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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(24) オープン・イノベーション (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(24) オープン・イノベーション

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/07/19

今回のまとめ: オープン・イノベーションとは、社外のアイデアと社内の資源を結びつけ、あるいは社内の未利用資源を社外に提供することに基づくイノベーションの型を言います。


 今回は、「オープン・イノベーション」というキーワードを取り上げますが、この語は近年、イノベーションに関する様々な政策論議の場で頻繁に使われているので、お聞きになった方は少なくないかも知れません。
 この語は、ヘンリー・チェスブロウという研究者によって提起されたもので、彼自身の定義によれば、「企業が社内と社外のアイデアを有機的に結合させて価値を創造すること」、あるいは「企業が自社のビジネスにおいて社外のアイデアを今まで以上に活用し、未利用のアイデアを他社に今まで以上に活用してもらうこと」を意味しています。
 後者の定義では、オープン・イノベーションの2つのタイプが示されています。つまり、社外のアイデアを社内に取り入れる「アウトサイド・イン型」と社内のアイデアを社外に提供していく「インサイド・アウト型」です。
 オープン・イノベーションの概念は、このようにイノベーションの型を示したものであって、それ以上の学術的な理論や体系的な方法論があるわけではありません。しかし、こういう単純な概念が広く受け容れられるようになったことには、理由があります。
 それはチェスブロウ自身が指摘していることですが、近年、企業が行う技術開発のコストが上昇し、一方では製品のライフサイクルが短くなったことによって、イノベーションに対する投資から十分な利益を上げることが困難になってきたということです。このため、企業は自社内で技術シーズから開発するよりも、自社の経営資源を活かせる有望な技術シーズを社外に探索し、見いだされた技術シーズを社内の資源と結びつけてイノベーションを実現する手法を追求せざるを得ないというわけです。
 こういう課題に対応するオープン・イノベーションは、主にアウトサイド・イン型ということになりますが、その成功事例には注目すべきものがあります。
 代表的な事例の1つは、米国のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)という一般消費財メーカーが行った「コネクト・アンド・ディベロップ戦略」という取り組みです。これは、2000年の6月にCEOに就任したA.G.ラフレーによって導入された戦略で、社外からアイデアを導入し、新規ブランドに展開していく方針を打ち出しました。
 P&Gが、この戦略を導入した背景には、研究開発効率の伸び悩みがあったわけですが、その後、同社では社外で開発された要素を何らかの形で利用している製品の割合が15%から35%を超えるレベルにまで増加し、研究開発効率は60%近く上昇したと報告されています。

 日本の産業界でも、だいぶ前から研究開発効率の悪化が指摘されていますから、こうしたオープン・イノベーションの成功事例は関心を集めることになります。しかし、いかなる産業分野にも、オープン・イノベーションが万能薬のような効果を持つわけではないでしょう。少なくとも、オープン・イノベーションが成功するためには、3つの条件が揃わなければならないと私は思います。
 第1に、外部の資源を社内に統合するための組織能力が蓄積されているということです。第2に、外部のアイデアを仲介するための仕組みが存在しているということです。P&Gは、そのような仲介市場を自ら作り上げていきました。第3に、そもそもイノベーションを実現しようとしている製品が、要素技術の寄せ集めで成り立つ設計になっているということです。

 オープン・イノベーションというのは、本来このような条件を考慮した上で、企業が戦略的に導入すべきものです。ところが、日本ではオープン・イノベーションを政策的に促進しようという議論が活発で、「オープン・イノベーション型産学連携」などという意味不明な用語まで使われています。実は、企業がイノベーション戦略を構想する際の選択肢は、オープンかクローズドかという単純な二者択一ではなく、企業グループという産業組織を活かした中間的な方法もあり得るのです。オープンという語を万能薬のように売り回ると、そのような選択肢に対する目を塞いでしまうことにもなりかねません。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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