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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 固定相場制 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

固定相場制

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/04/05

「なんだそうなのか経済入門」という本のエッセンスをご紹介していますが、今日は、「ドルの値段を政府が法律で決めてくれたらいいのに」というお話です。

法律で決めてしまってもいいのかなと思います。

戦後は1ドル360円と法律で決まっていました。こうやって法律でドルの値段を決めることを、「固定相場制」というわけですけれども、当時は便利だったことでしょう。なんたってリスクが無いわけですから、自動車会社がアメリカから送ってきたドルを今売った方がいいのか来月まで待ってから売った方がいいのかと考える必要がありませんでした。そもそも今日は1ドルいくらだろうと新聞やラジオで確かめる必要もありません。便利で楽で良いですよね。しかし今は変動相場制ですから、例えば、リーマンショック前は1ドル120円くらいでしたが、リーマンショック後は1ドルが80円くらいになり、アベノミクスで再び120円くらいになりました。こんなにドルの値段がころころ大幅に変わってしまうと企業は困るわけです。

では、戦後のようにまた固定相場に戻しましょうと言いたいところなのですが、そう出来ない理由が2つあります。

1つは、固定相場制にしてしまうと、日本の輸出がどんどん増えてしまうということがあります。アメリカの方が日本よりも物価上昇率が高いですよね。日本はデフレだとかなんとか言われていますが、物価がほとんど上がりません。一方アメリカは物価が少しずつ上がっていますので、1ドルが例えば120円という法律を作ると、日本の物価はそのままですがアメリカの物価はだんだん上がっていくため、アメリカのものの方が日本のものより高くなっていってしまうわけです。

例えば、日本では1本120円のペンがアメリカでは1本1ドルで売られており、法律で1ドルが120円と定められていたとします。日本の物価はそのままですからペンの値段はいつまでたっても1ドルです。一方、アメリカでは先ほどご説明したように物価がわずかずつでも上昇していくため、ペンの値段は10年経つと1ドル50セントになるとします。そうすると、アメリカで1ドル50セントだしてペンを買うよりも、アメリカ人が1ドルを持って銀行へ行って120円に取り替えて日本でペンを買った方が安くなることになります。そうすると10年経つと、アメリカ人はアメリカのペンを買わずに、みんなドルを円に替えて日本でペンを買うようになりますよね。そうなると、アメリカのペンの会社は潰れてしまうので、アメリカの大統領が怒るわけですね。

このように、固定相場制にしてしまうと、物価上昇率の違いからアメリカに不利益が生じてしまい、先ほどの例のようにアメリカのペンの会社が潰れてしまったではないか、と怒られてしまうわけです。
そのため、物価上昇率が日本とアメリカで違う時に、1ドルの値段を法律で決めてしまうと問題が生じるためその法律はいずれ廃止しないといけなくなるということです。

もう1つの理由は、貿易の話ではなくて投資の方の話をします。私が給料をもらった時に、日本の銀行に貯金するかアメリカの銀行に貯金するか考えた時、おそらく通常は日本の銀行に貯金しますよね。それはなぜかというと、アメリカの銀行に貯金をするためには、ドルを買わなければなりません。ドルを持っているとドルの値段が変わってしまうので、円高ドル安になって損をしてしまうかもしれないわけです。

ドルの値段って上がるか下がるかわかりませんから、円をドルに替えてアメリカの銀行に貯金をすると、儲かるかもしれないけれども、損するかもしれません。そういう賭けをしていることになってしまいます。損をするのは嫌だから日本の銀行に黙って預けておけば安心ということで、為替リスクを避けるために、日本の銀行に貯金をするという人が多いのです。実はアメリカの銀行の方が日本の銀行よりも金利が少しだけ高いのですが、それでも為替リスクが嫌だからアメリカの銀行に貯金をしないというのが大体の日本人が今やっていることなのです。ところが、政府が1ドルは120円だよと法律で決めると、今度は日本人のお金持ちが何を考えるかというと、ドルの価格が変動する心配がないため、円をドルに替えて金利の高いアメリカの銀行に貯金しようということになります。そうすると日本人のお金持ちはみんな日本の銀行から貯金を全部おろして、全部ドルに替えてアメリカの銀行に貯金をするようになり、日本の銀行は大変なことになってしまいます。日本の銀行はそんなにドルを持っていませんから、そのお金持ちがドルを欲しいと言った時に誰が売ってくれるのだろうかという話になるわけです。1ドル120円と固定相場制にした責任は日本政府にあるため、誰も売ってくれる人がいない時は日本政府が売ってあげるよという法律にしておかないといけません。ところが日本中のお金持ちが全員「ドル下さい」と銀行に殺到すると、日本政府がいくら沢山ドルを持っていたとしても足りませんよね。ということで、やはり固定相場制には無理が生じるということです。

では、戦後日本で固定相場がしばらく続いたというのは、これはどうしてだったのでしょうか。
これには理由が2つありました。1つ目は、戦後アメリカが圧倒的に強く、日本は本当に小さな国だったため、大人と子供ですから日本が多少輸出を増やしてもアメリカはそんなに怒らなかったということ。もう1つは、当時は日本人がアメリカの銀行に貯金したり、アメリカの国債を買ったりすることが認められていませんでした。資本規制というのがあり、外国の銀行に貯金をしたり、外国の国債を買ったりする時は政府の許可が要りますということになっていたので、当時は日本人のお金持ちがアメリカの銀行に貯金したくても出来なかったわけです。だから固定相場制でも日本政府が持っているドルが足りなくならなかったということになります。

では、今日のまとめです。

固定相場制は便利ですが、今の日本では採用できません。日米の物価上昇率の違いから、日本の輸出が増えていくということもありますが、それ以前に投資家のドル買いが殺到して外貨準備が無くなってしまうからです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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