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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 移住促進策としての日本版CCRC (公共政策、地域政策、産学連携/谷口博文)

移住促進策としての日本版CCRC

谷口博文 公共政策、地域政策、産学連携

15/12/31


前回に話した通り、日本版CCRCについて、政府の有職者会議が検討を重ねているところです。今日はその中身について、具体的に説明します。

日本版CCRC構想有職者会議が、この夏に中間報告をまとめました。その中で日本版CCRCは、生涯活躍の町と名付けられています。その目的は、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や「まちなか」に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり」を目指すことです。最初に移り住む旨が書いてあることからもわかるように、強制的に移住させるわけではありませんが、地方への人の流れの促進や、東京圏に集中する高齢化問題への対応が内容の中に盛り込まれております。理想的な高齢者のためのコミュニティが自然豊かな地域にできて、そこに住みたいと希望する高齢者に対して、この構想は有益なものとなるでしょう。他方、介護に従事する人たちに雇用を創出しますし、人口が増えれば消費も増えるために当該コミュニティの経済活動は良くなると考えられます。齢を重ねると、交通の便が良いところや医療施設が近くにあるところを好むために、都心部に高齢者が集中することとなります。地方でも、そうした施設がすべて整っているところがあれば、そこへ行きたいと考える高齢者も増えるはずです。

それでは、移住を受け入れる側の地方自治体はこれをどのように考えるのでしょうか。先ほども述べました雇用の創出や経済活動の活性化など、良い面はもちろんあります。一方で、医療や介護にかかる費用によって、地方財政に負担が生じる懸念もあります。これについては、現行の制度の中に既に、住所地特例というものがあります。つまり、施設が所在する市町村に負担が偏ることを防ぐために、他の市町村の病院や施設を利用する場合は、住民票を移す前の市町村が引き続き保険者となる仕組みです。この制度はもともと、施設がたくさんある市町村に負担が集まることを避けるためのものでした。現状のままでは単に移住した場合には、住所地特例の適用外になります。考え方自体は同じですので、東京から地方への移住を望ましいものと政策的に考えるのであれば、同様の制度を適用させるのも一つの手のように思います。

東京圏と東京圏以外の間の人の出入りの統計を取りますと、東京から地方へ行く人々は、赤ちゃんの年齢層とその親の年齢層に一番多く見られます。逆に地方から東京へ行く人々は、20歳前後の年齢層に圧倒的に多くいます。進学や就職で東京へ出てくる人たちです。こうした大きな流れの中で、地方自治体の負担として最も大きいのは、小学校から高校までにかかる教育費、医療費、児童手当てです。しかし地方がお金を出して子供たちを育てても、彼らは進学や就職で東京へ行ってしまい、東京で働き、東京に税金や保険料を払うこととなります。そして彼らが高齢になって地方へ戻ってくると、税収がない代わりに医療や介護のためにお金を費やすこととなります。地方の負担で育てた人々が東京圏で生産活動をし、その果実を東京に落とした後に地方へ戻って負担をかける。このように考えると、先の住所地特例のような制度によって、地方の財政の負担を減らしてもよいように思われます。

日本版CCRC政策が移住を促すものとして立案されるのであれば、それを促すかたちの財政支援はあってもおかしくありません。ただ、よくありますように、一時的な補助金だけを出して箱ものをつくってお終いとならないように、継続するための財政運営を工夫することで制度を全体としてうまく回すことも可能ではないでしょうか。

分野: パブリックマネジメント |スピーカー: 谷口博文

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