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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 法人企業統計に見る日本企業の投資態度(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

法人企業統計に見る日本企業の投資態度(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/07/07

前回は、「国内の企業活動には元気がないのでは」と何となく感じられていることが、法人企業統計を用いて客観的に裏付けられる、ということを見てみました。具体的には、日本企業は国内で現状の事業規模を維持するのに必要な投資すら行えていないこと、また、その理由として企業に十分な投資資金がない訳ではない、ということが明らかになりました。また、そこから、企業が投資に消極的なのは、投資したとしても十分なリターンが得られるという期待が持てないことが原因ではないか、という考察も加えてみました。

実際に、日本では人口が2008年にピークを迎え、GDPもほぼゼロ成長に近い水準で推移おり、こうした中で企業がなかなか国内の事業に明るい展望が持てずに、設備投資に対して消極的になることも無理ないように思えます。しかしながら、この点については「鶏と卵」の議論の側面があり、企業がリスクテークに消極的となって攻めの経営を行わずに投資を絞る一方、余剰資金で銀行借り入れを返済してひたすら自己資本比率を高める安全経営に走るようであれば、経済は更なる縮小均衡に陥り、投資環境は一層悪化し、ひいては安全策を取る企業の経営すら脅かされかねません。こうした議論はともかくとして、今回は、企業は余剰資金を何に使っているのか、その点について法人企業統計を使って見ることにしましょう。

法人企業統計によれば、近年、企業の設備投資金額は営業活動で生み出されるキャッシュフローの6割程度にとどまり、フリー・キャッシュフローは大幅なプラス、つまり資金余剰となっている訳ですが、その余剰資金の使途はと見ますと、まず約半分は配当金として株主の支払いに充てられています。このことは、外国人による日本企業の株式所有が増えてきていることもあって、上場企業は配当を増額する傾向にあることとも呼応しています。そして、残りの約半分は投資有価証券の取得に充てられています。この投資有価証券は、定義上純粋な投資として一時的に保有されるものではないこと、また、従来投資有価証券の主体であった企業間の株式の持ち合いは減少傾向にあることから、大半は子会社・関係会社の株式取得と考えられ、その中には海外事業のためのものも多く含まれると考えられます。

このような投資有価証券の取得は、プラザ合意によって急速に円高が進んだ1985年頃にも設備投資額の2割程度の金額が4年程続いたことがありますが、それを除けば1割程度にとどまってきました。ところが、2000年代に入ってからは軒並み2割以上、年によっては4割程度にまで達するようになっています。つまり、プラザ合意後の急速な円高で企業が競って韓国、台湾、香港といった国に製造拠点を作った時期を大きく上回る勢いで、海外投資が行われていることを示唆する数字となっています。

それでは、企業が投資をするのではなくて、銀行からの借り入れを返済して自己資本比率を高めている、という点についてはどうでしょうか。この点について、法人企業統計の長期借入金、短期借入金の総資産に対する比率の変化を見ると、1999年以降いずれの比率も継続的に低下しています。つまり、企業は国内での投資を抑える一方で、海外への投資を増やしてもいますが、同時に借入金の返済を行い、自己資本比率を高めるという形で慎重姿勢をとってきていることが裏付けられます。

以上から、人口減少により日本の市場が縮小する中で、企業が国内の投資に慎重なスタンスをとり、自己資本比率を高めて耐久力の向上に努と同時に、発展するアジア中心に海外での事業を拡大するべくM&Aなども含む積極的な海外投資を行っている姿が浮かび上がりました。これらのことは、企業の立場からは合理的な選択として見ることができます。しかしながら、同時に、次の2つの点で懸念が生じます。

第一に、最初にも述べた通り、国内の市場が縮小する中で、企業が慎重なスタンスを取ることは、個別の企業の選択としては合理的なように見えても、「合成の誤謬」ということを通じて却って市場の縮小に拍車をかけかねず、個々の企業にとって必ずしも合理的とは言えないことです。

第二は、海外への積極的な展開は、日本企業にとって避け得ざる選択肢といえます。しかしながら、日本企業による海外企業の買収案件は、必ずしも上手く行っている訳ではありません。特に、買収後の海外企業の経営という点で、実績を示しているところは限られています。従来型の、日本企業による一からの海外展開についても、現地従業員や現地人幹部の処遇、組織のマネジメントという点で同じような課題に直面しています。

このように、法人企業統計を見るだけでも、今後の日本企業の方向性や課題について考えるための豊富な材料を提供してくれます。

まとめ:法人企業統計からは、日本企業が国内の投資に消極的となっている姿が看取されますが、その一方で、余資を用いて子会社や関係会社を通じた海外投資を積極的に行っている様子が伺われます。一つの統計を具に活用することで、多くの有益な情報が得られます。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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