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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 破壊的イノベーションに関する論争(2)―ジレンマとは何か (イノベーション・マネジメント、国際経営/朱穎)

破壊的イノベーションに関する論争(2)―ジレンマとは何か

朱穎 イノベーション・マネジメント、国際経営

16/04/21

1) 破壊的イノベーションという理論は誕生してから既に20年近く立っているが、この議論の精緻化をはかるための研究は近年多くなされてきた。

2) たとえば、これまで一つの誤解として「既存企業は破壊するか、あるいは破壊される」という言葉のように、イノベーションのジレンマというのは既存企業が既存技術もしくは既存顧客に固持する結果、新興技術を無視(あるいは軽視)し、最終的に新規企業に代替される運命に辿るとされてきた。2015年にAcademy of Management Journal で発表されたKapoor教授らの論文では新しい観点を提供している。彼らは、医薬品産業を対象に行った実証研究の結果、既存企業は「破壊的イノベーション」に投資しないという従来の考え方はまさに誤解であると指摘している。たとえば、90年代に誕生した二つのメジャー抗体医薬品について既存企業はいずれも投資していた。しかし、より重要なのは初期の研究開発投資ではなく、むしろ後段階の商業化においては既存組織のストラクチャー、あるいはそれに埋め込まれているインセンティブ構造は「破壊的技術」を商業化するための障害要因になっている。この議論は90年代の議論よりさらに進んでいると思われる。すなわち、既存企業の失敗は「破壊的イノベーション」を無視するといいうジレンマではなく、研究開発(R&D)のR部分について投資していたが、商業化の段階において組織構造さらに資源配分のあり方には既存企業のジレンマがあったという新しい観点である。

3) さらに、もう一つの研究を紹介する。Management Scienceで発表されたDavid Hsu教授らの研究では、「破壊的イノベーションの誕生は必ずしも既存企業の没落には繋がるとは限らない」との議論を展開している。彼らは新規企業の立場、いわゆる「破壊的イノベーション」をもつ破壊者が取る戦略に焦点を当てている。

4) これまでの通説では、新興企業はハイエンドマーケットから参入し、最終的に既存企業を代替するというものであったが、この研究によれば、新規企業は、技術導入の初期段階において、既存企業との競争を選択するが、新規技術がある段階まで発展すると、新規企業は既存企業との協力、いわゆる協力的商業化戦略(Cooperative commercialization strategy)を選択する。この研究の新しさとは、新規企業のダイナミックな戦略から、かならずしも既存企業は「破壊的イノベーション」の誕生により、破壊されるという結論にはならないというものである。彼らは、音声認識技術の新規参入した579のベンチャー企業を調査した結果、60%の企業は既存企業との競争を選択し、38%の企業はむしろ業界リーダーとの協力を選択した。残り2%は混合戦略を取った。なぜ新技術をもつベンチャー企業は段階式戦略を取るかというと、この論文の解釈では、ベンチャー企業は初期段階において新技術の性能が証明されていないこともあり、信用性など多くの不利な状況に直面し、既存企業と競争することにより自らの存在を証明することはできる。しかし、新技術の優れた性能が証明されることに従い、既存企業もこうした新技術に投資することを受け入れるようになり、こうした中、ベンチャー企業は既存企業と対抗するではなく、協業関係を選ぶことは可能である。

5) 以上の二つの研究で紹介されているように、「破壊的イノベーション」という議論は20年近く支配的に多くの分野に浸透しているが、近年それを補完する研究は多いになされてきた。既存知識の陳腐化が加速しているなか、こうした海外の最新の研究成果を常に原文で読むことはきわめて重要であり、さらにこうした最新の研究を理解することは新しい時代に適応するための能力を作り出すには不可欠である。

分野: 経営学 |スピーカー: 朱穎

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