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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アベノミクスと庶民の生活 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

アベノミクスと庶民の生活

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/05/17

『なんだ、そうなのか!経済入門』という本のエッセンスを紹介していますが、今日は「アベノミクスで庶民の生活は良くなったのか」という話をします。

アベノミクスで株価が上がったので、株を所有しているお金持ちの生活が豊かになったのは間違いありません。それだけでなく、忘れがちですが、失業率が下がっています。今まで失業していた人々は恩恵を受けています。また、世の中にはワーキングプアと呼ばれる人がたくさんいますが、アルバイトの時給が上がってきているので、彼らの生活が多少なりとも向上してきていると言えます。働く人が足りなくなると、高い時給を払わないとアルバイトが集まらないという状況になり、アルバイトの給料が上がる、というわけです。

このようにして、一番上の恵まれた人たちと、一番下の恵まれない人たちにはアベノミクスの恩恵がありました。しかし、真ん中のいわゆる一般庶民にはあまり恩恵がない、というのが現状です。庶民の生活は、どちらかというと苦しくなっている印象さえあります。
では、ここから、庶民の生活ついて詳しくみていきましょう。

まず、給料が上がっていません。これだけ労働力が不足しているのに、給料が全然上がらないのはなぜでしょうか。
1つ目の理由として、今回の景気回復がたいへん穏やかだということがあります。景気は良くなってはいますが、「すごく良くなっている」という実感はなかなかありません。「良いのか悪いのか分からない」という感じなので、給料もなかなか上がりません。

もう1つの理由として、景気が回復を始めてから給料が上がるまでには長い時間がかかるということがあります。これは、もう少し時間が経てば給料が上がるかもしれないという期待にもつながるわけですが、なぜ長い時間がかかるのかを説明しましょう。

景気が悪いときというのは、世の中に、暇にしている人たちがたくさんいます。失業している人、あるいは正社員でも、あまり仕事が忙しくない人がたくさんいます。景気が少し良くなっても、正社員が忙しく働けばそれで事足ります。もっと景気がよくなってはじめて、企業がパートやアルバイトを雇うようになります。しかし、世の中には失業している人がたくさんいるので、雇おうと思えばいくらでも安い時給で雇えるというわけです。
そこで、ようやく時給が上がるときというのは、パートやアルバイトを雇う会社が増え、労働量力の需給が引き締まり、なかなか人が集まらなくなってからです。高い時給で人を集めるしかない、となってはじめてアルバイトの給料が上がります。しかし、正社員の給料はそうはいきません。高い給料を払わないと社員が辞めるということもないので、給料を上げようという話にはなかなかなりません。さすがにもっと景気が良くなり、失業率も下がり、パートの賃金がどんどん上がってくると、正社員の給料も上げようということになるとは思います。ただし、大きな期待をするのは禁物です。
バブル期までの日本企業は、「会社は家族」という言葉があったように、いわば従業員の共同体でした。したがって、会社が儲かれば、当然、従業員の給料を上げるということになりました。一方、最近の株式会社というのは、儲かったら株主に配当するというところが多く、儲かったから自動的に賃上げというわけにはいかなくなっています。昔のように「景気が良くなったから社員の給料が上がる」という期待はあまりしないほうがよいでしょう。

最後に、ドル高・円安が日本企業や庶民の生活に与えた影響もみておきましょう。
日本は輸出と輸入の金額が大体同じです。ドル高だと輸出企業は儲かりますが、その分、輸入原材料を扱っている会社はコストがかさんで利益が減ります。したがって、本来であればドル高でも日本企業全体としての利益は増えないはずです。ところが、統計をみると利益は増えています。
なぜかというと、輸入企業はドル高によって高い値段で仕入れたものを、その分、高い値段で売るということをけっこうしているからです。輸出企業の儲けは増えて、輸入企業の儲けはあまり減らない、そしてその分のつけが消費者に回ってきている、ということも言えます。
庶民の給料も少しは増えていますが、一方で輸入品が値上がりし、それに食われて生活があまり上向いていないという面もあるということです。今後は少しずつ給料も上がっていくでしょうから、少しは庶民の生活も楽になっていくとは思いますが、あまり大きな期待をしないほうがよいでしょう。

では今日のまとめです。
アベノミクスで人手不足になり失業者が減ったのは素晴らしいことでした。しかし庶民の給料はあまり上がっていません。今後は少しずつ上がると思いますが過大な期待は禁物です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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