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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本郵政の上場 (企業財務 M&A/村藤功)

日本郵政の上場

村藤功 企業財務 M&A

15/12/24


今日は、日本郵政グループの上場について話します。

11月4日、日本郵政という持ち株会社と、その傘下にあるゆうちょ銀行とかんぽ生命という三つの会社が、東証の一部に同時に上場しました。こうした場合、通常は、新株発行と既に発行している株の売り出しの両方が行われます。今回は新株発行はなく、政府が持っている株の11%を売り出し、1兆4千億円を調達しました。郵政三社の株式上場で得られる資金を4兆円まで東日本大震災の復興支援に充てることになっており、今回、その三分の一を手に入れました。今後は、あと二回ほど売り出す予定です。

今回の上場は、うまくいきました。マーケットが始まると最初に初値がつきますが、これは、マーケットが始まる前に需要をもとに決めた売り出し価格より高かったり低かったりします。当然、売り出し価格より少々でも高い初値がついて、徐々に上がって行くと投資家は皆喜びます。現在のところ、高めの初値がついて後にぼちぼちと価格が上がっていますので、理想的なかたちで上場がなされたと言うことができます。

ただ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が国債を山のように持っていることがひっかかります。小泉さんが郵政民営化を行う以前は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命には年金資金と合わせて政府の財政投融資に使われる500兆円が入ってきており、そこから高速道路や住宅公庫などにお金を回すことで、大きな政府ができあがっていました。そこで小さな政府を志向して、郵政民営化をして入り口の資金を削減することにしたのです。今回の上場を初めとして、将来はゆうちょ銀行もかんぽ生命も100%民間へ行くことになります。資金運用部は既に廃止されましたが、国は財投債や財投機関債を発行してゆうちょ銀行やかんぽ生命に買ってもらっていました。しかしゆうちょ銀行やかんぽ生命が上場で本当に民営化されると、ゆうちょ銀行やかんぽ生命が持っていた山のような国債や財投債、財投機関債を売りに出されることになります。しかし、何百兆円分もあるこれらが売りに出されると、買い手が少なかった場合、金利が上がることになります。

また、ハイパーインフレの恐れもあります。現在、日銀が2%インフレターゲットを目論み、年に80兆円分の国債購入による金融緩和を行っています。国債は年に30~40兆円分しか発行されませんので、日銀は、国債を持っている民間銀行から民間銀行が保有する日銀当座預金に購入代金を振り込んで購入しています。ゆうちょ銀行は日銀に当座銀行を持っていますので、日銀は容易にゆうちょ銀行から国債を買い取ることができます。ところがかんぽ生命は当座預金を持っていないため、日銀がかんぽ生命から国債を購入する際には、現金を払わなければなりません。ここで多額の現金が必要となるため、日銀が現金を発行すればマネーサプライが増加してハイパーインフレが起こるのです。日銀による2%インフレターゲットが終わって山のように持っている国債を売り始めた時には、当分は民間銀行が貸し出しにせずまだ日銀当座預金があればこれらの国債を買ってくれるかもしれませんが、金利が上がって損することを恐れた民間銀行は購入を控えるかもしれません。したがって今回の民営化によって、金利が上がるかインフレになるか、どちらかを選ばなければならないことになりそうなのです。

また、今後の見通しにも不安が残ります。日本郵政グループは、ゆうちょ銀行とかんぽ生命、日本郵便の三つを行っています。郵便事業は今後、もう少し効率的になると見られています。ドイツのドイツポストは、DHLなどによる相次ぐ買収によって、国際物流における世界3強のひとつになりました。そうした中で日本郵便は、オーストラリアの物流会社であるトールホールディングスを600億円強で買収し、国際物流を底上げしようとしています。一方でゆうちょ銀行やかんぽ生命は、現状あまりに巨大であるため、日本のメガバンクや地銀からも海外からも縮小を求められています。しかし先に述べたように、縮小の過程において金利が上がったりインフレになったりする可能性もあるため、現状を維持して強化した方がよいと考える人もいます。

今日の話をまとめます。
11月に日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命の三社が上場し、発行済み株式の11%が1.4兆円程度で売却されました。売却で得た資金の初めの4兆円は東日本震災の復興資金に使われることになっていますので、あと2回ほどの売却が必要です。日本郵政が民営化されれば保有している国債が徐々に売却されますので、これを誰かが引き受けなければ金利が上がっていくものと見られます。あるいは日銀が現金を発行してこれを購入する場合には、インフレになります。私は、ゆうちょ銀行やかんぽ生命は金融機能を縮小し、お金が入って来なくなってできなくなった公的事業会社や公的金融機関を民営化すべきだと考えています。これは小泉さんや竹中さんがもともと考えていたプランで、実行した方が日本経済のためになるのではないでしょうか。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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