QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 赤字受注 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

赤字受注

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/03/22

このシリーズでは「なんだそうなのか経済入門」という本のエッセンスをご紹介していますが、今日は「赤字と分かっている仕事を引き受ける会社があるのは何故か」というお話です。

給料が20万円の社員がいたとして、その人が1か月に製品を10個作るとします。材料費が1個あたり1万円だとすると、10個では10万円の材料費がかかります。そのためコストは全部で30万円かかることになるため、1個あたりで換算すると3万円のコストがかかることになります。不景気で製品が売れずに困っている時に、1個2万円でいいなら買うという注文が来たとするならば、その注文は受けるべきでしょうか、断るべきでしょうか。

1個あたり3万円で売らないと赤字になるということですから、2万円で売ったら赤字になってしまいますよね。しかし、その注文は受けるべきなのです。それはどうしてでしょうか。

その注文を受けると30万円をかけて作ったものを20万円で売ることになるため、10万円赤字になります。しかし、その注文を断ったとしても社員の給料である20万円はどちらにしても払わないといけないので、注文を断ると社員の給料の20万円がそっくりそのまま赤字になってしまいます。
つまり、注文を受けても受けなくても赤字になることは変わらないのです。むしろ注文を受けない方が赤字の額が大きくなるのです。

この仕組みについて考える為には、「固定費」という言葉と「変動費」という言葉を説明しておく必要があります。固定費というのは正社員の給料などのことを指し、物を作っても作らなくても、物が売れても売れなくても必要なお金のことです。材料費は物を作るから材料費がかかるし、物が売れるから材料費がかかるということで、売れ行きや作った個数によって費用が変わってくる部分を「変動費」と呼んでいます。物を一切作らなくても正社員の給料は払わないといけないので、固定費の分だけ赤字になります。

そのため、1個でも物を作り、それが材料費よりも少しでも高い値段で売れるのならば、作って売った方が赤字は減っていくというわけです。したがって、赤字だから注文を受けないということではなくて、不景気で仕事が無くてどうせ正社員がぶらぶら暇にしているのであれば材料費より1円でも高い値段の注文は受けるべきなのです。しかし、固定費が正社員の給料という人件費である場合には、社員に別の仕事をしてもらうという手があるため、必ずしも今言ったことが当てはまらない場合もあるのでご注意下さい。

「装置産業」という言葉を聞いたことはありますか?全自動で自動車を作るような機械、工場がありますよね。そういう工場を建てる為には、莫大な費用がかかっています。仮にそういう工場が操業をやめて物を作らなかったとしても、その工場を作る時にかかった費用というのは変わらないため、赤字になります。少し難しい話になりますが、工場を作った時の費用そのものが赤字になるというよりは、その原価償却分、つまりその工場の設備の減価償却というのが今年の赤字の原因になるということになります。あるいは、工場を建てる為に銀行からお金を借りて金利を払うわけですから、その金利の分が今年の赤字になり、工場を建てるお金そっくりそのままではないけれども、工場を建てたお金の何分の一かが今年の赤字になるというわけです。このように考えると、全自動の機械で自動車を作るような工場があった場合、材料費より1円でも高く売れるのであれば売った方がお得ということになります。
 
問題はライバルの会社も同じことを考えているということです。ライバルの会社も全自動の大きな機械を買っていて、材料費より1円でも高ければ作って売った方が得だと思っているので、値下げ競争でどんどん価格が下がっていくわけですね。実際に材料費より1円しか高くない所まで下がってしまう場合もあります。ライバルに商売を取られるよりはどんどん値下げしてでも、売った方が得ですから、お互いが同じことを考えてどんどん値引き合戦をすると本当にいくところまでいくということがあります。

こういう時の対策というのは本当に難しいです。相談して値下げ競争を止めればいいわけですが、自動車会社がみんなで集まって安売競争をするのをやめようと相談をすると、これは「カルテル」というのに引っかかって法律違反になるため出来ません。本当に不況の場合は不況カルテルという制度があり、お上が認めてくれるとカルテルをしてもいい場合もありますが、これは特例なので通常はそういうことはありません。そうすると値引き合戦がどこまでもいって、どっちかが潰れるまでお互い譲らないということにもなりかねません。実際にはそこまでいかない場合の方が多いですけれども、理屈上はどこまでも、しかも国境を跨いだりするとこれまた事が大きくなって国際的にそういう値引き合戦が行われるようになってくると大変です。

例えば、今話題になっているのは中国の鉄です。中国が製鉄場をたくさん作ったためどこの製鉄所も作りすぎて赤字になっていますが、製鉄所も装置産業ですから材料費はあまり高くなくて、設備を作るためにものすごくお金がかかっています。そのため、中国の製鉄所は材料費より1円でも高ければ鉄を作って売りたいと思い、みんなどんどん鉄を作るため、世界中の鉄の値段がどんどん下がっているわけです。それで何も関係ないはずだった日本の製鉄会社もそのおかげで中国の安い鉄と競争をしなければならなくなり今苦しい状況に陥っているという話を聞きます。

では、今日のまとめです。

企業にとっては赤字でも販売する事が合理的な場合が少なくありません。変動費よりも高い値段で売れるのならば、生産しない場合と比べて赤字が少なくなるからです。装置産業の場合にはどちらかが倒産するまで値下げ合戦が続く場合もあります。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ