QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > TPPの大筋合意2 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

TPPの大筋合意2

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/12/11

今日は前回に引き続き、10月に大筋合意したTPPが持つ意味について考えたてみたいと思います。

TPPに限らず一般にFTAやEPAなどは、貿易を拡大して投資にかかるリスクを軽減することで、関連する企業や参加国経済の成長を促す効果があります。日本企業にとっても海外での関税が軽減され、投資の諸制約から解放されることでビジネスチャンスが広がります。TPPは、参加国のGDPが世界の40パーセントをしめるという規模の大きな枠組みであることから、その面で大きな効果が期待されています。一方で、輸入品との競争が厳しくなることで、国内の一部の産業にとってはマイナスのインパクトが及ぶ可能性があります。

ニュースでは、「コメの関税は守った」とか、「アメリカからのコメの輸入増」とか、「肉類の関税引き下げに応じたのに、自動車分野では僅かな成果」などといった評価やコメントが伝えられていますが、今回の交渉結果はどのように捉えるべきでしょうか。

日米2国間で見ると、確かに輸入面ではコメの無関税輸入枠が拡大し、牛・豚肉の関税率引き下げも比較的大幅となったのに対し、輸出面では採り上げられたのが自動車や自動車部品の関税で、これらの関税率は為替相場変動の影響が簡単に上回ってしまう2~4%程度であり、合意ではその程度の関税の撤廃に20年以上もかけるという結果になるなど、バランスを欠くように見える部分があります。また、アメリカの貿易を取り仕切るUSTRのTPP関連のホームページを見ると、ことさら日本との2国間の交渉成果が強調されています。更に、農産品重要5品目については、そもそも段階的な関税撤廃も認めないとした日本の国会決議に違反したということでも批判されています。

しかし、実際の成果はより詳細に見ないと正しい評価はできないでしょうし、そもそもTPPは内容として多国間における投資・競争、知的財産、政府調達、環境など幅広い分野を含むものであることから、二国間の特定の分野を採り上げて成果や交渉の巧拙を評価することにあまり意味があるとは思えません。また、USTRのホームページで強調されているのも「対日自動車輸出について日本の非関税障壁に風穴を開けた」という従来のアメリカの主張に沿った成果なのですが、日本側はアメリカ車の輸入が増えないのは日本の制度の問題ではないという立場なので、あまりピンとくるものではありません。さらに、農産品5品目については国会決議があったとはいえ、日本の交渉参加を待ち受ける側が「例外なき関税撤廃」を条件に掲げるんとする中に遅れて飛び込んだ訳であり、聖域として守られると考えるのはやや楽観的に過ぎた面があるとも言えます。参加国はいずれも国内にマイナスのインパクトを被る産業を抱えており、それ等の産業への説明には腐心しているはずですが、そうした産業への対策の在り方が今後の各国での批准に影響してくることが予想されます。

日本については、今回の合意で仮に国全体としての経済的恩恵がまさるとしても、農業については少なくとも直接的な意味ではマイナスのインパクトがあることは間違いが無いと思います。そのため、農業についてはTPP対策としての予算措置などについての検討が既に始まっています。こうした政府の対応は、いわば当然のことかと思いますが、問題はどのような対策を行うかということです。日本に限らず、先進国のほとんどが巨額の予算を使って保護しています。多くの場合、関税を引き下げて国内価格を国際価格に合わせながら、補助金という形で農業者への所得保証を行って国内農業を守っています。日本の場合は、政府に補助金で所得保証するだけの財政的な余裕が無いことなどから関税による保護を続けてきており、国際価格との差を政府ではなく消費者が負担する形となっているために人気がありません。それと同時に、こういった交渉の場でも厳しい交渉の矢面に立たされる結果になっています。TPPがなくても日本農業は担い手の高齢化等様々な面で危機にあるという事実を踏まえ、農業の何を守るべきなのか、農業を通じて何を守るのか、こうした事を明確にしながら、対策を講じていく必要があるだろうと思います。

戦後の貿易等の国際取引のルール作りは、これまで先進国の主導の元ガット(GATT)やそれを引き継ぐ形でできたWTOの場で行われてきましたが、近年、インドやブラジルなど主に新興国の抵抗で合意形成が難しくなってきています。また、中国は2001年のWTO加盟を契機にGDPの2桁成長を遂げ、今やアメリカと並ぶ2大国としての立場を強調しつつあります。こうしたことからWTOの枠組みは先進国、特にアメリカにとってあまり使い勝手が良いものでなくなってしまった面があり、エフタープ(FTAAP)という新しい広域の枠組み組成への期待感に繋がっています。しかし、そこにいたるアプローチでもアメリカや日本は中国と競っているのです。その点、今回のTPPの大筋合意は、アメリカと日本が主導権を握る形で従来の枠組みを補完する新たな貿易等の国際ルールつくりの枠組み樹立へ向けての一歩を踏み出したという点で大きな意味を持つといえるのではないかと思います。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ