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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 緊急支援物資の供給② (国際経営、国際物流/星野裕志)

緊急支援物資の供給②

星野裕志 国際経営、国際物流

16/06/30

前回は日本のように毎年自然災害に見舞われるところでは、ヒューマニタリアン・ロジスティクスという被災地への緊急支援物資を供給するシステムが重要という話をしました。その中で、被災地で必要と考えられるものを外部から供給するプッシュ型の支援システムに関して、今回の熊本地震では、いままでの災害からの学習なのか、比較的うまく行っていたということでした。

東日本大震災の際には、地震と津波で被災地が余りにも広いエリアであったために、被災者の情報が把握できないこと、道路などのインフラが破壊されていたこと、トラックなどの輸送手段がなかったこと、さらには全国からの善意の救援物資が無差別に送られて混乱に拍車をかけたということが有りました。それに比べれば、被災地が比較的に限定していたことと、学習効果で、かなり改善されていると感じました。

私は実際に被災地を歩いてきたのですが、一方で今までと変わっていないこともあり、残念ながら、改善されるべき点もいくつか見つかりました。まず1つ目が、需要と供給のギャップということ、2つめが、緊急支援物資の管理に関する専門性、3つ目が、情報の共有とシステム化ということになるかと思います。

それではひとつづつ説明していきます。1つ目の需要と供給のギャップのことです。被災地が実際に必要とするものを調達して供給するプル型とは違って、プッシュ型の支援システムの問題点は、必要と考えられるものを想定しながら、外部から供給するシステムです。
そうなると当然考えられるのは、本当に必要なものが必要なところに供給されなかったり、地域的に遍在することです。つまり、同じ品目が集中して特定の避難所に送られてしまったり、被災者が本当に必要としているものが、十分に供給されないということが、いろいろな場所で発生しました。ツイッターなどで、ここにはたくさんあるとかここには届いていないといった情報がやり取りされていたようですが、そのくらい、どうしても偏りが生じたということになります。

2つめが、緊急支援物資の管理に関する専門性です。今までの災害の経験から、多くの自治体と物流業者の間で災害時の支援連携協定が作られています。今回の被災地でも、いろいろな物資の蓄積拠点で、物流業者のみなさんが倉庫の管理などをされていました。ただ地震の発生直後には、ほとんど物流管理などの経験のない自治体の職員が、拠点を構築して、緊急支援物資の受け入れをされていました。そうなると物流倉庫の管理では基本である搬入管理も、物資がどのロケーションに配置されたのかを含めた在庫管理も不十分なままであり、正確に把握されずに蔵置される大量の物資が、かえって必要な物を必要な被災地に届ける足かせになりました。

また、通常の倉庫管理で行われる物資を地面に直置きせずパレットという台座の上に載せるパレット方式や、同種類の貨物をまとめて移動しやすくするためのカゴ台車が使われていないために、フォークリフト等が利用できず、その後も大量の人出をかけて貨物の移動や再配置が必要とされました。物流の専門家が参加したときには、既に多くの物資が搬入されており、適切な倉庫管理の妨げとなったということがありました。せっかくプロが来られても、それまでの混乱が尾を引いて、その時には、身動きが取れない状況になっていたということになります。

3つ目が、情報の共有とシステム化ということになります。何度もお話ししますが、プッシュ型では、政府、各地の自治体、企業が発送する緊急支援物資が、それぞれ個別に手配され、相互に連携することがないために、一部の物資が集中して余剰が生じるかと思えば、他方で供給不足が生じたとお話ししました。
 
需給バランスの調整が難しいことから、一元的な集中管理が必要不可欠と考えられます。今回そこを埋めたのが、ツイッターとかソーシャルメディアだったわけですが、最初から政府の現地災害対策本部とかが、全国から発送された物資をデータ・ベースとしてまとめ、いつ、どこから、どのような品目が、どの程度の数量、どこに向けて発送されたかを集約し、外部から自由に閲覧することができれば、偏在が避けられて、より円滑な供給計画が策定できたのではないかと思います。情報共有に関わる問題点です。

今日のまとめ:今回の熊本地震の際の緊急支援物資の供給に関して、需要と供給のギャップが生じていたこと、物資の管理に関する専門性の問題、情報の共有とシステム化の遅れという問題を指摘しました。これらは、すべて過去の大規模地震の際にも指摘をされたことです。

これだけ自然経験が多い日本ですから、過去の災害時の対応から学習して、今後も避けられない災害に十分に備えていく必要を痛感しました。今回の熊本地震の被災地を調査した感想でもあります。


分野: 国際ロジスティクス |スピーカー: 星野裕志

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