QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 7割見えた段階でジャンプしよう (戦略思考/荒木博行)

7割見えた段階でジャンプしよう

荒木博行 戦略思考

16/03/29


ビジネスの現場は、非論理的な意思決定に溢れています。皆さんの身の回りでもそういうことが思い当たるでしょうし、皆さん自身も自分でなぜこういう意思決定をしたのか分からない、という事例はいくつでも語れるのではないでしょうか。グロービス経営大学院の人気科目である「クリティカル・シンキング」は、そういった「何となく決めてしまう」「よくわからないけど決まってしまった」というようなことに対して、ちゃんとロジックをもって意思決定できるようにしていこう、というトレーニングを行っています。

しかし、トレーニングすれば、すべての物事に対してロジカルに根拠立てた意思決定ができるか、というと、当り前ですがそういうわけではありません。時として直感に頼った部分や、言葉では説明できない非合理的な要素を含んだ意思決定をしていくことも、ビジネスにおいては不可欠です。結局、ゼロか100かの話ではなく、程度問題の話とも言えます。その程度のイメージとして、「7割の確実性と、3割の不確実性」くらいを念頭におくべきでしょう。つまり、7割の要素を合理的に語れるようになった段階で意思決定すべきではないか、ということです。

もちろん、「7割だけで決めちゃっていいのか?」という疑問も出てくると思います。
しかし、そもそも実際にビジネスで意思決定する場合、100%が分かっていることなんてまずありません。たとえば、顧客がどこにいるのか、その顧客のニーズは何か、ということについては、究極的にはやってみないと分かりません。必ず「よく分からない」という部分は残るわけです。ただ、分からない部分は残るとしても、全体の7割ぐらいまではちゃんと根拠に基づいてロジックの筋道を通せているか、ということが大事です。そして、この筋道を通すためには、「クリティカル・シンキング」で学ぶような思考技術は極めて重要になります。答えを出すべき問いを明確にして、その問いを分解しながら、リサーチと妥当な前提を置きつつその問いに答えを出していく。こういうことを積み重ねて、意思決定の足元を固めることが求められます。しかし、そうであっても、残り3割は分からない部分が残るのです。分からないものは仕方ない、やってみないと分からない、というある種の腹の括り方で、最後はジャンプするしかありません。

もちろん、7割ではなく、もっとその精度を高めていく、ということも時として必要でしょう。業務によっては常に「完璧」が求められるものがある、というのも事実です。しかし、同時に考えなくてはならないのは、「精度を高めるということは、時間という貴重な資源を失っている」ということです。
「精度を高めよう」という引力は、たいてい企業の意思決定の現場で起こります。たとえば、7割の段階で提案を作って役員会議に持ち込みます。そうすると「この顧客からは意見を聞いたか?」「このオペレーションは本当に回るか?」と。目利きの鋭い役員からは、必ず「分かっていない3割部分」に対する突っ込みが来るわけです。そこで、自信なさそうに「まだ調べていません」と返せば、「次回の役員会まで調べてこい」と言われてしまうのは必然です。貴重な時間が平気で1ヶ月単位でさらに費やされて、ようやく8割に到達したと思えば、まだ分かっていない2割に対して突っ込みがくるわけですね。そしてまた1ヶ月。そのようにして意思決定が遅れていきます。

そのような意思決定の場で求められることは、3割の分かっていない部分が何か、ということを理解しておくこと、そしてその3割部分には必ず突っ込みがくる、ということを予め覚悟しておくこと。これに尽きます。つまり、「分かってないことを分かっている」という姿勢です。その姿勢が、いざという時の役員会の場での質疑応答で出るわけです。役員から突っ込みが来た時に、あたふたしながら取り繕うような回答をしたら、決める側も不安になりますよね。だから大事なのはその3割部分に対する突っ込みは覚悟をしておく。そして、そこは論理的にジャンプしているという自覚を持つことです。ただ、その不明点を踏まえつつ、このタイミングで意思決定することが大事ではないか、という心構え、それに裏付けられた迫力というのがとても大切なのではないかと思います。

さらに言うならば、7割時点で意思決定できれば、すぐには成功しないかもしれませんが、全然違う視界が開けることも忘れてはなりません。たとえば、実行した結果としてのデータが入ったりするわけですね。そうすると、「予想通りではなかったけれども、顧客はここに反応する」といったような新しい情報が入ります。これは貴重な情報であり、デスク上で8割とか9割まで精度を高めようとしている企業には絶対に得ることができないことです。したがって、ある程度のところまではしっかり調べつつ、最終的にどこかで腹をくくってジャンプしないと、タイミングを逸するということなのです。

ちなみに、このメッセージには、2つの側面があります。1つの側面は今言ったように、8割とか9割まで考えがちな組織や個人の人にとっては7割くらいでジャンプしよう、という話。一方で、逆の側面は、3割、4割くらいしか考えないでジャンプしてしまいがちな人にとっては、7割くらいまではしっかり考えよう、という話でもあります。「やってみないと分からない」というのは常に本質なのですけど、やる前にもう少しロジカルに考えられるところもある、という点はちゃんと念を押して置きたいと思います。

事前に過度にロジックを突き詰めすぎず、かといってギャンブルにはしない。その中間地点としての7割での意思決定、という感覚を改めてご理解いただければと思います。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 荒木博行

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ