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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > プラットフォームブランディング③ (マーケティング、創造(アントレプレナーシップ)/川上慎市郎)

プラットフォームブランディング③

川上慎市郎 マーケティング、創造(アントレプレナーシップ)

16/05/06

前回は、「ブランドとは何か」という話をしました。それをふまえて、今回は、具体的な事例を挙げながら「ブランドの成功と失敗」という話をしたいと思います。

『プラットフォームブランディング』のなかで最初に扱っている企業がシャープです。シャープは90年代から2000年代の前半にかけて、日本のメーカーのなかでも最もブランド戦略で成功していた会社と言われています。しかし最近では、台湾の「鴻海」に買収されたことで広く知られています。たった10年でなぜここまで追い込まれることになったのか、ということを今回はお話しようと思います。

まず、そもそも、シャープの成功のポイントとは何だったのでしょうか。90年代の終わりにシャープは「液晶」というものを自分たちの価値の中心に置きました。ブラウン管のテレビがほとんどだった時代からすると、シャープの「これから全てのテレビは液晶になります」という発言は驚くべきものだったのですが、実際シャープはどんどん液晶テレビを普及させていきました。シャープのブランド戦略が他の会社のものと大きく違っていたのは、液晶テレビを性能や機能によって訴求しなかったところです。通常、液晶ディスプレーのような製品の品質は、回路の処理スピードの速さやデータの細かさによって決まってきます。しかし、シャープは自社製品の魅力を生産地におきました。つまり、「日本の亀山工場で作った液晶」だということをウリにしました。
これが業界の度肝を抜きました。同業他社の人は、どこで作ったものであろうと回路の性能に差がなければ液晶テレビの性能も変わらないことは知っています。しかし、一般の人たちは「日本の亀山でつくったからこんなにキレイなんだ」と信じたわけです。それが、シャープが他社とは違ったブランドをつくることのできた大きな勝因でした。

ところが、2005年くらいになると、どこの企業が作った液晶でも性能的にはほぼ変わらないという状況になっていました。これを「コモディティ化」といいます。確かにそれまでは、シャープの液晶の製造技術は非常に高かったのですが、2005年以降は韓国や台湾でつくった液晶も性能としてはほとんど変わらない状況――液晶そのものの「コモディティ化」が起こっていたのです。

もし商品の中身がコモディティ化していたときに、企業の戦略として正しいのは、一番安いところから商品を買い、それに自分たちのブランドを貼り付けて売るというものです。シャープももっと早い段階で韓国や台湾で作られた液晶をそのまま仕入れて、そこに「AQUOS」というブランドを貼り付けて売っていれば、おそらくは儲かっていたと思います。しかし、彼らとしては「亀山モデル」と言った以上、亀山で作った液晶でないものを使ってテレビを売ってはいけないと考えてしまったわけです。
つまり、自分たちのつくりあげたブランドにしばられてしまったのです。さらにはあろうことか、日本国内の新しい工場建設へ投資してしまいました。世の中全体が新興国の安い工場で作った部品へと手を伸ばしている一方で、シャープだけは新興国の製品を使うことができなくなってしまいました。皮肉にも、自分たちのブランドがあまりにも成功しすぎたゆえにです。それで経営が迷走した結果、ついには台湾の会社に買われてしまいました。

この事例から学ぶべきこととは何でしょうか。企業はブランドのみでお客さんにアピールすることはもちろんできないのですが、競争に勝つためには、自社のもともとの戦略とブランドとを上手く組み合わせて、時代の流れに合わせていくことが必要だということです。ブランドというものをどういう位置づけで使うのかという点に関して、日本企業はまだまだ上手くやれていないように思います。

日本企業は「モノづくり」を自分たちのブランドとして自負しているがゆえに、「より安く作れる人たちにモノづくりはさっさと任せて、自分たちは自社ブランドを伸ばし、さらに育てていくための投資に徹する」ということができない傾向が強いように思います。シャープの「ブランドの成功と失敗」の事例はそうした問題を大きく示してくれている一例です。

今日の話をまとめます。
ブランドというのは戦略を支える重要な存在なのですが、過去の成功体験に縛られすぎてもいけません。日本企業はその点をもっと考えていくべきだと思います。

分野: ネットビジネス戦略 |スピーカー: 川上慎市郎

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