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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > プラットフォームブランディング⑥ (マーケティング、創造(アントレプレナーシップ)/川上慎市郎)

プラットフォームブランディング⑥

川上慎市郎 マーケティング、創造(アントレプレナーシップ)

16/05/23

『プラットフォームブランディング』という本で書いた内容をもとに、ブランド戦略についてお話をしています。これまでは、「プラットフォームブランディング」という言葉の意味からはじまり、「ブランドとは何なのか」という話や、「日本でのモノづくりとしてのブランドの成功と失敗」、また、アップルの事例などをお話してきました。今回は「ブランドのプラットフォーム化のメリットとデメリット」についてお話していきます。

まずは改めて、「ブランドがプラットフォーム化している」ということの意味を確認しておきましょう。
一番初めにもお話しましたが、「プラットフォーム」とは、「色々なものを載せる共通の基盤・土台」のことです。ソーシャルメディアの普及がめざましい昨今では、ブランドについても、色々な人が色々な体験を発信し、共有しているという状況が起こっています。企業側が好むと好まざるとにかかわらず、ブランドは色々な人たちの乗るプラットフォームになっている、というわけです。そのことを認識したうえでプラットフォーム化したブランドの強みを上手く発揮させていくことが、今後、日本企業には求められています。

さて、「強みを発揮させていく」ためにも、ブランドがプラットフォーム化することのメリットとデメリットを知っておかなければなりません。メリットから順に、以下でみていきましょう。

ひとつには、コストが安くなるというメリットがあります。
ゼロから全てを作って、価値をお客さんに提供しようと思うよりも、誰かがすでにつくっているものの上で価値を提供する、あるいは、自分たちが土台になるところだけを作ってその上の部分を他の人に作ってもらう、というやり方のほうが、それぞれの価値を提供する人たちにとってみると当然コストは安くなります。

さらに、様々なお客さんの様々なニーズに応えやすくなるというメリットがあります。
お客さん一人一人の細かいニーズ全てに、一つのブランドで応えようとするのは無理な話です。しかし、プラットフォームとして、あるサービスを提供すれば、お客さんの多様なニーズに応えていけるような仕組みをつくっていくことが可能です。たとえば、誰がどういうふうにいじってもいいようなサービスを一つ用意して、それぞれのユーザーが欲しいと思うものを自分で作ってもらうという手があります。あるいは、あるサービスを欲しいと思っている人にむかって、他の人がつくってあげられるような場所を提供する、といった手もあります。

これらのメリットを活かした具体例をみてみましょう。
トヨタが最近開発した「86」というスポーツカーがあります。『頭文字D』で使われているラリーのような車のことです。「86」のすごいところは、エアコンすらついていないことです。また、車の中にUSBポートが出ていて、車の中に流れている信号を読み出すことができるようになっています。要するに、車自体がプラットフォームになっているのです。トヨタは、「この車を買ってお客さんの好きなようにカスタマイズしてください。車両の中で動いている色々なデータも勝手に読みだしてチューンナップに使ってください」という投げ方をしたわけです。
トヨタは改造車メーカーに設計開発中の「86」の図面を全て渡していて、この「86」の発売と同時に、色々なメーカーから、「86」用の改造パーツが発売されるようにしました。彼ら自身がカスタマイズ車を作ることをやめて、カスタマイズできる元の車だけを提供したということです。お客さんが好きに改造できる「プラットフォーム」を提供するということで、「製品ブランドのプラットフォーム化」という以前に、「製品そのもののプラットフォーム化」とも言える事例です。自分の好きなようにできて楽しいということで、たくさんのお客さんが惹きつけられています。

一方で、プラットフォーム化することのデメリットもあります。
たとえば、今まで他の自動車メーカーがなぜトヨタのしたようなことをやってこなかったのかというと、改造されることでメーカーの保証が効かなくなるということがあります。品質問題も当然生まれてきます。メーカーとしてはそれらを保証しないということなのですが、もし事故が起これば、やはり車両を作った大元が問題になります。
こうしたことが企業にとって、プラットフォーム化する際の懸念になります。
別の人たちが入ってきて、価値をどんどん付け足して提供するという場合、「その中に問題があるものが入ってきたらどうしよう」、「その中でネガティブな話が生まれてきたらどうしよう。誰が責任をとればいいのだろうか」ということを、企業は常に気にしてきたわけです。

リスクという意味でいうと、ソーシャルメディアのことがあります。ツイッターやフェイスブックがブランドを作っている側面があるということですが、当然、そこでは良いイメージばかりが発信されるわけではありません。悪口もいっぱい出てきます。そういうリスクをどう抑えるかが、プラットフォーム化を進めていく際の重要な論点になるでしょう。

また、もう一つリスクがあります。たとえば、「たまたま入ってきた誰かが変なことをしたので事故が起こった/ネガティブな評価がついた」ということであれば、「事故だからしょうがない」ということになりますが、意図的に価値を下げられたり、競合相手に価値を横取りされたり、ということも当然起こりえます。競合相手が意図的にそこに悪いものを忍ばせる、または、競合企業がプラットフォームに入ってきて、気がつかないうちにお客さんを全て横取りしていった、といったことも発生しかねないわけです。

今日の話をまとめます。
プラットフォーム化はコストが下がったり、多様な価値を提供できたりというメリットも大きいですが、一方で、その中で期待されないふるまいをする人たちや、評価を下げるようなことをしようとする人たちをどうやって排除するかが大きな問題になってきます。

分野: ネットビジネス戦略 |スピーカー: 川上慎市郎

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