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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (14)情報の粘着性 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (14)情報の粘着性

永田晃也 技術経営、科学技術政策

16/02/23

 前回は、ユーザーのアイデアが源泉となって発生するユーザー・イノベーションについて延べ、そのように有益なアイデアを提起するユーザーを意味する「リードユーザー」というキーワードを取り上げました。今回は、ユーザー・イノベーションの発生を左右する要因を説明するものとして、「粘着情報(sticky information)」あるいは「情報の粘着性」という語を取り上げてみます。

 情報の粘着性とは、ある情報が、その源泉に固着して、容易に他の場所へ移転することができない状態を意味しています。したがって、情報の移転コストと言い換えることができます。
 このコンセプトは、エリック・フォン・ヒッペルが1994年に発表した論文の中で提唱しました。ヒッペルは、情報の粘着性を高める要因をいくつか挙げています。
 まず、情報そのものの特性に関する要因で、それが明示的に表すことのできない暗黙的な性質を有する場合に移転コストが高まるというものです。例えば人の持っている熟練技能は、容易に言語で表現することができず、従って伝達することが困難な性質を持っています。
 もう1つの要因は、情報の受け手の側にある吸収能力です。その情報を吸収する能力が十分に蓄積されていないと移転コストが高まるとされています。この吸収能力は、関連する知識が事前に受け手の側にどの程度あるのかによって規定されるということが、ウェスリー・コーエンとダニエル・レビンサールによって1990年に発表された論文の中で明らかにされていました。受け手の吸収能力が十分でないと、予め受け手側が基礎的な知識を保有している場合に比べて多くの情報を移転しなければならなくなるため、移転コストは高くなるわけです。

 ヒッペルは、こうした情報の粘着性がユーザー・イノベーションに及ぼす影響を、メーカー側が持つ技術情報と、ユーザー側が持つニーズ情報という2つの情報に亘って論じています。そして、ユーザー・イノベーションが活発に行われるのは、技術情報の粘着性が低く、ニーズ情報の粘着性が高い場合であるとしています。
 この議論は直観的に理解できると思います。技術情報の粘着性が低いということは、それが比較的容易にユーザー側に移転されるということですから、ユーザーは自らのニーズに対するソリューション、解決方法を探索し、ユーザー・イノベーションを発生させることが多くなります。また、ニーズ情報の粘着性が高いということは、ユーザーのニーズがメーカー側に伝わり難いということですから、メーカーに先駆けてユーザーが自らイノベーションを起こすことが促されるわけです。

 粘着性という表現は不要かも知れませんが、こうした情報の移転コストがイノベーションの発生に影響を及ぼすという指摘は重要です。それは、メーカーに対してはリードユーザーを発見することの重要性のみならず、情報の粘着性を低下させるという課題も示唆しているのです。

今回のまとめ:情報の粘着性とは、情報の移転コストを意味しており、ユーザー・イノベーションの発生頻度に影響を及ぼすものです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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