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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 鴻海のシャープ買収 (企業財務 M&A/村藤功)

鴻海のシャープ買収

村藤功 企業財務 M&A

16/06/02

今日は、鴻海のシャープ買収の話をしたいと思います。

4月2日にようやく契約が成立しましたが、結局、鴻海が3888億円出資して、66パーセントのシャープの株式を取得するということになりました。6月末の株式総会で承認され、10月に払い込むというスケジュールです。鴻海は3580億円ほどシャープに成長投資する予定です。鴻海はシャープと組んで、巨大マーケットになりつつある有機ELをスマホにどう使うか、このあたりに力を入れて、サムソンやLGといったところに対抗していこうと考えています。

鴻海は、2月末の時点では、4890億円の出資を予定していました。この支援額をうけて、シャープは鴻海からの買収提案を受け入れることを決め、鴻海と競合していた産業革新機構は2月26日に撤退を表明しました。しかし、産業革新機構撤退後、今度はシャープの偶発債務3500億円や、2016年3月決算が約1700億円の営業赤字見込みということなどが判明し、鴻海は出資額を検討し直して、1000億円減らすということになりました。結局、4890億円の出資を3888億円に減らして合意になりました。

シャープは、シャープペンシルや電卓、液晶など世界初となる面白い商品をいろいろと生み出してきた会社です。ここのところ不調で、約1万人が職場を去ったものの、4万人余りの従業員をかかえる、日本を代表する大企業です。シャープの経営が暗転し始めた原因としては、2008年のリーマンショックが大きかったといえます。液晶や太陽電池がかなり打撃をうけたのですが、シャープは他のところに事業を展開しきれませんでした。どこの企業も液晶では打撃をうけたのですが、他の企業はなんとか他の成長セクターに転換できました。一方でシャープはあまりに液晶に突っ込んでいたので、もうだめだという話になったわけです。

シャープの売り上げは2.7~2.8兆円ほどです。鴻海の売り上げが15、16兆円で、シャープの5、6倍あります。鴻海は2000年ごろにはまだ1兆円ほどの売り上げだったのですが、この15年ほどの間に世界中の家電会社や工場を買収し、売上高を約15倍にのばしました。このように鴻海はどんどん規模を大きくしてきた会社です。

どのように鴻海は存在感を増してきたのでしょうか。家電業界は昔とずいぶん様相が変わってきました。日本企業は昔から、バリューチェーンの全体像をやるという伝統があります。アメリカの会社などが企画とマーケティングしかやらない、ということになってきて、「じゃあ作るのはうちがやります」と手を挙げたのが、台湾の電子機器受託製造会社であるEMS(Electronics Manufacturing Service)です。いまや鴻海はEMSの世界最大手です。鴻海は中国にもフォックスコンという名前で多くの巨大工場を持っており、従業員は推計約100万人の巨大企業です。

シャープは2015年3月に単体の債務超過となってしまい、負債を株式に交換する「デット・エクイティ・スワップ」によって、なんとか自己資本がある形にしたという状態です。東証一部上場企業は、連結債務超過になると二部に降格される決まりですが、鴻海が自己資本を突っ込んでくれて、なんとかやっていけるという状況なのです。

日本では、かつては日本を代表する業界として家電業界と自動車業界といっていましたが、日本の家電業界は今ではボロボロになってきています。鴻海とシャープが連合して勝負しようとする相手は誰かと言うと、サムソンやLGといった、有機ELに強い韓国の会社ということになります。かつては欧米だとシーメンスやGEという会社もあり、家電業界も広かったのですが、最近では、先進国は家電から撤退するといった話になってきました。シーメンスは、ボッシュとの合弁会社の持分をボッシュに売って撤退することになりました。また、GEも、家電をスウェーデンのエレクトロラックスに売却しました。GEはかつてGECCという金融サービスも提供していたのですが、これからも撤退し、航空機エンジンや発電機などに集中するつもりのようです。日立も、情報インフラやコンサルティングに重点をおくようです。ソニーとパナソニックも、有機EL事業をジャパンディスプレイに売却することにしました。

ただ、サムソンやLGの強い状況がいつまで続くかというと、わかりません。中国の半導体企業が最近巨大になってきており、マーケットは中国が握っています。もしかすると、サムソンやLGが家電業界を仕切っているという状況も長くは続かないのかもしれません。半導体といえば昔は日本だったわけですが、今は韓国になり、将来は中国となるのも時間の問題のようにみえます。

それでは今日のまとめです。
鴻海が3888億円でシャープの66%の買収を決め、4月初めに契約しました。2月末には4890億円の出資を予定していたのですが、偶発債務3500億円や、2016年3月の決算が1700億円の営業赤字見込みだということが判明した結果、鴻海も検討しなおし、出資額は1000億円減額されました。産業革新機構が撤退したあとだったので、シャープとしては鴻海に合意し、協力をあおぐしかないというのが現状でしょう。こうして買収契約はかたまり、鴻海・シャープが共同で有機ELに力を入れ、アップルやシャオミー(小米)にスマホやタブレットといった製品のパネルを供給して、2~4年でシャープの黒字化を目指そうという状況になりました。

分野: |スピーカー: 村藤功

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