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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 戦略に惚れて疑う (経営戦略、イノベーション、サービス経営/山口英彦)

戦略に惚れて疑う

山口英彦 経営戦略、イノベーション、サービス経営

15/12/21


本日は新規事業の戦略に魂を吹き込むための秘策をご紹介します。

新戦略のコンセプトを決め、それからマーケティングやオペレーションといった施策を具体化して、さらに投資計画や売上計画といった数字面や、事業立ち上げのスケジュールを詰めると、ひとまず事業戦略は完成です。
ところが、こうして自分が全力で作り上げた戦略も、周囲に見せてみると「何か切れ味が足りない」と言われてしまうことがあります。実際、あまり経験のない人が作った戦略というのは、最初はどこか上滑りしているものです。
何が足りないのか。戦略作りに慣れていない人に励行して欲しいのは、2つの視点で自分が描いた戦略を疑うことです。

1つは「関係者が本気で売ってくれるのか?」を疑う必要があります。商品開発をする際に、多くの人は最終消費者のニーズを満たすよう必死に考えますが、一方で、製品を売ってくれる営業部隊や卸・小売店といった流通業者の利害を忘れがちです。どんなに優れた製品でも、販売を担う人たちが本気にならないと、売上につながりません。
営業や流通にかかわる人々の行動は、大部分が「自分にとって経済的なメリットがあるか」、いわゆる経済合理性によって決まります。従って、営業だったら新製品を売ったらちゃんと人事評価やコミッションに反映されるように、あるいは外部の流通だったら十分なマージンを落とせるように仕組みを作る必要があります。
ただし経済合理性というのは、必ずしも目に見えやすいとは限りません。例えば新製品の特徴が「メンテナンスが簡単」や「壊れにくい」だとすると、最終ユーザーにとってはメリットがあります。ところが流通業者がアフターサービスで稼いでいるような場合には、新製品は自分達の収益を減らしてしまうので脅威になります。そこで流通業者としては、もっとメンテナンス頻度が高かったり、壊れやすかったりする古い製品の方を売りたがることが、実際によく起こります。
もっと目に見えにくい例もあります。例えば新製品の機能が優れていても、理解や説明が難解な場合、営業の人達が積極的には売ろうとせず、説明が簡単で慣れている他の製品を優先してしまうケースがあります。つまり新製品のメリットが簡単に理解でき、説明もしやすい環境を整えないと、営業部隊を巻き込めないのです。
このように、製品さえ優れていれば、営業や流通がちゃんと売ってくれると思いこまずに、彼らの立場で動機づけができているかを疑うことが肝心です。

2つめの視点は、「勝てるのか?」を疑うことです。
事業戦略には「どうやって競合に勝つか」という競争優位性が必要ですが、よく「うちの持っている技術が応用できる」とか、「営業力が生きる」といった点を競争優位性と見なしている戦略があります。しかし、「技術が応用できる・営業力が活かせる」はあくまで「できる」という話であって、競争優位性が求めている「勝てる」とは、全く別次元です。
例えばトイレタリーの花王が、昔フロッピーディスク事業を手掛けて、かなりのシェアを持っていた時期がありました。彼らは石鹸などに使う界面活性化技術が、フロッピーディスクの磁気ヘッドとの接触面の摩擦を抑えるのに応用できると知り、参入しました。しかし、参入してみてわかったのは、摩擦を抑える技術には界面活性化技術以外にも色々あること。それからフロッピーのようなメディア事業で勝つには、製品品質以上に、莫大な設備投資のタイミングや業界のプレイヤーに働きかけて業界標準を作るといった活動がカギになること。つまり、界面活性技術をフロッピーディスク製造に活用できるけれども、事業として勝つのは別次元だと判断し、花王は早々にこの分野から撤退しました。
このように、「事業をできる」を「勝てる」と混同していないか、自分の事業戦略はちゃんと「勝てる」になっているかを疑ってみて欲しいと思います。
ついでに言うと、企業が持っている資産の新事業への応用に関しては「似ているけれど違う」を疑うのも大事です。例えば、新規事業で「これまでの営業力が活かせる」と書かれた戦略を見かけますが、同じ営業でも、これまでは少数の大口顧客と深い関係を築くのを得意としていただけで、新規事業で求められるフットワークよく小口の顧客をたくさん拾ってくる営業は苦手という企業もあります。あるいはこれまでの付き合いは企業のシステム部だったのに、新事業では経営企画部や経営幹部を口説き落とす必要があったりもします。「営業力」というと活かせるように思えてきますが、具体化してみると求められている営業は全く異なるので、実は活かせないわけです。営業力の他にも「ブランドが活きる」「技術力が活きる」といった根拠も「似ているけれど違う」のありがちなパターンですので、十分疑ってみてください。

本日のまとめ:
自分の戦略アイデアにはとことん惚れて、諦めずに形にしてください。その一方で、「これでいいのか」と疑い倒すことで戦略に磨きがかかります。特に「皆に売ってもらえるか」「競合に勝てるか」はこだわって詰めてみましょう。

分野: 経営戦略 |スピーカー: 山口英彦

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