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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ものづくり競争の捉え方 (企業戦略、生産管理/目代武史)

ものづくり競争の捉え方

目代武史 企業戦略、生産管理

16/07/26

今日は、製造業をはじめとする「ものづくり」の競争力をどう見るべきかについてお話ししたいと思います。
企業ランキングには、様々なタイプがありますが、よく用いられるのは「売上高」や「時価総額(株価×株式発行総数)」です。例えば、2014年度の製造業売上高ランキングでは、第1位がトヨタで売上高27.2兆円、2位がホンダで12.6兆円、3位が日産(11.3兆円)、以下JXホールディングス(10.8兆円)、日立製作所(9.7兆円)と続きます。

では、売上高の大きな製造企業は、ものづくり競争力の強い会社でしょうか。
確かにそういった側面はあります。しかし、売上高は、企業の実力以外の要因にも左右されます。例えば為替相場がその典型です。ものづくりの実力が変わらなくても、円安になれば輸出に有利、円高になれば輸出に不利になります。
先程述べた例でいえば、特に自動車業界は為替相場に左右されます。
例えば、トヨタ自動車の2016年3月期(つまり2015年度)の連結決算では、売上高は28兆4千億円、営業利益は2兆8,500億円でした。しかし、2017年3月期(つまり今年度末)の業績見通しでは、売上高26兆5千万円と1兆9千億円の減収、営業利益に至っては1兆7千億円と約40%の減益を見込んでいます。これだけ減るという風に見込んでいるのは為替レートの問題が大きいといえます。
しかし、わずか1年の間にトヨタのものづくり競争力が40%も低下するとは考えにくい。これは業績を計算する際の想定為替レートを前年より15円円高の1ドル=105円に設定(ユーロは133円→120円)したことによります。しかし、ものづくりの「実力」の尺度は、もっと安定的なものであるべきで、外部要因によって乱高下すべきものではありません。

では、ものづくりの競争力はどのような尺度で見ていくべきでしょうか。

ものづくりの競争力を見る尺度として東京大学の藤本隆宏教授は、ものづくり競争力の重層構造を提唱しています。これには4つの階層があります。
第一の階層は「収益力」です。売上高や利益、株価といった財務成果を指します。
第二の階層は、「表層の競争力」と呼ばれるものです。これは、収益力に直接左右するもので、お客さんが製品を評価する要素です。例えば、価格や性能、信頼性、納期の正確性、デザインといったものです。
第三の階層は、「深層の競争力」です。このレベルの競争力は、生産性の高さや、コスト競争力、生産リードタイムといった尺度で測ることが出来ます。お客さんの立場からすれば、大切なのは製品の価格や性能や信頼性であって、その製造原価や労働生産性といったものは正直なところあまり関心はないと思います。しかし、企業の側からしますと、コストや品質管理の裏付けなしに、価格の引き下げや故障の無償保証などをやっていては会社が回っていかなくなります。したがって深層の競争力は、表の競争力を支える生産や開発の現場の競争力を表すものとなっています。
お客さんの評価の表層の競争力が氷山の一角だとすれば海面に隠れている下の部分が深層、深い部分の競争力というわけです。
最後の第四の階層は、「組織能力」と言われているものです。組織能力は、説明の大変難しい概念ですが、簡単に言うと、「仕組み化された仕事の進め方のパターン」と言えます。仕組み化されている点がポイントで、個人技で成り立っている現場は、その個人がいなくなれば仕事が回らなくなりますし、伝承も困難です。組織能力の中でも、他の会社には真似できないものほど、その企業の長期的な競争力の維持に貢献すると考えられています。

さて、ものづくり競争力をこのように4つの階層で見ることのメリットは何でしょうか。それは、結果と原因を適切に見極められるようになることです。ものづくり競争力の重層構造モデルでは、表面に近いほど為替レートや景気変動などの外部要因の影響を受けやすくなります。もちろんこうした外部要因は重要ですが、売上高や営業利益が40%下がったからと言って、生産性や組織能力が40%下がったわけではありません。こうしたことを理解していないと最終的な結果だけを見て、近視眼的な解決策に走る危険性も出てきます。例えば生産現場は健全であるにも関わらず、工場を海外移転したり、海外部品の輸入に切り替えてしまったりして、現場の長期的な競争力を損なうような施策をとってしまうかもしれません。

それでは今日のまとめです。
ものづくりの競争力には4つの階層があります。収益力、表層の競争力、深層の競争力、組織能力です。企業の業績の良し悪しは、競争力の4つの階層に沿って掘り下げて分析することで、適切に判断することができます。

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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