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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > テスラ自動車の快進撃:Elon Musk氏の戦略 (イノベーション・マネジメント、国際経営/朱穎)

テスラ自動車の快進撃:Elon Musk氏の戦略

朱穎 イノベーション・マネジメント、国際経営

16/08/04

今日は「テスラ自動車」についてお話します。私がシリコンバレーに滞在していた頃から、テスラ自動車に大変関心を持っていました。現地でテスラ自動車のショールームも何回か訪れたり、同社の開発者から話を伺ったりしたこともありました。この企業の2004年以降の快進撃を見ると、創業者の一人、現CEOのイーロン・マスク氏の大きなビジョンなしにテラス自動車を語ることは出来ないのではないかと思います。

日本ではまだまだ「テスラ自動車」には馴染みがないと思いますので、テスラ自動車について簡単に説明します。テスラ自動車は、2004年にシリコンバレーで誕生した電気自動車専門のベンチャー企業です。その創業者の一人がイーロン・マスク氏です。この方は天才的な戦略家ではないかと思っています。しかも、この方は非常に勉強家でもあります。マスク氏は、ビジネス教育で有名なウォールトン・スクールから経済学の学位だけではなく、物理学の学位も習得されています。その後は、東から西海岸に移り、スタンフォード大学で応用物理学の博士課程コースに進学する予定だったそうですが、ちょうどその頃、95年辺りだったと思いますが、シリコンバレーの創業文化に非常に大きく影響され、物理学の博士コースに入学して僅か二日間で中退されています。95年に当時の名門企業だったNetscapeに求職したわけですが、残念ながら失敗して、自ら創業することになったわけです。最初に作ったのは「Zip2」という企業でした。99年にオンライン取引企業の「X.Com」を創業しましたが、この企業は後にコンフィニティーという企業と統合されたことにより「PayPal」という名前に変わりました。

これが皆さんもよくご存知の「PayPal」という企業の誕生秘話です。2002年に当時のイーベイはこの大金で「PayPal」を買収したことをきっかけに、「PayPal」の最も大きな株主だったマスク氏はなんと1.8億ドルの大金を手に入れました。ここで悠々たる人生を過ごすことも出来たわけですが、本人は全くそれに興味がなく、この資金を梃にロケット技術関連のスタートアップ企業、「Space X」を創業されました。「テスラ自動車」はその後の話になるわけですが、2004年にマスク氏はスタンフォード大学に招聘され、講演しています。講演の席に当時の博士課程の学生達がエネルギー関連のプロジェクトをやっていたため、講演後にマスク氏にこのプロジェクトに出資してもらえないかと話を持ちかけたそうです。この話をきっかけにマスク氏はポケットマネーを拠出し、「テスラ自動車」の誕生に繋がったわけですね。

スタンフォード大学の学生達のエネルギー関連プロジェクトにマスクさんが出資をしたことがきっかけでした。ベンチャー企業を作ると、一つの企業に専念すると言われていますけれども、マスク氏という方は同時に色んなことを手がけられています。テスラ自動車以外にも、先ほどお話しした「Space X」と更に「Solar City」といういずれも私達人類の未来に大きな影響を及ぼすスタートアップ企業の経営に携っておられ、天才的な創業家とも言われています。

そのテスラ自動車ですが、2004年から2016年までの間に3つの快進撃があるのではないかと思っています。そしてこの3つのステップには実は全部このマスク氏の天才的な戦略が織り込まれているのではないかと思います。まず、創業直後に、10万ドルのロードスターという電気自動車を市場化させました。この第一歩の戦略が、実は非常にイノベーティブでした。要するに、電気自動車という従来はちょっと控えめのイメージを持たれていたものに、それとは全く異なった発想で10万ドルというハイエンドのスポーツカーをコンセプトとして提供しました。更に、IT技術の進化とオープンイノベーションによって商業化に結びついた訳ですけれども、言ってみれば物作りというより寧ろこのコンセプトで勝負する21世紀の時代的先進性が感じられる一つのスタートだったわけです。まさにこの奇想天外な発想によって、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストとダイムラーから戦略的投資を引き寄せました。その後は、7万ドルのモデルSを発売し、2013年の売上台数は3万5千台を実現しました。これもテスラ株の急上昇につながりました。そして、なんと今年この3万5千ドルのモデル3を発表しました。

10万ドルからすると3万5千ドルと下がったわけです。これはやはりマスク氏の戦略として、ハイエンド路線とは全く逆ですね。今度はそのメインストリームマーケットへの拡張戦略として位置づけられています。但しここまで来るとやはり元々このハイエンド市場で非常に有名な企業は、メインストリームマーケットを狙って安い価格設定の製品を発売すると、消費者に何かマイナスの影響があるのではないかという懸念も出てきます。言ってみれば贅沢品をずっと扱っているブランド品メーカーが急に大衆化路線に走ってしまうと、消費者から認知の不一致みたいなことが起こるんではないかという懸念があります。但し、これまでのテスラ自動車のこのハイエンドのイメージと、更にマスク氏個人のブランドバリューによって、このような消費者側の認知の不一致をカバーすることが出来るのではないかと期待しています。実は、殆どの消費者は、たとえばモデル3はモデルSの半分の価格ですが、性能的にはモデルSとあまり変わらないという風に思っていますし、また先程ずっと紹介しましたマスク氏本人のこれまでの色んなブランドイメージから見れば、テスラ自動車のブランドバリューを維持し続けるのではないかと思います。

では、今日のまとめです。

テスラ自動車という非常に面白いスタートをきった企業ですけれども、ハイエンドから今度はメインストリームマーケットへの快進撃を急展開しようとしています。今後どうなっていくのか非常に興味深い企業ですね。今後も見守っていきたいと思います。


分野: 経営学 |スピーカー: 朱穎

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