つようになると、このようにして生産プロセスで品質を作り込むことは、むしろ合理的な方法であることが明らかになりました。
 トヨタ自動車が実現した生産システムがリーンであると言われるもう1つの理由は、「ジャスト・イン・タイム」という生産管理の方式にあります。その仕組みは、「必要なものを必要な量だけ必要な時に作る」という標語に表されているように、部品を生産する各工程が、後工程で使用された部品のコンテナに付けられている「かんばん」が戻ってくることによって、そこに記載されている必要な量だけの部品を補充するための生産を行うというものです。このような方式によって、在庫をほとんど発生させないシステムが実現しました。
 このようにリーン生産システムは、伝統的な大量生産システムとは明らかに異なる生産管理の思想に支えられており、画期的なプロセス・イノベーションだったと言ってよいものです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ