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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > TPPの大筋合意1 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

TPPの大筋合意1

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/12/10

最近の大きなニュースとして、10月にTPPが大筋合意に至ったということが採り上げられました。実質8年越しの交渉を経て大きく前進したこのTPPですけれども、今回、少し基本に立ち返って考えてみたいと思います。

TPPは「環太平洋連携協定」と訳されますが、その名のごとく太平洋を取り囲むアジア、アメリカ、オセアニアの12か国の間で経済活動を相互に活発化する為の通商ルールを定める協定のことです。その一環として、貿易を円滑にするための関税引き下げなどが含まれます。ただし、貿易に限定したFTA(自由貿易協定)に比べ、より広く投資や知的財産の取扱いルールなども含んでいることから、多国間のEPA(経済連携協定)の1つと考えた方が良いと思います。参加国のGDP規模が世界の40%を占めるという意味で、既存の協定にない大きさであり、大きな経済効果が期待されています。

日本はこのTPP交渉に遅れて加わりましたが、他の参加国の構成をみると、どういう経緯でこういう組み合わせになったのか不思議に思われるかもしれません。このTPPはP4というAPECに参加している21か国・地域の中の小国、或いは単一の産業しか持たないモノカルチャーの4か国、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの間で締結された極めて自由度の高い協定がもとになっています。2008年にAPEC参加国のアメリカ、同じくベトナムなどが参加表明したことで拡大交渉が始まりました。大分遅れて日本も加わりましたが、高い自由化が目標になっていることからAPECメンバーでも参加を見合わせた国も多く、その結果現在のような参加国になりました。他にはカナダ、メキシコ、ペルー、マレーシア、オーストラリアが参加しています。

本来、通商ルールは地域単位ではなくて、全世界で統一されるべきですが、その意味では第二次世界大戦後にGATT(関税及び貿易に関する一般協定)という枠組みが構築され、さらにその流れをくむWTO(世界貿易機関)という世界161か国が参加する機関において通商取引自由化のためのルール作りが行われてきました。ところがWTOは加盟国が増えたこともあり、先進国、途上国、新興国間の調整がなかなかつかず、交渉が行き詰まるようになりました。そのため、先ずは合意できる国の間で自由化を進めようということで、2か国間或いは比較的隣接した地域で、FTA或いはEPAが締結されるようになりました。同時にこれらの締結がWTOの議論に刺激を与える効果も期待されています。

その結果、2か国間や小さな地域でのFTAなどが多数締結されましたが、問題も明らかになってきました。こうしたFTAやEPAはそれぞれにルールが異なります。一方で、通商取引は、例えば製品貿易に関連して、組み立ては1か国で行われても部品段階にまで遡ると多数の国が関わっていて、複数のFTAとかEPAにまたがった手続きが必要になることが珍しくありません。その結果、1つの取引でも、またがる協定それぞれに規定された必要書類を整える必要が生じ、取引作業が極めて煩雑になります。これをスパゲティボール状態といいます。つまり、皿の中でフォークを回転させるとどんどんスパゲッティが巻き付いて膨れるように、書類がどんどん増えていくことに象徴される不効率な状態となっているわけです。こういう状況を緩和する為に、APEC加盟国・地域を包括する、より広域で統一的な枠組み、即ち、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を作ろうということが合意されました。そして、TPPは、FTAAPに至るステップとして位置付けられています。

このように、大きな規模を持つ経済連携協定であるTPPの交渉には、アメリカや日本は参加してきた訳ですが、同じくAPECメンバーで且つ経済大国である中国は参加していません。その背景には何があるかというと、中国もAPECメンバー加盟国としてFTAAPの構築という目標は共有しています。しかし、より自国の経済発展段階、貿易・経済取引条件に適合した形のFTAAPにしたいという思惑からと推察されますが、中韓日3か国による協定やASEANにその3か国を加えたASEANプラス3、あるいは更にオーストリア、ニュージーランドとインドを加えたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)など、先ずはアメリカが入らない形の枠組みを志向し、それをベースにFTAAPにまで拡大するということを狙っていると見られます。どのアプローチをとるかによって、同じFTAAPができあがるにしても、その性格や影響が大きく異なる可能性があります。つまり、中国とアメリカ、そして日本(日本はアメリカに近いのですけれども)は、FTAAPを自らにとって有利なものにするためにアプローチで張り合っているといえます。

TPPは難産の末に、漸く大筋合意に至ったわけですけれども、発効に至るためには、まだ、各国での批准作業が残っています。批准にあたっては2013年時点のGDPで85%以上を占める6か国以上が批准することがこの協定自体の発効の条件になっています。アメリカ、日本の両国はいずれも、参加国のGDPの15%以上を占めますので、どちらかでも批准が行われなければ協定が発効しないことになります。特にアメリカはこれから大統領選挙を控えて、微妙なタイミングを迎えており、本命と言われるクリントン前国務長官は現段階ではこの協定に対して不支持を表明しています。民主党予備選挙向けの対応とも見られますが、今後のアメリカの批准プロセスは大いに注目すべきだろうと思います。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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