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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 悲観論のバイアス (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

悲観論のバイアス

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/05/25

『なんだ、そうなのか!経済入門』という本のエッセンスを紹介していますが、今日は「私たちが得ている情報は悲観的なものに偏っている」というお話をします。

前回お話ししたことですが、世の中では満足している人は黙っていて、現状に不満な人だけが、「改善してほしい」といった声を出す傾向にあります。気をつけないと、世の中の人々はみな不満に思っているのだと感じてしまいます。しかし、実際は満足している人もたくさんいる、という可能性があります。

たとえば、円安ドル高になると、輸出企業はアメリカから持って帰ってきたドルが高く売れるので、儲かります。しかし「儲かった」と大きな声をだすことはあまりありません。なぜかというと、「儲かった」と言えば、従業員から「じゃあ賃上げしてくれ」とか、部品メーカーから「部品の値上げをしてくれ」と言われるからです。
一方、輸入企業は「困った」と大きな声を出します。「ドルが高くなってコストがかさんでしょうがない」、「従業員のボーナスが払えない」、あるいは、「部品メーカーに値下げをお願いしないといけない」、さらには、「政府に補助金を出してもらわないと大変」というように、大騒ぎをします。
こうして、聞こえてくる声だけを聞いていると、円安ドル高で日本経済は大変な困難にあうという気がしてきます。しかし、逆に円高ドル安になると、今度は、輸入企業は儲かりますから黙っています。そして、輸出企業は「大変だ」と大きな声を出します。そうすると、円高ドル安の場合でもやはり、日本経済は危機に瀕しているという気がしてきます。しかし、実際はそんなことはありません。日本は輸出と輸入が大体同じ金額なので、輸出企業が困っている分は、輸入企業が儲かっていますし、輸入企業が儲かっているときは、輸出企業が困っています。つまり、円高でも円安でも日本経済にそれほど大きな打撃はないはずです。しかし、円高でも円安でも聞こえてくる声としては「大変だ」というものになるのです。

また、ラジオに出演させていただいている身で、こういうことを言うのは気が引けるのですが、マスコミの取材も困っている企業に偏りがちだということが言えます。

円高のときは、円高で困っている輸出企業に取材に行くけれど、円高で潤っている輸入企業への取材には行かないというマスコミは多いように思います。逆に円安になると、儲かっている輸出企業には取材に行かないで、困っている輸入企業には取材に行くというところが多いのではないでしょうか。

さらに問題だと考えられるのは、マスコミは悪い話を優先的に取り上げる傾向があるということです。もちろん、マスコミ自体に問題があるというより、国民がそういう話を聞きたがるから、必然的にそういう情報を流すという構造なのでしょう。日本人は、「大丈夫ですよ」という話よりも「困った、心配だ」という話のほうを聞きたがる傾向にあるので、そういう情報を流したほうが、聴取率が上がるということはあると思います。

また次に、われわれ、景気の予測をしているエコノミストたちがどういうことを考えているかという話をしましょう。

私たちにも、「景気が悪くなりそうです」というインセンティブがあります。暗い見通しを述べるほうが得なわけです。

これはひとつには、問題点や懸念をいうと賢そうに見えるということがあります。「大丈夫ですよ」というと「何も考えてないのではないか」と思われて、賢そうに見られないというわけです。

それから、悲観的な話をしたほうが、聞いている人に興味をもってもらえるということがあります。景気が悪くなるというと、理由としては色々なことが考えられます。たとえば、アメリカの景気が悪くなる、中国の景気が悪くなる、どこかでバブルが崩壊する、などというように、色々な話ができます。つまり、話に広がりがでてくるわけです。すると、聞いているほうも話がバラエティに富んでいて惹きつけられる、ということがあります。「大丈夫ですよ」ということを百回繰り返していれば、聞いているほうは退屈してしまいます。

こうして考えてみると、エコノミストたちは自分が本当に考えていることよりも「ちょっと暗めな話をするほうが得だな」と考えて、悲観的な話をするという傾向があると言えるかもしれません。さらには、暗い話をする人のほうが、マスコミに取り上げられやすいということがあるので、私たちがマスコミから受け取っている景気の見通しに関する情報は、エコノミストの本音よりも若干暗い話が多いと思っていたほうがいいでしょう。逆に言うと、「マスコミでエコノミストが喋っていることよりも、ちょっと明るめの話が本当のところなのかな」というように、聞きながら修正していく必要があるということです。

では今日のまとめです。
私たちが受け取っている情報は実際よりも暗い話が多いので注意が必要です。景気の見通しを語るエコノミストたちの話も、エコノミストたちの本音を平均したものより、暗い話が耳に入ってくるようになっています。そこで、「聞いた話よりも少しだけ明るい話が真実だ」というふうに、情報を受け取る側が修正する必要があります。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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