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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 国際通貨としての中国人民元(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

国際通貨としての中国人民元(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

16/01/04

先般、中国の通貨である人民元が、「IMFから国際通貨として認められた」といった内容で報道されました。これは、具体的には人民元がSDRの構成通貨の一つとして採用されることが決まったということなのですが、今回はこの人民元の国際通貨化の動きについて採り上げます。

まず、IMFについてご説明しますと、IMFは世界銀行(IBD)やWTO(世界貿易機構)の前身であるGATT(関税及び貿易に関する一般協定)などと共に、第二次世界大戦後の世界経済秩序維持のために設けられた機関・枠組みの一つで、国際通貨制度を守るという役割を持って設立されました。敗戦国であった日本も1952年に加盟国しました。加盟各国は貿易赤字など国際収支の不均衡により外貨準備が枯渇した場合に、IMFから主要通貨の借り入れをして対外支払いに充てることになっています。その代り、加盟国には一定の割り当て金額(クウォータ)をIMFに払い込む義務が課され、そのうち大半は自国通貨、一部を国際的に通用する主要通貨で払い込むことになっています。この払い込み金は、IMFが国際収支の困難に陥った国にクウォータの一定倍の金額を主要通貨で融資するための原資となります。
 
ところが、IMFから融資を受ける国が実際に借り出す通貨は、特定の通貨(ほとんどドル)に集中したため、加盟国(米国)からの払い込みだけでは当該通貨(ドル)が不足するという問題が生じました。それを補うためにIMFが作り出した通貨がSDR(特別引出権)です。SDRは実際の紙幣等があるわけではなくて、このSDRを見返りにその価値に応じて主要通貨と一時交換できる権利です。IMFはこのSDRの創出によって価値基準を作り出すと共に、このSDRを一定単位加盟国に配分することを通じて各国の外貨準備を増強して、ドル一極集中によるドル不足の緩和を図った訳です。

このSDRの価値ですが、通貨バスケット制度といって、主要通貨がそれぞれ一定割合入った「バスケット」の中身全体の価値に一致するように決まります。リンゴやミカンが一定数入った籠を想像してもらえればと思いますが、リンゴ、或いはミカンの値段が大幅に上下しても、籠の中身全体の価格の変動率は小さく相対的に安定するように、通貨バスケットとすることでSDRの価値も、構成通貨の価値が変動しても相対的に安定しています。今回、人民元は、このSDRを構成する通貨に仲間入りすることになった訳です。

このSDRのバスケット構成通貨は、当初は16もありましたが、現在では米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨となっています。5年に1度理事会で見直しが行われることになっており、今回行われた理事会において、従来の4通貨に加えて、人民元を含めて5通貨にすることが決定された訳ですが、人民元バスケットにおける価値の構成比では日本円の8.33%を上回る10.92%となるため、ドル、ユーロに次ぐ位置を占めることになります。

人民元取引には資本規制が存在し、未だ自由化されていないのに、何故SDRの構成通貨となり得たのか、という点ですが、SDRのバスケット構成通貨の採用基準が決まっています。それらは、①過去5年間で財とサービスの輸出額が最も高い国等の通貨であること、②IMFが「自由利用可能通貨」であると判断した通貨であること―――の2つですが、前回(2010年)のバスケット構成の見直しの議論において、人民元は第一の基準を満たすものの第二の基準を満たしていない、と判断された経緯があるのですが、今回の採用の決定に当たりIMFは、第二の「自由利用可能通貨」であるか否かの基準は、通貨の相場が自由に変動するか或いは資本規制など外為規制がないかということではなくて、実際に国際的に広く利用され広く取引されているかが重視されると説明しています。

では、人民元がSDRの構成通貨になることで今後何が変わってくるのか、という点ですが、SDRが利用される機会は極めて限られ、また、金額的にも非常に限られたものとなっているため、人民元が構成通貨としての採用によって、直接的に何か大きなことが急激に起こることはないだろうと考えられます。考えられるのは、中国は過去10年弱、人民元を国際通貨にするために取引の拡大や規制の緩和などに積極的に取り組んできていることもあり、今回、国際通貨制度の番人であるIMFが人民元について「自由利用可能通貨」であるというお墨付きを与えたことで、通貨としての信用力が増し、貿易決済や各国の外貨準備などへの利用が増えることが考えられます。逆にに、主要国際通貨としてふさわしい取引の自由度を実現するために、中国はさらなる規制緩和に取り組まねばならないという課題を背負ったとも言えるでしょう。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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