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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 円為替相場の水準について① (企業財務管理、国際金融/平松拓)

円為替相場の水準について①

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/12/08

ドル円相場についは、昨年末以来1ドル=120円近辺での推移が続いています。円安傾向が始まった約3年前、2012年9月頃の相場である1ドル=78円と比べれば、50%以上もの円安になっている訳ですが、一方で固定相場制末期の1973年には1ドル=300円台であっとことと比較すれば2.5倍程度もの円高ということになります。貿易や国際収支にとって重要な意味を持つ為替相場ですが、現在の水準は円高・円安どちらと見るべきなのでしょうか、また、どちらにしても、どの程度と考えれば良いのでしょうか。

為替相場の長期的な均衡を考える方法として、「購買力平価」というものがあります。「ものを買う力で図った均衡相場」ということですが、これは国際的に一物一価、すなわち同じ商品の価格は各国どこでも同じになるということを前提としています。たとえば、日米間で為替相場が1ドル150円だったとします。その場合、Aという商品の価格が日本円で300円、米ドルで2ドルという形だったとするとそれで均衡していることになります。ところが、日本でその商品Aの価格が300円から400円に上昇したとします。その場合、日本での価格が30%程度上回ることになってしまいます。しかし、この時、為替相場が円安方向に動いて、1ドル200円になれば再び日米間で価格が同一になります。これが「購買力平価」による均衡相場です。

一物一価の考え方は、関税であるとか物流コスト等を無視しているため、厳密な意味で成立するわけではありません。そのため、為替相場も購買力平価による均衡相場に常に落ち着くというわけではありません。それでも長期的にはある程度の妥当性を持つことが経験的に確かめられています。そこで、この購買力平価の考え方を用いて、現在の相場水準がどの程度にあるのかということを、過去からの推移を参考に考えて見てみましょう。

購買力平価を長期的な均衡相場として論じる場合、先程の例のように特定の商品で論じる場合もありますが、より多くは両国における商品全般の価格、すなわち物価指数を用いて計算します。まず、変動相場制に移行した1973年のドル円相場、この時代は300円台なのですが、この年を基準にとってその後の日米両国の企業物価(昔は卸売物価と呼んでいました)の変化を用いて購買力平価を計算すると、日本の物価上昇率が傾向的に低かったことから、購買力平価は逆に円高傾向を辿る形となり、現状では1ドル=100円近辺が長期的な均衡相場ということになります。

一方、この40年間を振り返って購買力平価の推移と実際の円ドル相場の推移を比較すると、実勢相場はその時点の購買力平価を中心に上下約20%の幅の中にほぼ収まってきました。つまり、購買力平価を中心に考えて、そこから上下20%の幅のどこに実勢相場があるかを見れば、現時点のドル円相場の円安、円高の程度がわかる訳です。その点では、現状の購買力平価1ドル=約100円に対して、実勢相場1ドル=120円は、ぎりぎり20%円安のところにあるわけで、このことからは現在の相場はほぼ円の下限と考えることができます。

ここまでは企業物価を用いて購買力平価の計算した場合のお話をしてきましたけれども、企業物価の代わりに消費者物価を用いて議論をすることもあります。1970年代、日本では企業物価に対し消費者物価の上昇幅が大きかったのですが、アメリカではそうでもなかったために、同じ1973年のドル円相場を基準に消費者物価を用いて購買力平価を計算すると、80年代以降、先程の企業物価で計算した購買力平価よりも大きく円安にシフトした位置で推移してきた形となっています。そのため、企業物価ベースの購買力平価を中心に上下20パーセントの幅の中を動いてきた実勢相場は、ほぼ一貫して消費者物価で計算した購買力平価よりも円高方向にありました。

1980年代前半に一時、実勢相場が消費者物価で計算した購買力平価の水準を超えて円安に振れたことがあります。しかし、それはほんの一時であり、また、僅かな幅にとどまりました。つまり、この消費者物価で計算した購買力平価の水準が、実勢相場の円安の歴史的限界と考えることができます。この消費者物価で計算した購買力平価は現状130円前後にあることから、実勢相場が120円近辺にあるということは、円安の限界に近づいているけれども、まだ若干余裕があると考えられます。つまり、もう少し円安に振れる余地があると考えることができるわけです。

では今日のまとめです。

現在の実勢である、1ドル120円という為替相場は、長期的な均衡点から見てかなりな円安水準にあることは確かですけども、既に円安の下限に達しているかといえば必ずしもそうとは言い切れないということが購買力平価の考え方からは示唆されることになります。


分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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