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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 共進化社会システム (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

共進化社会システム

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/08/02

今回のまとめ: 九州大学の共進化社会システム創成拠点が目指す社会像は、第5期科学技術基本計画で提唱された超スマート社会の先駆けとなるものです。

今回は、イノベーションに関する九州大学の取り組みの1つをご紹介します。
 九州大学では、平成25年度から「共進化社会システム創成拠点」という事業を推進しています。これは、科学技術振興機構の「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」という支援プログラムに採択された事業です。COIプログラムというのは、10年後の目指すべき社会像を見据えた挑戦的でハイリスクな研究開発を支援するためのもので、これに九州大学が提案した社会像が「共進化社会システム」です。
 耳慣れない言葉かも知れませんが、「共進化(co-evolution)」という言葉は、イノベーション・システムに関する研究の中では、度々用いられてきました。元は生物学の用語として使われ始めたもので、一般的には複数の生物種の変化が、互いの進化に影響を及ぼし合う状態として定義されています。よく知られている例は、「相利共生」と呼ばれる状態がもたらす進化です。例えば、ハチ鳥の嘴の形態と、ハチ鳥が蜜を吸いながら花粉を媒介する蘭の花弁の構造は、互いに利益をもたらす方向へと共に進化してきたことが知られています。
 イノベーション・システムに関する研究の中では、国ごとのイノベーション・システムが多様であり続けている理由を理解する上で、この「共進化」関係が鍵概念として使われてきました。科学技術に関する知識は普遍的なものだとされていますが、技術的なイノベーションの実現の仕方には、ただ1つの最適なシステムが対応しているわけではありません。それは、イノベーションの方向が科学技術の論理だけで決まるのではなく、国ごとに異なる歴史的な背景を持った制度の影響を受けるからです。また、制度の側にも、イノベーションの方向に適応していくための変化が起こります。イノベーション・システムの研究は、こうした関係を科学技術と制度の共進化として捉えてきました。
 九州大学の事業では、このような共進化の概念を更に拡張して、多様な背景を持った人々の集団が共に進化していける社会、公共空間と私的生活空間が共に進化していける社会といった意味を含めて「共進化社会システム」という将来ビジョンを掲げています。
 また、こうした将来ビジョンを実現させるために、都市OS(オペレーティング・システム)の開発と社会実装という課題を掲げています。都市OSとは、ICTを活用した都市情報基盤で、それが実装された社会では、誰でも快適に都市を移動し、安定的にエネルギーを利用でき、必要な情報を入手できるという姿が描かれています。このビジョンは、前回お話した第5期科学技術基本計画の中で提唱されている「超スマート社会」に先駆けたものと言えるでしょう。

 このような社会像の実現に向けて、九州大学のCOI事業には学内の様々なセンターが参加し、また民間企業などの参加も得て、課題ごとのユニットが構成されています。例えば、人やエネルギーに関する大量のデータを収集・統合する都市OSのプラットフォームに関する研究開発を行うユニット、収集されたデータを処理するシステムの構築などに当たる産業数学のユニット、情報を伝達するための次世代のデバイスを開発するユニット、燃料電池を応用した技術の社会実装に当たるエネルギー・ユニットなどです。
 私は、九州大学では科学技術イノベーション政策教育研究センター(CSTIPS)の責任者を兼務しているのですが、このセンターも科学技術イノベーション政策ユニットを担当することでCOI事業に参加しています。
 CSTIPSは社会科学分野のセンターですから、我々のユニットでは技術やシステムの開発を担当しているわけではなく、開発された技術やシステムの社会実装を社会科学的な観点から支援することを課題としています。その際、実現されるべき将来の視点に立って、現在の課題を明らかにするというアプローチを採っています。これをバックキャスティングと呼んでおり、COIプログラムの中で重視されている方法的視点です。
 具体的には、まず将来像をできるだけ具体的に描き出し、それをサイエンス・カフェの開催や大規模質問票調査の実施などを通じて一般の市民に提示し、社会的に受け容れられるに至るまでの課題をフィードバックするといった方法をとっています。
 この事業が目指す社会像は、遠くない将来、福岡の街中に実現していくと思いますので、ご注目ください。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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