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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 全員賛成の戦略は失敗? (経営戦略、イノベーション、サービス経営/山口英彦)

全員賛成の戦略は失敗?

山口英彦 経営戦略、イノベーション、サービス経営

15/12/28


今日のテーマは、「全員が賛成する戦略は失敗作である」という、一見奇妙に聞こえる話です。

皆さんは仕事で何かを提案する時、提案した相手から「賛成!」とか、「この企画はいいね」と前向きな反応が返ってくることを期待していませんか?
日常生活ではたくさん褒めてもらえた方がいいかもしれませんが、経営戦略は別です。もし戦略の概要を立場の異なる10人に話してみて、最初から10人全員が賛成するようであれば、戦略としては失格だと思ってください。

なぜ全員が賛成するようではダメなのか。
実は最初から全員が賛成するような戦略は、組織を動かす指針になりません。戦略と言うのは、お金や人材といった限られた経営資源をどこに振り向けるかという判断が込められているべきです。こうした戦略上の判断に対しては、必ず不利益を被る人がいます。そして不利益を被る人は、最初は反対してくるはずです。
例えば、「A事業もB事業も最大限成長させる」という戦略は、誰も反対しないでしょうが、それでは何に優先的に取り組むかの指針になりません。一方、「今後3年間はA事業の育成に力を入れるために、B事業は予算や要員数を減らそう」であれば、B事業の関係者は反対を唱えてくるでしょうが、企業全体としての優先度が示されており、立派な指針と言えます。つまり最初から全員が賛成するということは、そうした踏み込んだ判断が含まれていないことを意味します。
もっとわかりやすい例を挙げると、「世界は平和であるべきだ」という提案は、メッセージとしては正しくても、戦略提案としては失格です。言っていることは正しいのですが、最初から全員が賛成することが分かるので、わざわざ提案する意味がありません。
一方、「世界平和を維持するために、自衛隊を強化しよう」とか、「国連の枠組みをゼロから見直そう」といった提案は、賛否が分かれます。先ほど言った「判断」が含まれているからです。
戦略作りで目指したいのは後者のような、一歩踏み込んだ提案です。そして我々がやるべきことは、最初は反対の立場をとっていた人を、提案を通じて最終的に賛同してもらうよう努力します。将来の環境変化や自分達のビジョンを語り、他の選択肢と比べて、自分が主張するプランがどういう点で優れているのかを情熱込めて説明します。つまり最初に反対者がいるからこそ、そして反対者を納得させるからこそ、戦略を描く意味があるのです。

別の観点から「全員賛成」が失敗のシグナルであることをお話しましょう。
戦略作りは理詰めで合理的に考えなくてはなりません。が、誰もが賛成するようなわかりやすいロジックだけだと、競合と同じ戦略になってしまい、独自性に乏しい苦しい事業になります。
実は世の中で成功した企業の戦略には、「非合理の理」ともいうべき共通項があります。理は理屈の理でして、「非合理の理」はつまり、一見すると非合理なのに、よくよく考えてみると理に適っているという戦略です。
例としてセブン銀行の話をしましょう。セブン銀行は、2001年に、IYグループ(今の7&iホールディングス)の傘下に作られたATM決済専業の銀行です。設立当時は「素人に金融ビジネスができるわけがない」と疑問視する声が多く、実際に参入直後の業績は振るいませんでした。
転機になったのは「セブンイレブンの全店舗にATMを置く」という戦略への切り替えでした。金融業界では「人通りが多く、利用回数の見込める場所にATMを置く」というのが常識で、最初はセブン銀行もその常識に従って、来店客数の多いセブンイレブンを中心にATMを設置していました。しかし、もしお客様が郊外をドライブ中に現金を下ろそうと思い、セブンイレブンに立ち寄った時、ATMがなかったら二度と利用しようとは思わないだろう。一方で、まさかと思って入った片田舎のセブンイレブンにATMがあったら、感動して、その後は「お金が必要になったらセブンイレブンに行く」という行動を取るようになるだろう。当時の経営陣はそう考えて、全店舗設置に戦略方針を変えました。
他の銀行の幹部からは「採算割れのATMが増えるだけだ」と冷たい目で見られていましたが、セブン銀行のATM利用者はあれよあれよと言う間に増えて、現在の成功につながっています。

セブン銀行が最初に採用していた「人通りが多く、採算の見込める店舗にATMを設置する」という戦略は、常識的でわかりやすいロジックですので、恐らく誰も反対しなかったでしょう。しかしそれでは他の銀行と何も変わらず、サービスが同質化してしまうのです。
そこで「短期的な採算はわからないけれど、とにかく最初に全店にATMを置いてみる」という一見非合理だけれども、それが顧客の行動に与える長期的な影響まで考えた判断を入れてみる。そうすると初めてセブン銀行の独自性が生まれ、顧客の支持が集まる。しかも業界の常識で考える人からは「あり得ない」戦略ですので、しばらくは追随する企業も出てきません。すなわち、大勢の人がちょっと考えただけではNG、でも視野を大きく持つと「行けるかも」というアイデアでないと、勝てる戦略にはならないのです。

本日のまとめ:戦略を作る時は最初から「全員賛成」を目指さないこと。当初の反対意見はむしろ戦略に価値があることの証だと思って、より踏み込んだ独自のアイデアを磨いていきましょう。

分野: 経営戦略 |スピーカー: 山口英彦

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