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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 国際通貨としての中国人民元(その2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

国際通貨としての中国人民元(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/01/05

人民元の国際通貨化というテーマで、前回は人民元がバスケット構成通貨として採用されることが決まったSDRについての制度的な側面を説明しましたが、今回は、SDR構成通貨への採用で一歩進んだことになる人民元の国際通貨化について、その背景や影響について考えてみたいと思います。

そもそも国際通貨とは何かと言えば、通貨は元来、①計算単位、②支払い手段、③価値保存---の3つの機能を担っている訳ですが、国際通貨は国際貿易・金融取引においてその3つの機能を担う主要通貨と考えることができます。この場合、「計算単位」は為替市場で取引される際に、各国の通貨の相手通貨となる主要通貨のことであり、「支払手段」は貿易決済において用いられる主要通貨であり、「価値保存」は外貨準備に用いられる主要通貨ということになります。これらの機能を果たす国際通貨として認められるためには、自国経済が一定の規模を持つと同時に、十分な信用力を持ち、取引相手国や第三国から受け入れられることが必要です。

既存の国際通貨それぞれの実力はどうなっているかと言いますと、現在は基軸通貨としての米ドルが圧倒的なウェイトを持っており、例えば「計算単位」としては外国為替市場での取引の内9割近く(1取引で2通貨が関係するので実質4割強)が米ドルを一方とする取引となっています。また、「価値保存」面では、世界の外貨準備に占める米ドルの割合は6割を超え、第二位のユーロの約2割を大きく上回っています。また、「支払い手段」として機能する貿易決済通貨としては、日本の貿易に限っても輸出の5割、輸入の7割は米ドル建て。ちなみに、日本円は外国為替市場での取引通貨としては約2割の取引を占め(実質1割)ていますが、外貨準備としては僅かに4%分の保有に留まり、日本の貿易決済通貨としても輸出の35%、輸入の約2割を占める程度で、日本を含まない三国間の貿易決済にはほとんど用いられていない状況です(今回、SDRの構成で日本円よりも大きなシェアとなることが決まった人民元は、さらに小さな割合でしか用いられていません。それでもSDRの構成ウェイトで日本円を上回ったのは、中国の貿易の大きさを勘案したとみられています)。

では、国際通貨となることのメリットは何かあるのでしょうか。日本も一時財務省が「円の国際化」ということを掲げて、その利用拡大をうったえましたが、貿易決済に自国通貨を用いれば企業は為替相場変動の影響を直接には受けずに取引ができるし、また、通貨が活発に取引されることによりその国の金融市場の発展が見込めます。更に、通貨が海外で保有されると、発行国は通貨発行益(シニョレッジ)を得ることができます。つまり、国内における政府・中央銀行のように、通貨を作るための印刷費等の負担だけで、それを対価に買い物(輸入)ができる訳です。

中国が人民元を国際化する狙いについて考えてみましょう。中国が人民元の国際化を強く打ち出したのは、2008年のリーマン・ショック前後です。その時点で既に世界最大の外貨準備保有国で、ほとんどを米ドルで保有していたことから米国債の最大投資家となっていました。しかし、リーマン・ショックで米国経済に対する信認が動揺し、米ドルの為替相場の大幅下落が見られたことから、外貨準備として米ドルを保有せざるを得ない状態、即ち米ドルを基軸通貨とする一極化体制に危惧を持ったと言われます。同時に2000年代に入ってからの高成長で自信をつけたものの、アメリカとは体制が異なることから、経済制裁を受けて米ドル主体で運用している外貨準備が差し押さえられたり、貿易決済が制限されることを警戒しています。これらのために、中国は米ドル基軸体制を批判しSDRを基軸通貨にすることを主張していますが、さらに最近では、米国と並ぶ大国として世界に影響力を発揮するために、人民元を米ドルに匹敵する国際通貨へ育成することを狙っている節もあります。この夏に大いに話題になったAIIB(アジア・インフラ投資銀行)について考えると、途上国に国際通貨としての人民元が提供できれば、中国の裁量性は大きく増すことになります。つまり、防衛的に「SDR基軸」を主張するためにも、大国として振る舞うためにも、人民元の国際通貨化、SDR構成通貨への採用は重要な意味を持ちます。

逆に、アメリカは今回の人民元のSDR構成通貨入りについてどう見ているかと言うと、今回は、アメリカも人民元のSDR構成通貨への採用支持を表明しましたが、米ドル基軸通貨制に異を唱える中国の人民元がこれ以上勢力を拡大することには、心中複雑な面があると思われます。もっとも、中国が今後、期待通りに人民元の国際化のために資本規制などの緩和に取り組めば、米国企業、特に金融機関にとってのビジネス・チャンスが広がります。また、IMFにおける中国のプレゼンス拡大を拒絶するような態度をとれば、かねてより欧米寄りという批判のあるIMFに対抗して、中国はAIIB設立と同様の動きに出ないとも限りません。現に2013年にはブラジル、ロシア、インド、南アフリカの諸国と共にBRICS銀行を設立しているということもあります。今回は致し方なく支持したということではないでしょうか。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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