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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > パナマ文書 (企業財務 M&A/村藤功)

パナマ文書

村藤功 企業財務 M&A

16/06/15

今日は、最近騒動になっている、「パナマ文書」の話をしたいと思います。

何が起こったのかというところから見ていきましょう。昨年8月に、パナマの法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)から、過去40年間で顧客約1万4千人のために設立や運営に関与した21カ国・地域における約21万社のペーパー・カンパニーに関する1100万件以上の文書が流出しました。そして、「ジョン・ドウ」と名乗る仮名の人物――彼は、自分のことを金銭の報酬はうけていない正義の味方だと主張しているのですが――によって、データが南ドイツ新聞に提供されたのです。南ドイツ新聞は自分たちだけでは処理しきれないということで、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)に協力を求めました。そこで、400人のジャーナリストがかかわって1100万件以上の文書が検証され、5月10日にパナマ文書に登場する21万社のペーパー・カンパニーの名前や住所などの情報がデータベース化されて、ウェブサイトに公表されました。

はじめ、そこにあがった名前に、世界は騒然となりました。日本では、セコム創業者の飯田氏をはじめ、丸紅や伊藤忠、ソフトバンク、楽天の三木谷氏などの名前が挙がりました。海外ではもっと大変な人たちの名前がでてきました。はじめは、イギリスのキャメロン首相が、父に儲けさせてもらったというようなことで問題になりました。アイスランドのグンロイグソン首相は、世間から非難を浴び、辞任に追い込まれました。ロシアではプーチンの友人、中国では習近平の親戚がタックス・ヘイブンを利用していたとみられます。ほかにも、オーストラリアのターンブル首相、マレーシアのナジブ首相の息子、シリアのアサド大統領のいとこ、アルゼンチンのマクリ大統領というように、次々と主要人物やその周辺者の名前があがりました。たくさんの国のお金持ちたちが、どうもタックス・ヘイブンにいろいろなものを作って利用していたようです。だいたいはタックス・ヘイブンに法人を作り、その法人の資産として、スイスの銀行で運用するというのがパターンのようです。

さて、タックス・ヘイブンというのは、「租税回避地」とも呼ばれます。タックス・ヘイブンで行われる「租税回避」というと、違法なものだという印象をもつ方も多いかと思います。パナマ文書に名前があがっていた人たちは、違法な「租税回避」をしていたのでしょうか。一概に、そうとはいえません。実は、「脱税」と「節税」という二つの言葉があります。「脱税」は違法なのですが、「節税」はミニマムの税金を払う賢いことだとされています。今回、公開された1100万件の文書においては、脱税と節税が混じっている状況で、ほとんどは節税のはずなのです。ただ、弁護士事務所は「全部節税だ」と言っていますが、脱税も混じっているはずだということで、いま世界中で調べているということなのです。

そもそも、タックス・ヘイブンに置いてあるお金はどのくらいあるのでしょうか。250兆円、720兆円というように、いろいろな説があります。アメリカやEUの政府は年20数兆円の法人税を世界で損しているのではないかと推計しています。これは全世界の法人税収の1割にあたりますが、つまりそれくらいの額が節税・脱税によって取り損ねていると考えられるわけです。

いま、法人税は、世界中で引き下げる流れになってきています。日本の法人税も、アメリカと並んで、かつては40%程度でとても高いといわれていたのですが、だいぶ引き下げられてきました。今年の4月から実効税率で30パーセントくらいに下がっています。さて、その法人税がどこにかかるかですが、日本の法人と、日本の法人の日本子会社にかかります。会計上の連結決算においては、日本の親会社が海外に持っている海外子会社も合算しますが、税務上の連結納税においては、日本企業の海外子会社の課税所得は合算しません。したがって、日本企業の海外現地法人の所得は、その法人がある国で課税されることになっています。そうすると、たとえば現在の日本の法人税の30パーセントで考えると、中国や韓国では25パーセントくらいなので、そのあたりに法人を持っていれば、5パーセント得をすることになります。あるいは、イギリスが最近20パーセントに引き下げたのですが、日本の30パーセントに比べれば、10パーセント得をするということになります。ただし、法人税が0、もしくは1、2パーセントのような国もあるわけで、そうしたところに法人をおいて利益をためることを規制する「タックス・ヘイブン税制」が日本にはあります。これは、20パーセント未満の法人税の国に子会社法人を置く場合には、その未処分所得を課税所得とみなす、という税制です。ちなみに、もとは「20パーセント以下」としていたのですが、イギリスが20パーセントに下げたことで、「20パーセント未満」というように、税制を少し変更しました。イギリスはあまりに大国なので、「タックス・ヘイブン」に含めるわけにはいかないだろうということです。

パナマ文書によって流出した企業は、タックス・ヘイブンでの取引を行っていたということで、そこで行われていたのは違法な「脱税」なのか、合法な「節税」なのか、といった点が大きな問題となり、現在調査されているというわけなのです。

それでは今日のまとめです。
パナマの法律事務所のモサック・フォンセカから、南ドイツ新聞経由でICIJにタックス・ヘイブンの利用者に関する文書が流出しました。この中に違法な脱税と適法な節税があり、各国で騒ぎが起こっています。これからどういう動きをみせるのか、世界中で関心が集まっています。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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