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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 情報の非対称性 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

情報の非対称性

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

16/02/11

「なんだ、そうなのか!経済入門」という本のエッセンスをご紹介していますが、今日は「人間は嘘をつく」という話です。

嘘をつくのは何故かというと、話している人と聞いている人が持っている情報が違うからです。そのため、話をしている人が嘘をついても見破られる可能性が低い場合に嘘をつくメリットがあるわけです。これは難しい言葉で「情報の非対照性」と言います。お互い持っている情報が違うという意味です。

例えば宝石を買う時にその宝石が偽物かどうかというのは、宝石を売っている人は分かっていますが、宝石を買いに来た人は売っている人ほどはよく知りません。偽物かどうかはともかくとして、傷があるとか色が濁っているとか、そんな細かい事まで言い出したら売っている人の方が情報をいっぱい持っているわけです。
そういう時に売り手が嘘をついていないという保証が無いとなかなか怖くて買えません。そのため宝石を買う時には、よく宝石店とか高級百貨店とかわざわざ高そうな所で買わなくてもいいじゃないかと思うような所でみんな買うわけです。立派な店構えをして従業員を沢山雇って、この店を建てる費用や従業員の給料が宝石の代金に入っているだろうと思うと、もっと安そうな所で買えばいいのにと思わなくもないですが、わざわざ高そうな所で買うのは、この店は信用のある店だから嘘をつくはずがないという信頼感を大事にしているということです。

ではどうして高級百貨店は嘘をつかないと信じていいのでしょうか。もちろん嘘をつくのは悪い事だとかそういう道徳の話ではなく、経済学の話で言うと高級百貨店は嘘をつかないのは何故か。それは高級百貨店が嘘をつくと損が大きいからです。私が高級百貨店の社長だとして、もちろん私は道徳的に嘘をつくような人間ではないとかそういう話は置いておいて、嘘をついてお客さんを一人騙して儲けたとして何十万円か何百万か儲かるかもしれませんが、それによってあの百貨店は嘘をつくという悪い評判が立つと将来に亘って大きな損をするわけです。
ですから私がどんなにがめつい人で道徳心が無い人であったとしても、嘘をつくことは得にならないというのが経済学的に考えられます。1度嘘をついて顧客を騙すと損になるので私は嘘をつかないということをお客さんも知っているので私の高級百貨店で安心して宝石を買って下さるということなのです。もちろん高級百科店以外の店でもほとんどの人は正直でしょうけれども、評判に傷が付くことを恐れない人にとってみると、高級百貨店に比べると嘘をつくインセンティブというか、嘘をつきたくなるような心理状態に置かれかねないわけです。そのため、嘘つきは滅多にはいないでしょうけれども、100万円の宝石を買うのにもしかしたら嘘つきかもしれないと思いながら買うのも嫌ですから、その安心を得る為に高級百貨店で買うというのは合理的な行動なのでしょう。

高級百貨店の場合だけでなく、学生を採用する企業の人事担当者にも同じような事が言えます。学生が嘘をつかないという保証がないので、採用活動は大変なのです。例えば、私は英語が得意ですと言われてもその場で英語の試験をしてみるわけにはいきません。そこで便利なのが英語検定試験とか、TOEFLとかTOEICとかいう英語の試験があり、そういう試験の点数とかを聞けば学生が嘘をついているかどうかすぐ分かるわけです。学生にとってみるとわざわざ高い受験料を払って検定試験を受けたりTOEFLを受けたりするのは何故かというと、これは英語が得意であるか得意でないかということを人事担当者が知らないので、私は得意ですよと言っても嘘をつているだろうと思われると癪なので、嘘ではないということを示さないといけないからこのTOEFLという制度があるわけです。

英語の場合はいいですが、例えば私は積極的な性格で友達も多勢いますと面接で言ったとしても、これは嘘かもしれないですよね。人事担当者が嘘か嘘ではないか見抜きにくいのでなかなかここは採点項目にはなりにくいのです。本当はここが一番大事なのですが、本当に友達がいっぱいいるかというのは情報の非対照性があるので嘘をつかれても分からないわけです。

一方で大学名は嘘がつけませんから、難関大学の学生が就職で有利になるというのは人事担当者としてはそうかもしれないと思うわけです。要するに、嘘がつけない項目は採点する時に楽ですからどうしても重要視するということです。

ではどうやって人柄を伝えたらいいのかというと、これは難しいです。私も久留米大学で学生の就職の指導をしていますが、なかなか人事の人にどうやって信じてもらうのかというところが難しく、本当に明るくて友達もいっぱいいて良い学生だなと思っていても、就職で苦戦している学生がいっぱいいて、情報の非対照性の難しさを感じます。

将来嘘発見器の制度がどんどん上がってくれば、学生が私は友達がたくさんいますと嘘発見器の前で喋って、嘘ではないという証明が出来る様になれば、この情報の非対照性の問題が全部クリアされるのでしょう。早くそういう日が来てくれたら就職の指導担当としては助かりますね。

では、今日のまとめです。

正直な人と嘘をついている人を見分けることが難しい場合、正直な人が損をすることになりかねません。英語検定試験のような制度があれば良いのですが、そうした試験がない分野についてはどうしたらよいのか難しい問題です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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