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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > マーケティングにおける製品デザイン(Product Design) ⑥  (マーケティング/岩下仁)

マーケティングにおける製品デザイン(Product Design) ⑥ 

岩下仁 マーケティング

16/06/06

前回に引き続き「製品デザイン」についてのお話です。
自動車を例にデザインの研究をした結果、製品デザインは9つの要素にわけることができました。その9つの要素について具体的に見ていくということで前回は「審美性」という見た目の美しさについてご説明しましたが、今日は「先進性」についてのお話です。

「先進性」は字の通り、何か他社にはない最先端をいくようなデザインを取り入れるというのがこのデザインの要素になります。「先端を行く」というのは、つまり「どこにもない新しいもの」ということですけれども、それは見た目の美しさというよりも、見たことのないデザインや技術を取り入れるといった視点です。例えば、メルセデスベンツはコンセプトを掲げて自動車開発を行いますが、その中でも「F800」というスタイルの自動車は非常に特徴のある自動車のデザインになっています。自動車というと、箱形、直方体をイメージしますよね。その直方体を上からばさっと切って欲しいのですが、直方体を輪切りにするとその側面は何形になりますか?長方形ですよね。ただ、このF800は、どこで切っても円になるという設計になっています。もちろんきれいな円ではなく、少しゆがんだ横に長い楕円の形をしています。通常の車に比べて角が取れ、外から見ても中から見ても美しく柔らかいフォルムになるように設計されているのです。
前回、メルセデスベンツにインタビューをした時の話をしましたけれども、メルセデスベンツのデザインチームがデザインに官能的な美しさが反映されるように意識しているとお話ししていたように、そういうところにもデザイン性が現れているような気がしますね。ただ、前回お話した審美性と違うのは、見た目の美しさではなくて、それが他社にない先進的なデザインになっているというところがポイントです。

メルセデスベンツのデザインセンターの方は、次のようにお話しされていました。「消費者は現代に生きているけれども、我々の自動車は未来にいる」。「我々が顧客に提供しているものこそベストだ」。これらの言葉からもわかるように、メルセデスベンツは世界の自動車メーカーをひっぱっていくトレンドセッターとして、先進性を追求する開発思想があるということがわかりますよね。他にもフォルクスワーゲンには、企業の将来予測部門という部門が存在しています。これは通常自動車ですと、約10年先を見据えて自動車の開発をするわけですが、さらにその先の未来を予測する部門を専門に考える人達がいるということです。

今の時代に合ったものを作っていても、世にその製品を送り出した時には既に時代遅れになっているということになりかねませんから、いかに先を読み、未来にどんなものが必要か、ということを考えながら開発する必要があるのです。そのため、デザインを開発する時のポイントというのは、今ではなく未来のデザインで、どういうものが新しく、買いやすい、使いやすいものになるかということを企業側でうまく意識してデザイン開発につなげていく必要があるということです。

次の製品デザインの要素は「安全性」です。

これは分かりやすいですよね。安全性に特に気を遣ってデザイン開発をしている企業として、「ボルボ」というガブリエルソンとラーソンの二人によって開発されたスウェーデンの自動車メーカーがあります。創業時、この二人は、自動車は人によって運転され使用されるため、「常に安全でなければならない」ということを設計の基本として掲げました。これは現在に至るまで会社の思想として非常に強く根付いています。この安全に対する取組みは、1944年頃から行われています。ボルボは、アメリカの全国高速道路安全局の最優秀セーフティーカー賞を受賞するなど、安全という視点から自動車の設計を行っています。崖からボルボの車を突き落とすCMを見たことがありますか。要は、自動車を崖から突き落とすとグシャンと潰れるのですが、実は潰れることによって中の人を守るクランプルゾーン(英:Crumple zone)という設計になっているということをアピールするCMだったのです。

1966年にできた技術で今では当たり前になってきていますが、当時は非常に画期的でした。しかし、現在は、こういったクランプルゾーンで自動車の中にいる人の安全性を守るという視点だけではなく、歩行者の人がぶつかった時に車から受ける衝撃で怪我をしてしまうため、ボルボはさらに他社に先駆けて、歩行者用のエアバッグを車の前方に付けています。

これにより、歩行者と自動車がぶつかった時に歩行者の方にエアバッグがバンと出るようになりました。今では全ての車種にこれが付いています。乗っている人だけではなく、周りにも気を遣った安全性のデザインであり、なおかつかっこいい設計になっているというのが非常に重要なポイントです。

今日はデザインの要素として「先進性」についてお話ししました。先進性とは、他社に無いような、未来をいくデザインを取り入れるという視点でした。しかしそれだけではなく、乗車者に加えて歩行者の安全まで考慮したデザインにするという視点で「安全性」についてもお話ししました。

参考文献
「製品デザイン要素の解明―自動車産業に対する定性調査による考察―」『マーケティングジャーナル』岩下仁、大平進、石田大典、外川拓、恩藏直人、第34号第3巻、99-116頁、日本マーケティング学会、2015年。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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