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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 「破壊的イノベーション」を巡る大論争(1):その真相 (イノベーション・マネジメント、国際経営/朱穎)

「破壊的イノベーション」を巡る大論争(1):その真相

朱穎 イノベーション・マネジメント、国際経営

16/04/20

1) 「イノベーションのジレンマ」という本は1997年に出版されてから、20年近くの歳月がたっているが、これほど産業界及び社会に浸透しているコンセプトはないといっても過言ではない。97年に出版されたこの本の中で、「破壊的イノベーション」の生みの親とも言われているハーバードビジネススクールの(Clayton M. Christensen)教授は後発技術もしくは企業はいかに既存技術(もしく企業)を代替していくのかについて、破壊的イノベーションという分析枠組みを提示した。日本のビジネススクールやMOTスクールでよく教えられているこのコンセプトだが、しかし、一昨年にこの議論の妥当性をめぐって、大きな論争があったことについてあまり知られていない。

2) その発端になったのは、2014年6月23日に、The New Yorkerというアメリカで知識人向けの雑誌において、ハーバード大学歴史研究者のJill Lepore教授は「破壊的イノベーション」の理論について全面的に否定する論説を発表した。

3) これを受けて、破壊的イノベーションの理論で有名なHBSのChristensen教授は Bloomberg Businessweek のインタビューにおいて、Lepore教授の批判は根拠がないとの反論を唱え、さらに波紋を呼んだ。その後、The Economist誌やスロン・マネジメントレビューといった有力誌において賛否両論の論説もしくは論文が掲載され、「イノベーションのジレンマ」に対する大論争の一年だった。

4) いろいろ総合的に見ると、こうした論争の背景になったのは、「破壊的イノベーション」という言葉は誕生してから、産業界及び社会に広く浸透しているが、この言葉の定義についてあまり厳密に理解せずに、濫用されていることであった。この点について、少なくともChristensen教授もこの議論を批判するLepore教授も同じ見解を示している。ちなみに、Christensen氏は1997年の最初の出版以来、この理論の規範化のために多くの論文および著書を書いたことも忘れていけない。

5) そもそも、破壊的イノベーションは後発技術が先発技術を超越する一つのプロセスを説明している。厳密な定義によれば、「破壊的イノベーション」には五つの条件が必要であった。すなわち、新規技術は新しいマーケットを創造していること;新規技術はコスト・パフォーマンスにおいて優れていること;ローエンドからのスタートですが、ハイエンドマーケットへと技術進歩のポテンシャールを持っていること;既存技術はオーバーシュットしていること;消費者のスイッチングコストが低いこと。この5つの条件は破壊的イノベーションをもたらすというのは従来の厳密な定義である。ご想像するように、こうした厳密な定義に対する理解が殆どなく、様々なビジネスの教科書や、もしくはビジネスマン向けの講座において「破壊的イノベーション」という言葉が氾濫していることは多くの問題を生み出している。この点について、Lepore教授の批判は意味があると思われている。

6) さらに、あえて紹介すると、Lapore教授の批判とは別に、この枠組みの中に収まらない「破壊的イノベーション」もある。たとえば、Appleはローエンドではなく、ハイエンド技術の代表例である。

7) ただし、ここで強調したいのはこうした学問の大きな論争があることは非常に健全であり、20年前に誕生した分析枠組みをさらに発展・精緻化させていくことにおいて非常に重要であるではないかと思われる。

分野: 経営学 |スピーカー: 朱穎

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