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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ビジネス統計の楽しさ (ビジネス統計/寺﨑新一郎)

ビジネス統計の楽しさ

寺﨑新一郎 ビジネス統計

16/05/30

はじめまして。昨年10月より九州大学ビジネス・スクールに着任し、「ビジネス統計」を担当している寺﨑新一郎と申します。

さて、「ビジネス統計」に関して、何を学ぶ科目なのかというと、統計学者が取り組むような、新しい統計手法の開発やその探求ではありません。既存の手法を応用してビジネスに活かすのが、「ビジネス統計」です。

今回は「ビジネス統計の楽しさ」について、具体的な例を挙げながらお話していこうと思います。

たとえば皆さんが、ファミリーレストランに行った際、「お客様の声」といった紙を目にすることがあるのではないでしょうか。その紙をよく見ると、当該レストランのサービスについて評価する、様々な項目が設けられているかと思います。企業はこうした質問票で得られた評価を活用して、今後の戦略に役立てているわけです。

あるいは、ビジネスパーソンに人気の『プレジデント』誌の巻末には、「面白かった記事」、「読まなかった記事」などの質問が設けられたアンケートはがきが添付されています。このように、身近なところに質問票はあふれています。

ただし、こうした質問を通して消費者の本音を引き出せているのかというと、実はけっこう難しいという問題があります。
たとえば、街頭インタビューで「うちの商品について色々聞かせてください」といった場合に、消費者が遠慮して本音を控えるということがあります。「せっかくインタビューに来られているのだから、あまりひどいことを言ったらいけないんじゃないか」というように。

本音を引き出す難しさの例を一つみてみましょう。
「ネスカフェ」というと、ネスレの有名なコーヒーブランドですが、ネスカフェは第二次世界大戦後、インスタントコーヒーとして発売まもなくすごく人気がでました。しかし、徐々に売り上げが伸び悩むようになりました。
その大きな要因として、リピート購入されなくなってきたということがありました。そこでネスレは再購入しなくなった消費者に「なぜ買わなくなったか」を尋ねました。すると多くの消費者が「ドリップ式に比べてインスタントコーヒーは風味が劣るから」と回答したようです。
しかし、ブラインドテストをやってみたところ、ほとんどの消費者はインスタントとドリップの区別がつかない、ということが判明したのです。つまり、消費者が「なぜ買わなくなったか」には、隠された理由があるということになります。
そこでHaire (1950)という研究者が、ネスカフェが購入されなくなった理由を探る面白い実験を行いました。その結果、消費者は「インスタントコーヒーを買う主婦は怠惰な主婦のようで、あまり好ましくない」と考えていることが分かりました。つまり、そう思われるのが嫌だということで、買われなくなってきたのです。売り上げの伸び悩みに、風味はあまり関係がなく、他の原因があったわけですが、最初のアンケートでは本音が引き出せていなかったといえます。
このように、直接質問しても、本当の答えが返ってくるとは限りません。統計がきちんと実態を把握できるかというと、必ずしもそうではないということを示す事例です。
参考までに後日談ですが、「インスタントコーヒーを使うことで時間が節約できる」という考え方も、そこにはあるわけです。ネスカフェはそこを訴求して、また売れるようになってきました。
この例のように、データを収集して分析すると同時に、インタビュー調査などを通して、消費者の本音に迫ることが大切です。数理的なデータだけが信頼に値するというわけではないのです。

さて、そもそもビジネス統計はなぜ必要なのかということを説明しておきたいと思います。
ビジネス統計の最大のメリットは、売上データを分析したり、質問票調査やブラインドテストを行ったりすることで、そこから得られた知見を企業の意思決定に活かすことができることにあります。

たとえば、「顧客満足度は果たして上がったのか」、「このコマーシャルを投入して本当にシェアが伸びたのか」といったことを検証できるわけです。つまり、今まで思い込みや経験則で判断していたことが、本当にそうであるか確認できます。ここがビジネス統計の一番面白いところです。

これまでの経験則を数理的に検証することもできますし、実は他の要因が作用して偶然その結果になっていた、ということが判明するかもしれません。色々な可能性を検討して、より精度の高い意思決定に結びつけることが、ビジネス統計を通して可能となります。

それでは今日のまとめです。
ビジネス統計とは、ビジネスの意志決定のために必要な情報を産み出すプロセスです。顧客から集めたデータを分析することで、製品評価や市場機会などについて客観的な知見を得ることができます。
統計分析によって得られたデータを裏付けとして利用することで、漠然としたものがクリアになるという喜び――ここにビジネス統計の楽しさがあります。

分野: ビジネス統計 |スピーカー: 寺﨑新一郎

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