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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (22) デュアル・ラダー制度 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (22) デュアル・ラダー制度

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/06/22

今回のまとめ: デュアル・ラダー制度とは、専門職と管理職の二つの昇進ルートを持つ人事処遇システムです。

 今回は、技術的なイノベーションの過程で重要な役割を果たす研究者や技術者を主な対象とする人事処遇システムのキーワードとして、「デュアル・ラダー制度」を取り上げます。
 デュアルは二重、ラダーは梯子という意味ですから、要するにデュアル・ラダーとは複数の昇進ルートがある制度のことを言います。この制度は、特に研究職や技術職の様な専門的な職務の昇進ルートを、管理職に昇進するルートとは別に設ける際に導入されるため、「専門職制度」とも呼ばれています。
 何故、このような制度が必要とされるのでしょうか。
 研究や技術開発のような職務では、メンバーが広く情報を共有し、ユニークなアイデアを生み出していくことが求められますから、その組織は上下関係が積み重ねられる構造になじまず、フラットである方が望ましいと考えられています。そうすると、研究職や技術職は一般的に高学歴であるのに、組織の中では昇進の機会が限られるという状況が生じます。一方、研究者などが専門職としての経験を積むうちには、やがて管理的な職務への適性が認められる場合もあります。そうした場合に、専門職のラダーと管理職のラダーを選択できるようにし、どちらのラダーを選んでも昇給の面では格差が生じないように考案された制度が、デュアル・ラダー制度なのです。

 ただ、この制度には、いくつかの問題点も指摘されています。
 例えば、この制度では専門職と管理職の役割が明確に区別されているわけですが、むしろ専門職にも一定の管理的な職務を割り当てた方が、業績を高めることにつながるという指摘があります。そもそも優れた専門職の人材が、マネジメントに影響を及ぼす機会を全く奪ってしまっていいのかという疑問も提起されています。一方では、専門職として業績を上げられない研究者が、管理職ラダーに逃げ込むといった消極的な形でデュアル・ラダー制度が使われる可能性も否定できません。更には、専門職といっても、その組織的なステータスが明確ではないといった問題も指摘されてきました。

 デュアル・ラダー制度は、技術系の専門職を対象とする処遇システムとして大分前から導入されてきた制度であるため、その導入効果をめぐる実証研究も進められてきました。
 アレンとカッツが1986年に発表した論文では、2,500人の技術者を対象とした調査データによる分析が行われました。その結果は、現在、専門職ラダーにいる技術者の多くが、他のラダーを志向しているというもので、デュアル・ラダーが技術者にとって十分魅力的な制度として機能していないことを示唆するものでした。

 近年、日本で実施された調査の結果も挙げておきます。文部科学省科学技術・学術政策研究所が平成21年度に実施した「民間企業の研究活動に関する調査」では、研究開発人材を対象とした様々な人事処遇制度の導入状況を把握しているのですが、その結果によると、専門職制度を導入している企業は25.8%でした。
 一方、専門職制度の他にも研究開発人材のキャリア形成に影響を及ぼす制度があり、それらの中には、より高い割合で導入されているものもあります。例えば、「職務ではなく職務遂行能力を基準に資格等級を設定し、労働者を格付けする制度」として「職能資格制度」がありますが、その導入割合は61.3%に達していました。また、「職務分析等により職務ごとの価値を算出し等級を設定する制度」として「職務等級制度」がありますが、その導入割合は45.3%でした。
 こうした「等級」や「格付け」を組み込む制度は、成果主義的な管理手法が流行する過程で急速に普及してきたものです。その普及の要因には、旧来のデュアル・ラダー制度が専門職の業績を高める上で有効に機能していないという点もあるのかも知れません。しかし、こうした成果主義的な処遇システムが、実際に専門職の業績を高める結果を生み出しているのかには、大きな疑問が残されています。この点については、機会をあらためて論じてみたいと思います。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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