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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(15) ゴミ箱モデル (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(15) ゴミ箱モデル

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/03/10

今回のまとめ: イノベーションは、合理的な意思決定の結果ではなく、しばしば問題と解決策となる技術が出会う機会によってもたらされます。


 今回と次回に亘って、組織論の分野で著名なジェームズ・マーチの研究から提起されたキーワードを取り上げたいと思います。まず、ゴミ箱(garbage can)モデルです。

 これは、あいまいな状況のもとでの意思決定のモデルとして、マーチがコーエンとオルセンという2人の共同研究者とともに1972年に発表した論文の中で提起されました。
 このモデルは、「問題」や「解決方法」をゴミに見立て、それらが投げ込まれるゴミ箱を、意思決定と呼べるような選択の「機会」として設定しています。
 この論文が想定しているあいまいな状況とは、ものごとを選択する基準や、解決方法をもたらす技術や、人々の参加が流動的な状況を意味していると考えてください。このような状況では、例えば技術は、予め何らかの問題を解決するための方法として生み出されるとは限りません。ある技術が出現してから、それによって解決できる問題が明らかになるということも起こるわけです。
 この論文は、コンピュータ・シミュレーションによって、このような状況下で行われる意思決定には3つのタイプがあることを見出しています。そのタイプには、ある問題が解決される意思決定ばかりではなく、問題を見過ごして行われる意思決定のタイプと、解決される前に問題が選択機会から出て行ってしまうタイプ、つまり問題をやり過ごして行われる意思決定のタイプを含むものでした。
 実は、この論文で使用されたシミュレーション・モデル自体、問題含みであることが既に指摘されているのですが、ここではその点には触れません。ゴミ箱モデルは、その後の研究に大きな影響力を及ぼし、しばしばイノベーション・プロセスを理解するための枠組みとしても引用されてきたのですが、そのような説得力がどこにあるのかについて触れておきたいと思うのです。

 私たちは、何らかの意思決定問題に直面すると、できるだけ合理的な判断を行いたいと思うのですが、ゴミ箱モデルはそもそも合理的な意思決定が困難であることを示唆しています。イノベーション・マネジメントの領域では、顧客ニーズを探索し、それに対応するための技術開発を計画的に実施する方法が論じられます。しかし、現実のイノベーションは、そのような合理的な意思決定の結果としてもたらされるのではなく、しばしば問題と解決方法となる技術が、たまたま選択される機会を得たことによって発生しています。
 例えば、3Mが開発した「ポストイット」は有名な製品イノベーションですが、その元になった接着剤は当初失敗作とみなされていました。ところが、別の事業部の研究者が、教会で賛美歌集を開くときに、歌集からしおりが簡単に落ちないようにする方法がないものかと着想した機会に、この接着財は、ある問題に対する解決策として選択されることになり、イノベーションに結びついたのです。
 ゴミ箱モデルの示唆からは、直ちにイノベーション・マネジメントに使える手法が導かれるわけではありません。しかし、イノベーション・プロセスのリアリティを理解する上で、マネジメントにとって有用な見方を提供していると思います。


分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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