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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > コミュニケーション・コストを生み出す3つの格差 (戦略思考/荒木博行)

コミュニケーション・コストを生み出す3つの格差

荒木博行 戦略思考

16/04/15

「コミュニケーション・コスト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?コミュニケーションをするだけならタダ、と思っている人も多いかもしれませんが、組織の中でコミュニケーションを行う場合、そこには必ず見えないコストが発生しています。そのコストが大きいか小さいか、このあたりが企業間の競争に置いて、大事なポイントになってきます。

たとえば、リーダーとしてなんらかの戦略の方向性を提示したとしましょう。「今までは右側に向かっていたが、今後は左側に向かうぞ」というような大きな方針転換をイメージしてみてください。それに対して、組織のメンバーがどういう反応をするでしょうか。「あ、左側なんですね。分かりました」と言って、みんなその意図を理解して動ける組織がもしあったとするならば、それは極めてコミュニケーション・コストは低い組織だということができるでしょう。しかし、一般的にはその逆です。まず末端までその方針が届かない。届いたとしても行動が変わらない。「なんかまたトップがいろんなこと言っているみたいね」くらいの反応です。でもそれでは戦略は機能しませんから、リーダーはいろんなことをしなくてはならないはずです。たとえば社員を一堂に集めてスピーチをする、組織単位でミドルリーダーに話をさせる、研修をさせる、はたまた現場確認のためのチェックリストを設ける・・・などなど。ここまでしてようやくリーダーの言っていることが現場に落としこまれる、ということになるわけです。そして、この過程で発生していることは、言うまでもなく全てコストです。当然時間はかかってるし、リソースも投入されています。実際のお金も発生しているわけです。前者の事例のように社員がスムーズにリーダーの意図を理解して動いてくれる会社については、コミュニケーション・コストはかなり安いと言えるでしょう。一方で、後者の「なかなか伝わらない会社」の場合は、コストが実際にはその数倍かかっている可能性があります。

では、このコストを分けるポイントはどこにあるのでしょうか。それを知るためには、組織のトップとボトムの間に存在する3つの格差に注目すべきだと考えています。

1つ目の格差は、「情報量」の格差です。つまり、トップの人と末端の人との間に情報量の格差がありすぎるとコミュニケーション・コストの発生原因になる、ということです。当たり前ですが、普段トップの人が触れている情報と現場の人が触れている情報というのは差があります。職責が違うのですから、見ている世界が異なりますし、その結果として情報に格差が出てくるのは当然でしょう。大事なことは、その格差をお互いにどうやって埋めようとしているか、ということです。たとえば社長ブログとか、経営者が色んなあの手この手で情報発信をしている会社がありますが、それは全て情報量の格差をどれくらい無くすかということを腐心していることでもあるのです。トップを含めたカジュアルな懇談会や社内SNSなどの施策も情報格差をなくすことになるでしょう。結果的に、これらの施策はすべて、いざという時のコミュニケーション・コストの削減になるわけです。

2つ目は「解釈力」の格差です。仮にトップとボトムがまったく情報量の格差がないとしても、同じ情報から同じ理解ができるわけではありません。たとえば、極端な例を言うと、「全社の会計情報を包み隠さず全社員に公開しているので、会社の状態はちゃんと理解できているだろう」と考えているトップがいるとしたら、それはやっぱり無茶な話です。数字を見せられてもまったくピンとこない、つまり解釈がついていかない人はいるのです。ある人にとってはとても有益な情報でも、ある人にとっては何の意味も持たないケースはいくらでも存在します。したがって、解釈力を揃えることも、情報量と同時に大切なことです。解釈力を揃えるためには、会社としてトレーニングにどれだけ投資をしているかにかかってきます。こういったトレーニングに対する投資を「コストがかかるから」といって二の足を踏んでいる組織は、いざという時にコミュニケーション・コストとして跳ね返ってくるでしょう。

3つ目は「価値観」の格差です。どういう顧客にどういう価値を提供したいのか。そのためにどういう働き方をしたいのか・・・。こういった組織の根っこにある正解のない問いに対して、どれだけぶれずに握れているのか、ということが最後のポイントです。もちろん、「価値観は多様であった方がいい」ということも事実です。「ダイバーシティ」というキーワードに代表されるように、いろいろな価値観を持った社員がいるべきでしょう。しかしここで強調したいのは、「突き詰めればどうなりたいのか?」という根本の部分の話です。枝葉末節は違った方がいい。しかし、幹の部分に違いが大きければ、いざ「どちらに進むべきか」という時にものすごいコストがかかることになることは想像がつくでしょう。この格差を揃えるには究極的には採用の話になってきます。後から変えることは難しいので、「そもそも誰をバスに乗せるのか」ということが大きな問いになるのです。
この話をすると、よく「うちは価値観が揃っていないからダメだ」という反応をする人がいるのですが、大事なことは、「いきなり価値観の格差に逃げない」ということです。3つの格差のうち、まず情報量の格差や解釈力の格差を埋めていくことは、確実に出来ることです。地道ではありますが、情報共有やトレーニングを組織レベルで恒常的にやろうとしているのか、ということの方がよっぽど大切です。

コミュニケーション・コストというのは、見えないところで発生しているからこそ、注意を払わなくてはなりません。もし「なんだか伝わっていないな」と感じる機会が増えてきたら、これらの3つの格差に目を向けてみてはどうでしょうか。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

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