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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 大数の法則 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

大数の法則

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/03/15

「なんだ、そうなのか、経済入門」という本のエッセンスをご紹介していますが、今日はみんながばらばらだからこそ成り立っている商売があるというお話をしたいと思います。

では、「保険」を例にお話を進めていきましょう。
火災保険というものがありますが、全部の家が一斉に火事になってしまったらどうでしょう。とても困ったことになるわけです。火事になった家には保険金を払わないといけませんから、全部の家が一斉に火事になってしまったら、保険会社は潰れてしまいますよね。でも、一斉に火事になることは実際にはありえません。だからこそ保険という商売が成り立つというわけです。生命保険も同じです。これも多くの人達が同時に亡くなるという事は考えにくいですよね。万が一そういう事があったら保険会社は潰れてしまうため、そういったことがないということを前提として成り立っているビジネスなのです。

ではどうして多くの家がいっぺんに焼けたり、多くの人が1度に亡くなったりすることがないのかというと、少し難しい確率の話になりますが「大数の法則」というものがあります。コインを10回投げて表が何枚出るかというと分からないですよね。でもコインを1万回投げると4,000回と6,000回の間になる可能性が物凄く高くなるといわれています。

数学では、コインの表と裏が出る確率は1/2ずつと考えられていますが、実際にその通りになるかどうかというのは確かに分からないですよね。10回投げても5回出るとは限りませんが、1万回投げると何故か知らないけど5,000回に近い回数の表が出るのです。これ以上は統計の難しい話になるため今回はお話しませんが、そういう法則で保険も成り立っているということです。

例えば火事になる確率が1/1000だとすると、保険会社のお客さんの大体1,000軒に1軒ぐらいが火事になるという風に考えることができ、保険会社はお客さんに支払う保険金の1/1000を保険料としてお客さんから受け取っておくという計算になっています。もちろん実際には、保険会社の社員の給料など必要な経費を上乗せするわけですけれども、ここではそれはおいておきましょう。

つまり、お客さんの数と火事になる確率をかけあわせることで、今年度に支払わないといけない保険金の金額のおおよその予想がつくことになります。
生命保険の場合は、お客さんの年齢によっても亡くなる確率が変わってくるため、年齢別に少し細かく見ることになりますが、考え方は火災保険と同じです。

しかし、この大数の法則に頼れない場合もあるので注意が必要です。
先ほどご説明したように、大数の法則というのは大きな数の法則ですから、極端なことをいうとお客さんが一人しかいない保険会社では成立しません。つまり、お客さんの数が少ないと「大数の法則」が適用できないということになります。
さらに、お客さんの数だけでなく狭い地域で営業をしている場合も大数の法則は使いにくくなります。全国展開している場合は良いのですが、狭い地域で営業をしている会社では、大数の法則は使えません。
それから大型台風のように滅多に来ない大災害の場合も大数の法則が使えません。

しかし、それで保険会社がつぶれてしまうわけにはいかないので、これも知恵があります。「再保険」という制度です。「再保険」とは、世界中の保険会社が世界で一番大きな保険会社のお客さんになるというものです。大型台風が来た時に世界で一番大きな保険会社がそれぞれの保険会社にお金を払ってくれます。日本の保険会社にとってみると、日本に大型の台風が来るということは滅多にありませんが、世界中を見れば、世界中のどこかで台風の大きなものがくるというのはよくあるため、世界一大きな保険会社にとってみると大数の法則が適用可能なのです。そのため、再保険という制度は非常にうまく出来ている制度ではないかと思います。

日本の大きな被害というと、最近では東日本大震災が起きましたが、そういう時の保険はどうなるのでしょうか。

世界中の保険会社が入っている大きな保険会社にとってはこうした大地震も大数の法則の適用内なのですが、地震の場合は世界一大きな保険会社でさえつぶれてしまう可能性があるため、引き受けてくれません。地震保険というのは日本政府が保険会社から委託されて引き受けているということになっています。ですから本当に大きな地震が来た場合は日本政府が払ってくれるという事になっているようです。

このように、保険というのは大数の法則というのを利用した制度だと言えます。
今日は「大数の法則」というテーマでお話をしていますが、他にもこの法則を利用した制度というのがあります。

例えば銀行の貸し出しなどもそうです。私達が銀行に貯金すると、銀行はそのお金を金庫にしまっておくのではなくお金を貸し出します。しかし、私達がお金をおろしに行ったらいつも銀行の金庫にお金がありますよね。それは何故かというと、100万人の預金者がいっぺんに預金を引き出しに行くという事が無いからです。そのため、100万人の預金者の内、預金を引き出しに来るのはせいぜい1万人だろうと大数の法則から予想し、1万人分だけ現金を金庫に入れて、あとは貸し出しに使っているということです。

これも実は大数の法則に頼れない場合があります。それは、「あの銀行が潰れそうだ」という噂が流れた際には、100万人の預金者が全員一斉に預金を卸しに来ることがあるわけですよね。そういう場合には日銀が現金輸送車で現金を運んできてくれることになっているため、大数の法則が成り立たない場合の対応についてもきちんと考えてあるということです。

では、今日のまとめです。

保険会社と銀行は「大数の法則」を利用して商売をしています。大災害や取り付け騒ぎなど大数の法則が使えない場合もありますが、それに備えて再保険や日銀貸し出しなどの対策が取られているので安心です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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