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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(17) ダイナミック・ケイパビリティ (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(17) ダイナミック・ケイパビリティ

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/04/13

今回のまとめ: ダイナミック・ケイパビリティとは、経営環境の変化に対応して、組織の内外にある資源を統合・調整、再構成する能力を言います。


 今回は、「ダイナミック・ケイパビリティ」というキーワードを取り上げてみます。日本語では、動的対応能力と訳されることがありますが、経営学のテキストなどでは、原語のまま使用されることが多くなっています。

 これは組織能力の一種であり、提唱者であるデビッド・ティースらによって、「経営環境の変化に対応して、組織の内外にある資源を統合・調整、再構成する能力」と定義されています。何故、このような組織能力が重要であるのかを理解する上では、競争戦略に関する議論を振り返ってみることが有用です。

 ある事業分野での目標を達成するために、競合他社に対する優位性を構築するための基本的な構想のことを「競争戦略」といいますが、これには、マイケル・ポーターによって確立された「ポジショニング・アプローチ」と呼ばれる理論と、ジェイ・バーニーらによって確立された「資源ベース・アプローチ」と呼ばれる理論があるという話をしたことがあります。
 外部の経営環境を分析した上で、優位な価値創造ができる市場に位置取りしていくという考え方がポジショニング・アプローチであるのに対して、企業内部の要因を重視し、他社にとって模倣困難な経営資源こそが持続的な競争優位の源泉となることを主張する立場が資源ベース・アプローチです。資源ベース・アプローチの考え方は、「リソース・ベースト・ビュー」とも呼ばれます。
 資源ベース・アプローチの論者たちは、単なる競争優位ではなく、持続的な競争優位を問題にします。模倣困難な経営資源に依拠した戦略は、模倣され難い。したがって、その戦略による競争優位は持続性を持つというわけです。
 ここで彼らが言う模倣困難な経営資源とは、具体的には蓄積された技術や顧客の信頼などを意味しているのですが、これらを組み合わせて顧客に価値を提供する能力の独自性も注目されています。ハメルとプラハラードは、こうした能力を「コア・コンピタンス」、中核的な能力と呼びました。
 しかし、企業が一旦ある能力によって競争優位の構築に成功すると、その能力に固執する傾向が生じ、環境変化に対応できないという硬直性がもたらされるため、長期的には競争優位を損なうことがあるという指摘もなされてきました。レオナルド・バートンは、そのような硬直性を、「コア・リジディティ」と呼びました。
 ダイナミック・ケイパビリティという概念は、そのような硬直性を克服できる能力として提唱されたわけです。

 近年、電気製品などの分野では、かつて独自の技術力で世界市場に存在感を示してきた日本企業の業績が低迷し、外国企業の傘下に入るといったケースが相次いでいます。その一因は、かつて競争優位の源泉となった能力への固執にあると論じられています。こうした状況は、ダイナミック・ケイパビリティの重要性を示唆しています。
 しかし、ではどうしたらダイナミック・ケイパビリティを獲得できるのかという点について、これまでの議論はあまり具体的な示唆を与えていません。ダイナミック・ケイパビリティに関する議論は、ある事柄ができたのは、それを行う能力があったからだという単純な論法に還元されて、しばしばトートロジー(同義反復)だという批判を受けてきましたが、私は、この批判は論理的に正しくないと思っています。ただ、これまでのところ実践的な示唆に乏しいということは否定できません。このため、ダイナミック・ケイパビリティは、現在も活発に研究が行われているテーマのひとつであり続けているのです。


分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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